インサート成形とは
インサート成形とは、金型内に金属部品等を装填し樹脂を注入して一体化する成形加工サービスです。
あらかじめ用意したインサート品を金型にセットし、その周囲に溶融した樹脂を充填することで、異種材料を強固に結合させます。金属の剛性や導電性と、樹脂の絶縁性や軽量性を一つの部品で同時に実現できる点が大きな特徴です。ネジ締めや接着といった後工程を省略できるため、生産リードタイムの短縮やコスト削減に寄与します。
また、接合部が樹脂で隙間なく封止されるため、防水性や気密性の確保にも有利に働きます。複数の部品を一体化することで設計の自由度が高まり、製品の小型化や軽量化にも貢献するため、精密機器から大型産業機械まで幅広い分野で採用されている技術です。
インサート成形の用途
インサート成形の主な用途を以下に示します。
1. 自動車・輸送機器業界
自動車分野では、走行時の激しい振動や温度変化に耐えうる高い耐久性が不可欠です。
そのため、ABS (アンチロック・ブレーキ・システム) や各種車載センサー、ECU (電子制御ユニット) の筐体製造に多用されます。金属端子と樹脂ハウジングを一体化させることで、高い気密性を確保しつつ、電気的な接続信頼性を向上させます。さらに、パワーウィンドウのスイッチやステアリング周りの操作系部品にも採用され、軽量化と強度の両立を実現しています。
2. 電子・電気機器業界
スマートフォンやノートPC、白物家電などの電子機器分野では、部品の小型化と薄型化が常に求められます。
インサート成形は、コネクタやマイクロスイッチ、コイルボビンなどの製造において、微細な金属端子を樹脂で正確かつ強固に固定するために不可欠です。絶縁性を保ちながら導電部を配置できるため、複雑な回路を持つ基板周辺の部品や、バッテリーパックの端子部分の製造に適しています。
3. 医療・産業機械業界
医療機器では、外科手術用の器具や注射器の部品などで、金属の強度と樹脂の成形性や衛生面を組み合わせた製品に採用されています。
産業機器においては、金属シャフトを埋め込んだ樹脂ギアや、工具のグリップ部分などに利用されます。このような用途では、金属部品単体では重すぎる場合や、樹脂単体では強度が不足する場合に、双方の利点を活かした設計が可能です。