ロータリーポンプ

ロータリーポンプとは

ロータリーポンプ

ロータリポンプとは、中真空 (10^-1 Pa) 程度までの真空状態を容易に実現するポンプです。

正式には油回転真空ポンプと呼ばれます。主な特性は以下の通りです。

  • 比較的安価 (10万円から30万円)
  • コンパクトで据え付けが簡単
  • シンプルな構造で使いやすく、メンテナンスが簡単
  • 排気効率が良く、大きな排気速度を得られる
  • 総合的に性能が安定している

比較的安価で操作も簡単なため、科学研究用機器や産業システムなど様々な用途に利用されてきました。

最近では、モータ直結高速回転速型が開発され小型化が進んだことにより、利用範囲が拡大しています。しかし、従来型のベルトがけ低速回転型機種も、化学実験関係のような薬品蒸気を吸引する場面で活躍しています。

ロータリーポンプの使用用途

ロータリーポンプは操作や据え付けが簡単で手軽に使えるため、真空が必要であるが高真空までは必要とされない場面で幅広く使用されています。具体的には、真空が必要な科学実験用装置等と組み合わせて使用します。

また、超高真空を実現する際に初期段階の減圧 (粗引き) や、システム全体の背圧を維持するためのバックポンプとして使用されることも多いです。この使い方では、排気速度の大きさが役立っています。ロータリーポンプのコンパクトさと安定した性能が使いやすさの基盤となっており、多種多様な利用方法にフィットします。

ロータリーポンプの原理

ロータリーポンプは形式によって原理が異なります。

1. 回転翼形油回転真空ポンプ

シリンダの内側に組み込まれているローターに取り付けられた2枚の羽根によって、シリンダ内を3つの空間に分割する構造になっています。羽根によって分割された小部屋の気体がローターの回転とともに排出されることにより、減圧が進みます。

2. カム形油回転真空ポンプ

円筒形ステータの中心に設置された偏芯ローターの一部がステータと接触しながら回転します。ステータとローターの隙間空間にある気体が排出されることにより、減圧が進みます。

3. 揺動ピストン形油回転真空ポンプ

偏心ローターの回転によってピストンが上下運動を行います。シリンダ内部の期待がピストンにより圧縮・排出されることで減圧が進みます。

これらすべての形式のロータリーポンプにおいて、ベアリング部の潤滑や冷却、ポンプ内部の気密性を高めるためオイル (油) を用いています。そのため油回転真空ポンプと呼ばれます。

ロータリーポンプの選び方

ロータリーポンプを選ぶ時は、下記の3点を確認する必要があります。

1. 到達させたい真空度

到達させたい真空度が機種の性能に合致しているかが、選定する際に最も重要です。ロータリーポンプの中でも、ツーステージ型は高い真空を得ることができます。

2. 電源

屋外で手軽に使う場合は、バッテリー駆動型が便利です。例えば、エアコン設置のときに冷媒を吸引する作業の時などが挙げられます。

据え置きで使用する場合は電源使用のタイプになります。多くの装置が単相交流100Vを用いますが、工業用のモデルでは3相交流を用いるタイプもあります。

3. オイル逆流防止機能

真空引きをしている途中に停電が発生するなど、作業中に動作が止まってしまった際に、ロータリーポンプから真空側にオイルが吸引されて流れてしまいます。停止操作のときに減圧解除が不十分である場合も同様のことが起こるため、防止する逆流防止機構の有無も重要な選択ポイントです。

ロータリーポンプのその他情報

1. オイルミストの発生とその影響

ロータリーポンプでは、オイルを用いる以上、どうしてもオイルミストが排気側に飛んでいきます。また、ごくわずかなオイルがミストとして真空側にも舞い上っていきます。真空にオイルミストが混ざることが好ましくない場合は、油回転ポンプではなくオイルフリー型のポンプを検討するとよいでしょう。

可燃性・支燃性ガス (酸素) を廃棄する場合、オイルミストが排気側で粉塵爆発に似た現象で爆発する場合があります。このようなガスを排気する場合、オイルに不活性油 (ハロゲン化炭化水素のオイル等) を用いると良いとされています。

2. ガスバラスト操作の効果

減圧時に吸引した気体に含まれる、少量の凝縮物 (水や有機溶媒など) はオイルに溜まっていきます。そのままにしておくと、オイルの本来の性能が発揮できなくなるため、これを除去するためにガスバラストという操作を行います。

ロータリーポンプの温度が十分上がっている状態で、ガスバラストバルブという弁を開放することで、凝縮物を揮発させて放出することが可能です。

3. オイル交換の必要性

オイルは徐々に劣化していくため、定期的に交換が必要です。一般的には、半年から1年に1回程度の交換を行います。

参考文献
http://www.asahiseiki.co.jp/
http://www.asahiseiki.co.jp/column/post/
http://www.shinku-pump.com/vacuumpump/rotary/

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