ケノデオキシコール酸とは
ケノデオキシコール酸 (英: Chenodeoxycholic acid) とは、鳥類や哺乳類、魚類などの肝臓で生成される脂肪酸の1種です。
IUPAC名は、3α,7α-Dihydroxy-5β-cholan-24-oic acid、または(4R) -4- [ (3R,5S,7R,8R,9S,10S,13R,14S,17R) -3,7-dihydroxy-10,13-dimethyl-2,3,4,5,6,7,8,9,11,12,14,15,16,17-tetradecahydro-1H-cyclopenta [a] phenanthren-17-yl] pentanoic acidです。別名として、ケノジオール (英: Chenodiol) やケニックス (英: Chenix) とも呼ばれます。略称はCDCAです。
ケノデオキシコール酸はアヒルから初めて単離されたことから、ギリシャ語でアヒルを意味する「ケノ」という単語が名称に含まれています。
ケノデオキシコール酸の使用用途
1. 利胆剤
ケノデオキシコール酸は、胆石を溶かす薬として用いられています。ケノデオキシコール酸は肝臓で合成される重要な胆汁酸で、胆汁成分の1種です。
コレステロールを原料として肝臓内で合成され、腸に排出された後は、腸内細菌によりリトコール酸とウルソデオキシコール酸に変換されます。胆汁は脂肪やたんぱく質などの消化を促し、胆汁の流れが滞ると胆汁の成分が固まり、胆石が生成しやすくなるとされています。
ケノデオキシコール酸を投与すると、腸で吸収された後に肝臓から胆汁として分泌されるため、滞っていた胆汁の分泌が促進され、胆石を溶かすことが可能です。ただし、ケノデオキシコール酸は小さめのコレステロール系胆石の溶解に適し、大きめの胆石や石灰化したものには向きません。
下痢や吐き気、顔のむくみ、肝機能異常、発疹などが主な副作用です。副作用の症状がひどい場合は、早めに医師の診断を受けてください。また、糖尿病の薬やコレステロール低下薬など、飲み合わせに注意が必要な薬がいくつかあります。使用の際は、薬剤師とよく相談してください。
2. 脳腱黄色腫症治療薬
ケノデオキシコール酸は、脳腱黄色腫症に対し早期服用でコレスタノール値が改善するとの報告があります。脳腱黄色腫症とは、指定難病の1種です。アキレス腱が厚くなったり、進行性の知能低下や歩行障害などの症状が見られたりします。
ケノデオキシコール酸の性質
化学式はC24H40O4で表され、分子量は392.57です。CAS番号は474-25-9で登録されています。
ケノデオキシコール酸は融点165〜167°Cで、常温で白色の結晶性粉末の固体です。エタノールやアセトン、酢酸に溶け、水へは20°Cで89.9mg/Lとあまり溶けません。
ケノデオキシコール酸のその他情報
1. ケノデオキシコール酸の製造法
コール酸 (3α,7α,12α-トリヒドロキシコール酸) のカルボン酸をメチルエステル化し、無水酢酸を用いて3α位と7α位の水酸基をアセチル保護します。12α位の水酸基をクロム酸で酸化してカルボニルとした後、ウォルフ・キッシュナー還元反応 (英: Wolff-kichner Reduction) でカルボニル基を除去、メチルエステルの加水分解とアセチルの脱保護によりケノデオキシコール酸が得られます。
ウォルフ・キッシュナー還元反応とは、アルデヒドやケトンなどのカルボニル基に対し、塩基性条件下でヒドラジンを作用させることでメチレン基へと変換する方法です。また、ブタの胆汁からケノデオキシコール酸を分離精製する方法も可能です。
2. 取り扱い及び保管上の注意
取り扱い時の対策
強酸化剤は、ケノデオキシコール酸の混触危険物質です。取り扱い時および保管時に接触させないよう注意してください。
取り扱う際は、ゴーグルなどの側板付きの保護メガネと保護手袋、長袖の保護衣を着用し、ドラフトチャンバー内で使用します。取り扱い後は、よく手を洗ってください。
火災の場合
燃焼により、一酸化炭素や二酸化炭素などの刺激性で有毒なガスと蒸気を放出するおそれがあります。消火には、水スプレー (水噴霧) や二酸化炭素(CO2)、泡、粉末消火剤、砂を用いてください。
皮膚に付着した場合
ケノデオキシコール酸は、皮膚刺激性を持ちます。皮膚に付いた際は、流水と石鹸でしっかり洗います。汚染された衣類は脱いで、再利用前には必ず洗濯してください。皮膚に炎症が出た場合は医師の診断、処置を受けてください。
保管する場合
ケノデオキシコール酸は、光により変質する恐れがあります。容器は遮光して密閉し、直射日光を避けた、歓喜の良いなるべく涼しい場所に保管してください。保管場所は施錠します。
参考文献
https://labchem-wako.fujifilm.com/sds/W01W0103-2541JGHEJP.pdf
https://pubchem.ncbi.nlm.nih.gov/compound/Chenodeoxycholic-acid
https://www.nanbyou.or.jp/entry/4618