シクロヘキセン

シクロヘキセンとは

シクロヘキセンの基本情報

図1. シクロヘキセンの基本情報

シクロヘキセン (英: Cyclohexene) とは、シクロアルケンの1種で、分子式C6H10で表される有機化合物です。

別名には、1,2,3,4-テトラヒドロベンゼンなどの名称があります。分子量82.14、融点-104℃、沸点83℃であり、常温ではフェノール臭のある無色の液体です。密度は0.811g/mL、水への溶解度は0.21g/L (20℃) です。水に溶けにくいものの、エタノール及びアセトンに容易に溶けます。なお、CAS登録番号は、110-83-8です。

シクロヘキセンの使用用途

シクロヘキセンは、他の有機化合物と同様に有機溶媒として用いられるほか、接着剤の溶剤などに利用されています。合成的には、アジピン酸マレイン酸など種々の有機化合物の合成原料として用いられる化合物です。

シクロヘキセン誘導体は、農薬や医薬品などさまざまな製品として活用されています。また、特有の悪臭がありながらも硫黄分を含まないことから、都市ガスへの付臭剤としても使用されています。

シクロヘキセンの性質

シクロヘキセンの合成

図2. シクロヘキセンの合成

シクロヘキセンは、ベンゼンの部分的水素化によって合成が可能です。実験室的にはシクロヘキサノールを酸触媒下で脱水し、蒸留することによっても得られます。

また、シクロヘキサノールからもシクロヘキセンを合成することが可能です。この合成経路では脱水素反応の際にシクロヘキサノンも副生しますが、このシクロヘキサノンはカプロラクタムの前駆体として用いることができます。

シクロヘキセンの構造

シクロヘキセンの安定配座 (左) とシクロヘキサンの安定配座 (右)

図3. シクロヘキセンの安定配座 (左) / シクロヘキサンの安定配座 (右)

シクロヘキセンの再安定配座は、半いす型構造です。シクロヘキサンでは、全てのC-H結合が立体障害を回避するためにいす型構造が再安定となっていますが、シクロヘキセンは分子内に二重結合を有し、この部分が平面になっています。

シクロヘキセンの種類

シクロヘキセンは、一般には研究開発用試薬製品や工業原料薬品として販売されています。研究開発用試薬製品としては、25mL、500mL、1L、2Lなどの容量の種類があります。基本的に、室温で取り扱われる試薬製品です。

過酸化物の発生を防ぐ酸化防止剤として、ジブチルヒドロキシトルエン (BHT) が添加される場合もあります。工業用の製品は、160kgドラム、18Tコンテナ、10Tタンクローリーなどの容量・荷姿での提供です。

工場などの需要に合わせた大型容量となっています。主な用途は、付臭剤、溶剤、農薬原料などが想定されている化合物です。

シクロヘキセンのその他情報

1. シクロヘキセンの化学反応

シクロヘキセンには、光や空気と反応して過酸化物を生じる性質があります。しばしば、使用する直前に蒸留して過酸化物を除去した上で使用されています。

シクロヘキセンの水和反応では、シクロヘキサノールが生成します。また、シクロヘキセンの酸化的開裂によってアジピン酸を合成することが可能です。この反応では、酸化剤として過酸化水素を用い、タングステン触媒存在下で反応が進行します。

2. シクロヘキセンの法規制情報

シクロヘキセンは人体への有害性が報告されており、具体的には、経口摂取での有害性・神経系の障害・呼吸器への刺激・眠気またはめまいなどの可能性が挙げられます。また、引火点が-17℃と低く、引火性の高い物質です。揮発性が高く、空気との接触で過酸化物の形成、及び爆発の危険性があります。

このため、労働安全衛生法では「 名称等を表示すべき危険物及び有害物」「危険性又は有害性等を調査すべき物」「危険物・引火性の物」に指定されており、消防法でも「第4類 引火性液体 第一石油類 非水溶性」に指定されている物質です。取り扱いの際は、法令を遵守して正しく使用することが求められています。

参考文献
https://anzeninfo.mhlw.go.jp/anzen/gmsds/110-83-8.html

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