メタノール

メタノールとは

メタノールとは、最も簡単な構造のアルコールです。

別名として、メチルアルコール (英: methyl alcohol) 、木精 (英: wood spirit) 、カルビノール (英: carbinol) とも呼ばれています。主に天然ガスや石炭ガスを原料に、高温高圧下で複数の製造工程を経て生産されています。

メタノールは、アルコール類の中でも最も引火点や沸点が低く、危険物第四類アルコール類に分類されているほか、毒性も高いため、毒物及び劇物取締法で管理されています。したがって、取り扱いには十分な注意が必要です。

メタノールの使用用途

メタノールは薬品や塗料などの基礎原料です。フェノール樹脂や接着剤だけでなく、酢酸ホルムアルデヒドの合成原料として用いられています。それに加えてメタノールは、あらゆる化学反応における溶剤としても広く使用可能です。

近年では、エネルギー関連での利用が注目されており、ガソリン添加剤・バイオディーゼル燃料の原料のほか、燃料電池の水素供給源としての利用が進められています。

メタノールの性質

メタノールは特有の刺激臭のある無色透明の液体です。融点は-97°C、沸点は64.7°Cです。水、エタノールベンゼン、エーテル等、多くの溶媒に溶解します。

メタノールは引火性が高いです。揮発性も高く、メタノールが入った容器を火に直接かけると爆発します。メタノールの炎は薄青色ですが、昼間はとくに視認しにくいです。

メタノール中毒においてヒトの経口での最小致死量は、推定では0.3〜1.0g/kgほどです。故意の摂取、誤飲、取り扱い時の吸入、多量の皮膚接触などでメタノール中毒が起きます。メタノール中毒の症状として、目の網膜の損傷による失明が知られています。

なお、メタノールはアルコールの中で、最も単純な分子構造を有します。示性式はCH3OHで、分子量は32.04、密度は0.7918g/cm3です。

メタノールのその他情報

1. メタノールの製法

現代のメタノールの工業製法は、コスト面を考えて、天然ガスからの製造が主流です。酸化銅-酸化亜鉛/アルミナ複合酸化物を触媒として、50〜100気圧、240〜260℃で、一酸化炭素 (CO) と水素 (H2) を反応させることで、メタノールが生成します。このとき一酸化炭素は、石炭や天然ガスの部分酸化によって製造できます。

また、メタノールは、木材由来による木酢液の蒸留によっても得ることが可能です。さらに、メタノール産生菌による発酵でも得られます。そのほか副産物として、メタノールが生成することもあります。具体的には、ワインなどの植物を原料とした酒の醸造において、細胞壁の主成分として含まれるペクチンの発酵によって生じます。

2. メタノールの反応

メタノールの燃焼によって、二酸化炭素と水が生じます。熱した (Cu) との反応でメタノールは酸化し、ホルムアルデヒド (HCHO) が得られます。

ただし、メタノールは代謝によってギ酸 (蟻酸) を大量に生成して、失明や代謝性アシドーシスに至るため、人体に有毒な化学物質です。ほかにもメタノールとナトリウム (Na) が反応すると、ナトリウムメトキシド (CH3ONa) と水素 (H2) が生成します。

3. メタノールによる燃料改質

メタノールを加熱すると、水素と一酸化炭素の合成ガスが生じます。必要な温度は300〜400°Cほどであり、エンジンの排熱を利用可能です。メタノールの燃焼反応は吸熱反応なので、見かけ上の燃料のエネルギー量は増加して、熱効率が高くなります。分解ガスのオクタン価が極めて高く、熱効率が40%近くのエンジンも実現可能です。

メタノールは水素燃料電池の燃料としても利用できます。直接メタノール燃料電池 (DMFC)よりも、エネルギー効率は高いです。ただし、SOFCやMCFC以外の白金を用いた燃料電池では、一酸化炭素に被毒するため、徹底的に除去する必要があります。

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