ペンタンとは
図1. ペンタンの概要
ペンタンとは炭素が5個のアルカンで、炭素鎖の分岐が異なるノルマルペンタン(n-ペンタン)、イソペンタン、ネオペンタンの3種類の構造異性体があります。ただし、一般的に「ペンタン」と呼ぶ場合は直鎖のn-ペンタンのことを指します。ペンタンは無極性化合物で水に不溶ですが、エーテルやアルコール類などの多くの有機溶媒とは混和します。
ペンタンは危険物第四類 特殊引火物に該当する物質で、揮発性が高く、室温でも引火性の高い化合物です。そのため、ペンタンを取り扱う際は着火源の除去、漏洩対策、局所排気装置の使用など適切な対策を施す必要があります。
ペンタンのデータ
- CAS番号: 109-66-0
- CAS Name: Pentane
- 分子量: 72.15
- 沸点: 36.1度
- 融点: -129.7度
ペンタンの使用用途
ペンタンは揮発性が高く、非極性物質をある程度溶解させられるため、接着剤、印刷インキなどに使われています。また有機合成実験において抽出用溶剤として用いられたり、麻酔剤としても使用されています。最近では地熱発電で利用されている、加熱源によって沸点の低い媒体を蒸発させてタービンを回す「バイナリー発電」の媒体としてもペンタンは用いられています。
その他、ペンタンはガスクロマトグラフィー(GC)の標準物質として用いられることもあり、各試薬メーカーにはGC標準物質専用のn-ペンタンが販売されています。
ペンタンの安全性と法規制
ペンタンは炭素と水素原子のみから構成される非常に燃えやすい化合物で、引火点が-49℃(密閉式)である、室温でも容易に引火しうる化合物です。消防法の第4類 特殊引火物に該当しており、使用時は静電気の除去など着火源となるものを排除することが求められます。
また、ペンタンは急性毒性が小さいですが、吸入ばく露による麻酔作用、気道刺激性がある化合物です。呼吸器に有害であると考えられており、揮発性も高い物質であるため、使用時にはドラフト外への漏洩防止などの対策が必要です。なお、ペンタンは労働安全衛生法に基づいて取り扱い時にリスクアセスメントが必要な物質でもあります。
参考文献
https://anzeninfo.mhlw.go.jp/anzen/gmsds/0958.html
https://www.jawe.or.jp/topics/2018/ramtrl18.pdf