サマコバ磁石

サマコバ磁石とは

サマコバ磁石とは、 希土類磁石 (通称: レアアーズ磁石) のうちの1つです。

ネオジム磁石も希土類磁石一種で、希土類の元素を主成分とした永久磁石を指します。サマコバ磁石の正式名称は、サマリウムコバルト磁石です。サマリウムとコバルトが主成分で、強力な磁力を持ちながら、熱にも強い特性を持ちます。

また、サビにも強いためメッキの必要が無く、非常に使いやすい素材です。ただし、硬度が高いために、欠けやすく非常に脆い点がデメリットです。

サマコバ磁石の使用用途

サマコバ磁石は熱に強く、温度に対する安定性が高いのが特徴です。そのため、高温環境下で使用される製品によく使用されています。身近な例では、電子レンジやオーブンなどの家電製品などが挙げられます。電子レンジ内に設置され、真空管デバイスであるマグネトロン内に使用されています。

また、サマコバ磁石は、高温となるモーター・イグニッションなどに使用され、車載用磁石として好適です。さらに、サマコバ磁石は製品の小型にも好適であり、各種アクチュエータや小型磁気センサー、マイクロスイッチや小型リレー、レーザー機器などにも使用されています。

サマコバ磁石の性質

サマコバ磁石はサマリウムとコバルトが主成分であり、鉄を含まないことからサビに強い特性をもちます。また、サマコバ磁石はキュリー温度が高いため、熱に強く高温環境下での使用に耐えうる素材です。

キュリー温度とは、強磁性体が常磁性体に変化する温度です。言い換えれば、強磁性体はキュリー温度を超えると、磁力を失うため、キュリー温度が高いほど高温に耐える磁石になります。

サマコバ磁石のキュリー温度は約700~800℃であり、高温に対して非常に高い耐久性を有しています。ただし、サマコバ磁石はその希少性から価格が高く、常に変動するためコストが高くなりやすい点がデメリットです。

サマコバ磁石のその他情報

1. サマコバ磁石の発火

サマコバ磁石は熱に強い反面、条件によっては発火するおそれがあり、取り扱いに注意が必要です。特に、磁石表面が乾いている状態やきれいに研磨されている状態では発火しやすく、低い温度で燃えてしまう可能性があります。

また、サマコバ磁石は他の磁石と比べて脆く、衝撃によって欠けやすく、使用方法によってはサマリウムコバルト合金の微粉末が生じる場合があります。一般的に、希土類などの金属粉末は、燃えやすい性質です。

そのため、消防法の危険物第二類 (可燃性固体) 第一種の危険物に指定されています。摩耗や欠けによりサマコバ磁石の粉末が生じるような状況を避けて、安全に使用する必要があります。

2. 希土類磁石とサマコバ磁石の歴史

1960年代頃より希土類磁石の研究が行われてきました。それまで、元素自体が強磁性を有する「鉄、コバルト、ニッケル」の組み合わせが主流でした。しかし、鉄やコバルトなどの強磁性材料に希土類元素を組み合わせると磁石としての性能が大幅に改良されることが発見されました。それ以降、希土類磁石の研究が行われています。

1966 年に米国の研究者により,コバルトに希土類元素であるイットリウムを混ぜた化合物が磁石に適していると発表しました。70年代には希土類元素であるサマリウムをコバルトに混ぜると飛躍的に性能が向上するとわかりました。そののち、日本の俵好夫博士がサマリウムとコバルトを主成分とするサマコバ磁石を発明して現在に至ります。

なお、俵好夫博士が発明したサマコバ磁石は、Sm2Co17をベースにを含有させたものです。そののち、TDKが東北大学・金子・本間博士等の研究を受け継ぎ、1976年にSm2(Co,Fe,Cu,Zr)17の複合組成系で最大エネルギー積が30MGOeの高性能磁石の工業化に成功しました。

このSm2(Co,Fe,Cu,Zr)17の複合組成系のサマコバ磁石は、ソニーのウォークマンの初代機のモータ部に搭載され、当時としては圧倒的な小型・軽量化を実現しました。

参考文献
https://www.magna-tokyo.com/jishaku/smco/smco
https://www.neomag.jp/products_navi/smco/smco_introduction.html
https://www.neomag.jp/mag_navi/mames/mame_seibun.html
https://www.chart.co.jp/subject/rika/scnet/60/Snet60-1.pdf

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