真空乾燥機とは
真空乾燥機とは、密閉された空間内で真空や減圧状態を作り出し、乾燥を行う装置です。
この減圧状態にすることで、対象物から水分が蒸発する際の必要な温度が下がる原理を応用しています。通常の温風乾燥機と比べて低温でも乾燥できるため、短時間で効果的に乾燥させたいときに役立ちます。
また、乾燥対象物の表面を傷つけにくいことも特徴で、大学の理工学系研究室や食品加工業界などでよく使用されます。水分が蒸発する際に発生する気化熱によって周囲の温度が低下することから、効率的な乾燥を実現するためには、事前に予備乾燥などの工夫が必要です。
真空乾燥機の使用用途
真空乾燥機は、下記の用途で主に使用されます。
- 水分を大量に含んでいる対象物を早く乾燥させる場合
- 多孔質体のように、内部に水分が含まれやすい物質を乾燥させる場合
- 表面を傷めずに乾燥させる場合
具体的な分野としては、以下が挙げられます。
1. 食品
真空乾燥機は、フリーズドライの製造で利用されています。食品を凍結させた後に真空乾燥することで、風味や鮮度を保ちつつ加工可能です。
その他、インスタントコーヒーや粉末調味料、乳製品の製造時に使用されています。
2. 成型加工
特に樹脂の加工において、吸湿性や湿度による影響を避けるために真空乾燥が適しています。低温で均一に乾燥可能で、成形品の品質維持に役立ちます。
成型加工時に余分な水分が存在すると、加熱時の樹脂の加水分解、水による熱分解の加速、蒸発によるクラックなどが発生する可能性があるため注意が必要です。また、樹脂は乾燥温度によっては熱分解を生じる可能性があり、熱分解の危険性のない温度で乾燥させることで性能を維持できます。
3. 電気電子部品
モータコイルや変圧器、通信ケーブルなどの電子部品は、絶縁不良や水分によるダメージが致命的となります。真空乾燥により内部まで効果的に乾燥できるため、品質を保つことができます。
4. 金属・機械加工部品
精密機械加工部品の形状は複雑で多数の孔があるので、温風乾燥機等では乾燥が困難です。焼結部品や金属粉末などを内部まで均質に乾燥させるために、真空乾燥が利用されます。
多孔質体や粉末の場合は、素材の熱伝導率が低いと内部まで均一に乾燥しないケースがあります。乾燥物の温度を予め上げておくことで、乾燥の効率が上がります。
真空乾燥で乾燥物温度をより早く上げるために、高速真空乾燥機と温風循環加熱が利用されています。熱伝導率の低い対象物であっても、温風循環加熱によって迅速に昇温できるので、処理時間の短縮につながります。
真空乾燥機の原理
真空ポンプにより密閉空間内の気圧を下げることで、真空状態が生まれます。気圧が下がると沸点が下がる原理を利用すると、効率よく乾燥させることが可能です。
真空乾燥機は、電気ヒーター付きの密閉容器とガス交換バルブ、真空計が取付けられたシンプルな構造です。種類によっては、気化した水蒸気を再凝結させるための冷却トラップを設置します。
冷却トラップで水を回収することで、真空ポンプへの水の流入を防ぎます。水の流入はオイルの劣化につながるため、注意が必要です。
真空乾燥機の種類
真空ポンプには、気体輸送式と気体ため込み式の2つの主要なタイプがあります。気体輸送式は気体を外部に排出する方式で、容積移送式と運動量輸送式に分けられます。
容積移送式は定期的に一定体積の気体を排出し、運動量輸送式は気体に運動量を与えて連続的に排出します。
代表的なポンプは、容積移送式の油回転ポンプとドライポンプです。
1. 油回転ポンプ
油回転ポンプは摺動部分に潤滑油が使用されているため、可動性やシール性に優れています。ポンプの中では最も効率がいい方式です。デメリットは潤滑油の定期的な交換が必要となり、メンテナンスに手間がかかることです。
2. ドライポンプ
ポンプ内に3つ葉型のローターが入っており、ローターの高速回転によって容器内の空気を排出します。潤滑油を必要としないため、環境負荷の少ない排気が可能です。