フッ素コーティング剤

フッ素コーティング剤とは

フッ素コーティング剤は、被保護物の表面に塗布することにより被膜を形成し、被保護物にフッ素による滑り性や防汚性などの様々な効果を付与するものです。

フッ素樹脂を溶解した溶液状の製品がほとんどで、刷毛や浸漬などで簡単にコーティングでき、室温で乾燥できることも特徴です。

フッ素コーティング剤の使用用途

フッ素コーティング剤は、フッ素由来の様々な効果を発揮することから、数多くの製品や分野で使用されています。例えば、撥水撥油効果を必要とするタッチパネルのディスプレイ表面や防水スプレーの原料が挙げられます。また、防水機能を必要とする基板のコーティングや防汚機能を必要とする自動車のボディーやガラスへの使用が代表的です。

フッ素コーティング剤の原理

フッ素コーティング剤の主成分であるフッ素は、C-F結合が安定しており、分子と分子が引き合う力 (分子間凝集エネルギー) が弱い特性があります。このため、フッ素コーティング剤の表面張力は低くなります。これに対し、被保護物への付着を阻止すべき水や油は分子同士が引き合い、その表面張力はフッ素コーティング剤の表面張力よりも高い値です。

このことから、表面張力の低いフッ素コーティング剤の被膜の上では、表面張力が高い水や油は液滴となり、水と油がはじかれます。また、微生物をはじめとする生物といった付着物も、フッ素コーティング剤の表面張力よりも大きな表面張力を有することから、付着しにくく、これらからの防汚も可能です。

なお、このはじく性質は、ぬれ性を示す接触角であらわされ、液体を固体表面に落としたときにできる液滴のふくらみ (液の高さ) の程度を数値化してあらわした値です。具体的には、固体表面に付着した液を横から観察して測定し、固体表面を基準として液滴の端点における液の角度を測定します。このとき、接触角が90度より大きなものが撥水性とされており、フッ素コーティング剤の接触角も90度より大きい値です。

フッ素コーティング剤の種類

フッ素コーティング剤には様々な種類があります。代表的なフッ素コーティング剤は以下の通りです。

  • 不燃性溶剤タイプ
    引火性が無く安全に使用できるタイプ。
  • 水性タイプ
    キュアリング不要で、水またはアルコールで希釈して使用できるタイプ。
  • 石油系溶剤タイプ
    コストパフォーマンスに優れているタイプ。

また、フッ素コーティング剤の中には、撥水性能が非常に高く「超撥水フッ素コーティング剤」と呼ばれるものもあります。一般的な撥水と超撥水の違いは、固体表面に液体が触れた時の接触角の差であらわされ、接触角が140度以上だと超撥水、90度以上だと撥水と呼ばれています。

フッ素コーティング剤のその他情報

フッ素コーティング剤の応用

前述したように、フッ素コーティング剤は様々な製品や分野で使用されています。下記では、フッ素コーティング剤の特性を応用した具体的な導入例について解説します。

1. 撥水撥油性
フッ素コーティング剤は、撥水性能と撥油性能が高いことから、インクを使用する製品や部品に多く利用されています。例えば、ボールペンなどのインクケース部分の内部に塗布することにより、残量の可視化やインクを無駄なく使用することが可能です。

2. 防湿性
フッ素コーティング剤は撥水性能があることから、防湿機能も果たします。このため、湿度により特性が変わってしまう、例えば基板の保護剤として使用されます。フッ素コーティング剤は塗布が可能なので、基板を痛めることなく薄膜が形成でき、基板重量を抑えた形での防湿が可能です。

3. 防汚性
フッ素コーティング剤は、先程述べたように表面張力が小さいことから、水や油分だけでなく、微生物などの付着も防止します。このため、自動車のボディーやガラスのコート剤としても好適です。なお、フッ素コーティング剤による施工は、業者に依頼しておこなうほか、スプレー状のコーティング剤などを利用して自分で行うこともできるのがメリットです。

参考文献
https://www.fluorotech.co.jp/column/fluorine_coating.html
https://cos.cosmo-oil.co.jp/blog-detail/1/1000000454/
https://www.harves.co.jp/products/water-oil_repellent.php

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