シクロヘキシルアミンとは
シクロヘキシルアミン (英: Cyclohexylamine) とは、脂肪族アミンに分類される有機化合物です。
化学式はC6H13Nで表され、シクロヘキサン上の水素が1つアミノ基で置換されている構造をしています。毒物及び劇物取締法により「劇物」に指定されている化合物です。
別名には、「アミノシクロヘキサン」「アミノシクロヘキサヒドロベンゼン」「ヘキサヒドロアニリン」などの名称があります。なお、CAS登録番号は108-91-8です。
シクロヘキシルアミンの使用用途
シクロヘキシルアミンの主な使用用途は、清缶剤、防錆材、顔料や染料、ゴム用薬品、染色助剤、殺虫剤、不凍液などです。特に印刷インキ工業では、フラッシング助剤として用いられます。
また、シクロヘキシルアミンは有機合成化学的に有用な物質であるため、医薬品などの各種化合物の中間原料としての用途もあります。シクロヘキシルアミンを原料として合成される主な物質には、スルフェンアミド系加硫促進剤、除草剤であるヘキサジノン、グリース (油よりも粘度の高い半固体状の潤滑剤) 、人工甘味料であるチクロなどがあります。
医薬品では、粘液溶解薬・鎮痛剤・気管支拡張薬などの薬品の原料として用いられる場合が多いです。
シクロヘキシルアミンの性質
図1. シクロヘキシルアミンの基本情報
シクロヘキシルアミンは、分子量99.17、融点-17.7 ℃、沸点134.5 ℃であり、常温では無色から黄色の液体です。 強い魚臭またはアンモニア類似の臭いを呈します。
密度は0.8627g/mL、酸解離定数pKaは10.64です。 アルコール類、エーテル類、ケトン類、エステル類、脂肪族炭化水素類、芳香族炭化水素類に可溶であり、すなわち一般的な有機溶剤に溶解します。
シクロヘキシルアミンの種類
シクロヘキシルアミンは、研究開発用試薬製品や産業用化学薬品として販売されています。研究開発用試薬製品では、25mL、500mLなどの容量の種類があり、研究室で取り扱いやすい容量で提供されています。
有機合成原料として使用されることが多く、通常室温で取り扱い可能な試薬製品です。産業用化学薬品としては、15kg缶や170kg前後のドラムとして供給されています。ゴム用薬品、染料、顔料、防錆剤、不凍液などに利用されており、工場などの需要に合わせた大型容量の製品です。
シクロヘキシルアミンのその他情報
1. シクロヘキシルアミンの合成
図2. シクロヘキシルアミンの合成
シクロヘキシルアミンの主な合成方法には、ニッケルやコバルトを用いてアニリンを水素化する方法と、シクロヘキサノールをアンモニアによってアルキル化する方法とがあります。
2. シクロヘキシルアミンの反応性
シクロヘキシルアミンは、 強塩基性であり、酸と激しく反応します。また、加熱や燃焼によって分解し、窒素酸化物などの有毒で腐食性のヒュームを生じます。
強酸化剤と激しく反応して火災の危険を伴うとともに、アルミニウム、銅、亜鉛を侵す物質です。保管の際にはこれらの物質との混触を避けることが必要です。
3. シクロヘキシルアミンの安全性と法規制情報
図3. シクロヘキシルアミンの有害性
シクロヘキシルアミンは、 経口摂取・皮膚接触・吸入において有毒な物質です。遺伝性疾患、生殖能又は胎児への悪影響、臓器の障害などの危険性が指摘されており、毒物及び劇物取締法により劇物に指定されています。
また、シクロヘキシルアミンは引火点が26.5 ℃と低い引火性液体であり、26.5℃以上では蒸気/空気の爆発性混合気体を生じることがあるとされている物質です。このため、消防法では「危険物第4類第2石油類」、労働安全衛生法では「危険物・引火性の物、名称等を表示すべき危険有害物」「リスクアセスメントを実施すべき危険有害物」に指定されています。
化学物質排出把握管理促進法 (PRTR法) でも、「第1種指定化学物質」に指定される物質です。法令を遵守して適切に取り扱うことが必要です。