不織布フィルタとは
不織布フィルタとは、繊維を織らずに絡み合わせたシート状の濾過媒体です。
規則的に織られた織物とは異なり、繊維がランダムに積層された三次元構造を有している点が最大の特徴といえます。このような立体的な構造により、表面だけでなく内部の空間全体で粒子を捕捉する深層濾過 (内部濾過) を実現し、高い捕集効率と低い圧力損失を両立させています。
また、ポリプロピレン・ポリエステル・ナイロン・ガラス繊維など多様な素材を選択できるため、耐薬品性や耐熱性といった特定の環境条件に合わせた設計が容易です。さらに、空隙率が高く目詰まりしにくい性質も持つため、長寿命化が求められる工業プロセスにおいて、液体や気体の清浄化に欠かせない基幹部材として広く採用されています。
不織布フィルタの使用用途
不織布フィルタの主な使用用途を以下に示します。
1. 製造・プロセス産業分野
化学プラントや食品工場、金属加工の現場では、プロセス液の清浄化や排水処理に多用されています。
特に、工作機械におけるクーラント液の循環精製や、電子部品製造時の洗浄液やメッキ液の不純物除去において、不織布特有の深層濾過機能がゲル状物質や微細スラッジの捕捉に威力を発揮します。また、高粘度流体であっても安定した通液性を維持できるため、生産ラインの停止時間を短縮し、生産効率の向上に寄与しています。
2. 空調・集塵分野
ビルや工場の一般空調から、半導体の製造現場や製薬工場のクリーンルームまで、気体中の粒子の除去に幅広く利用されています。
粗塵用のプレフィルタから、超微粒子を捕捉するHEPAやULPAグレードの高性能フィルタまで、要求される清浄度に応じた製品が存在します。また、焼却施設や発電所における集塵機のバグフィルタとしての利用も一般的で、排ガス中の煤塵や有害物質を除去することで環境負荷の低減に貢献しています。
3. 自動車・モビリティ分野
内燃機関のエンジンオイルフィルタや燃料フィルタ、エンジンの吸気フィルタとして実装されています。
近年では、車室内の快適性を保つカーエアコン用フィルタとしても普及が進んでいます。振動や高温環境下でも性能を維持する耐久性が評価され、電気自動車 (EV) のバッテリー冷却システムにおける冷媒濾過など、次世代モビリティへの応用も拡大しています。