ポリビニルアルコールとは
ポリビニルアルコールは水溶性の合成樹脂の一種です。
もっとも単純な構造を持つエノールである(CH2CH(OH))が重合した形である(−CH2CH(OH)−)nという示性式で表される化合物です。1924年にドイツで発明されました。その後、日本の企業により工業的に発展してきました。
ポリビニルアルコールの製法
ポリビニルアルコールの単量体であるビニルアルコールは、より安定なアセトアルデヒドに異性化してしまうため、単量体として存在できません。そのため、ポリ酢酸ビニルを経由してポリビニルアルコールが合成されます。
工業的には、石油由来のエチレンと、酢酸と酸素から、酢酸ビニルが合成されます。この反応ではパラジウム触媒が用いられます。
この酢酸ビニルを付加重合させることでポリ酢酸ビニルを得ます。その後、ポリ酢酸ビニルを加水分解することで、ポリビニルアルコールが合成されます。
ポリビニルアルコールの性質
常温の状態では固体として存在し、温水に溶けやすいという特徴を持っています。この温水に溶けるという特徴は、合成樹脂の中では特異なものです。この特徴は、分子中に親水性のヒドロキシ基(-OH基)を多量に有することによるものです。
このポリビニルアルコールは、親水性の表面に対し接着力を出したり、皮膜を形成したり、粘度を上げたりするような性質を持っています。
また、安定した高分子であることから、様々な環境でも変質や劣化がしにくいため、長期の取り扱いもしやすい物質といえます。耐薬品性を持ち、ジメチルスルホキシドなど特殊な溶剤と水にしか溶解しません。皮膚刺激性、眼刺激性、皮膚感作性などはほとんどなく、人体に対しても安全な物質と言えます。
ポリビニルアルコールの使用用途
ポリビニルアルコールはその性質から、多様な用途に用いられます。
水溶性、接着性を生かし、化粧品や、接着剤・糊剤として使用されています。
化粧品として使用される場合は、皮膜形成や乳化安定化の目的で使用されます。皮膜を形成することで、ファンデーションやマスカラなどの液状のものが柔らかい皮膜となり、肌に留まりやすくなります。
また、接着剤として配合する場合は、そのまま接着の役割を果たす物質として使用され、液状のりの状態で売られていることが多いです。切手の裏面の糊にも使用されます。糊剤として合成洗濯のりとしても使用されています。
液晶ディスプレイに用いられる偏光板の基材としても用いられます。そのほか、合成繊維であるビニロンの原料としても使用されます。