ジペンタエリスリトールとは
ジペンタエリスリトールとは、多価アルコール類の1種で、常温では固体であり白色無臭です。
エステル化反応によって一般的な有機酸と結合しやすい、吸湿性が低い、および、空気中で安定であるという特徴があります。ジペンタエリスリトールは、文字通り2つのペンタエリスリトールが結合したような分子構造を有します。
ペンタエリスリトールは、糖アルコールに分類される有機化合物です。英語から日本語への翻訳の影響により、「エリスリトール」は「エリトリトール」と称される場合もあります。ジペンタエリスリトールは、ホルムアルデヒドとアセトアルデヒドとを、アルカリの存在下で反応させると、ペンタエリスリトールと共に生成されます。
一般的には、ペンタエリスリトールを製造するときの副生成物です。工業的には、生成したペンタエリスリトールおよびジペンタエリスリトールの混合物から、ジペンタエリスリトールを分離して精製することで得られます。
ジペンタエリスリトールの使用用途
ジペンタエリスリトールは、アルキド樹脂、ポリウレタン樹脂、ロジンエステル、合成潤滑剤、塩化ビニル可塑剤、界面活性剤、化粧品、架橋剤、または爆薬などの各原料として幅広く利用されています。
ジペンタエリスリトールを原料とするアルキド樹脂の用途は主に塗料です。ポリウレタン樹脂は、塗料や接着剤の他、繊維製品、スポンジ製品、自動車部品などに幅広く使用されています。ジペンタエリスリトールを用いて合成されたロジンエステルの主な用途は接着剤です。
また、塩化ビニル樹脂に、可塑剤として添加することにより、壁紙やホースなどの軟質塩化ビニル製品が作り出されます。ジペンタエリスリトールを原料として合成された架橋剤は、後述するように例えばジペンタエリスリトールヘキサアクリレートなどです。
ジペンタエリスリトールの性質
ジペンタエリスリトールの性質の1つは親水性です。分子中にヒドロキシ基 (-OH) を6つ有するため、分子量が比較的大きいにも関わらず水への溶解性を有します。言い換えると、分子中に6つのOH基を有するため有機化合物でありながら親水性が比較的高い物質です。
ジペンタエリスリトールは、20℃の水1Lあたり数g溶解します。ジペンタエリスリトールの融点は210℃~220℃程度であり、分子量は約254です。
ジペンタエリスリトールの構造
ジペンタエリスリトールの分子構造は、2つのペンタエリスリトールがつながっいています。ジペンタエリスリトールの化学式は、(HOCH2) 3CCH2OCH2C(CH2OH) 3です。
上述の通り、ジペンタエリスリトールは分子中に6つのヒドロキシ基 (-OH) を有します。ヒドロキシ基 (-OH) は合成反応によって比較的容易に他の物質と結合するため、ヒドロキシ基 (-OH) を6つ有するジペンタエリスリトールからさまざまな化合物を合成可能です。
ジペンタエリスリトールのその他情報
ジペンタエリスリトール構造を有する架橋剤
ジペンタエリスリトールを原料にして、架橋剤を合成できます。具体的には、ジペンタエリスリトールのヒドロキシ基 (-OH) と、アクリル酸またはメタクリル酸のカルボキシ基 (-COOH) とをエステル結合させると、いわゆる多官能型架橋剤が得られます。
この種の架橋剤の分子中には、重合反応できるアクリロイル基 (H2C=CH–C(=O)–) またはメタクリロイル基 (H2C=C(CH3)–C(=O)–) があります。よって、この種の架橋剤と重合用モノマーを併用することで、架橋された高分子化合物を合成可能です。
ジペンタエリスリトールのすべてのヒドロキシ基 (-OH) にアクリル酸がエステル結合した場合、分子中に6つのアクリロイル基を有する架橋剤が得られます。この架橋剤は、独立していた6つの分子鎖を互いに化学結合させることが可能です。したがって、架橋度の高い高分子化合物を製造できます。
このような架橋剤の具体例として、ジペンタエリスリトールトリアクリレート、ジペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレートなどが挙げられます。