吸着パッド

吸着パッドとは

吸着パッド

吸着パッドとは、搬送システムにおいて、搬送する物品 (以下、ワークと称します) を吸着して搬送する部品です。

吸着パッドには真空発生器が接続されています。吸着パッドの吸着面とワークを接触させた状態で、これらの間の空間の圧力を真空発生器により周囲の空気圧よりも低圧 (真空) とすることにより吸着パッドにワークを吸着させて搬送します。吸着パッドと真空発生装置があれば利用できるため、様々な分野で使用され、生産効率を改善できる部品です。

吸着パッドの使用用途

吸着パッドは、吸着パッドと真空発生装置の構成で利用できるため、様々な分野で使用されています。

例えば、自動車の車体プレス鋼板・ホットスタンピング鍛造鋼板などの比較的重量のある金属の搬送や、板ガラスやフィルム・プラスチックなどの板状のもの、段ボール箱や木材などの表目粗さがあるものの搬送などです。

また、菓子などの食品やシリコンウェハやセルなどの電子部品の搬送にも対応できます。

吸着パッドの原理

吸着パッドは、接続されている真空発生器を用いてワークとの間の空間を真空にすることで吸着します。すなわち、吸着パッドとワークの間の空間の圧力を周囲の空気圧 (通常は大気圧) よりも低くすることで吸着が起こるのが吸着パッドの原理です。吸着パッドの吸着力は大気圧と吸着パッド内の圧力との圧力差に正比例します。

吸着を停止する場合には、真空発生器により制御される吸着パッドの真空度を低くすれば、ワークの自重を支えきれなくなった時点で吸着は停止し、吸着パッドとワークは離れます。

なお、真空発生器は、ベンチュリー効果を用いるエジェクター、モーターの回転によりベーンが回り気体を吸引する真空ポンプインペラの回転により周りの気体を吸引する真空ブロワの3種類です。

吸着パッドの種類

吸着パッドは、様々な形状や種類のワークに触れるため、使用環境・保持力・耐久性を考慮した様々なサイズ・材質・形状で製造されています。

1. 形状

吸着パッドの形状は、大きく平形・長円形・ベローズ (じゃばら型) の3種類です。平形は、表面が平たいワークで用いられます。

長円形は細長いワークで用いられ、パイプの様に吸着可能な面積が狭い場合にも好適です。長円形は、形状が平たくパッドの内の容積が小さいことから、短時間でワークを吸着できるメリットもあります。ベローズ形はそのじゃばら形状を生かし、ワークの高さにばらつきがあり、必要に応じて高さの補正が必要となる場合に用いられます。

2. 材質

吸着パッドの材質の代表的なものは、ニトリルゴムやシリコンゴムおよびポリウレタン、高温用特殊素材などです。例えば、食品の場合は食品に影響を及ぼさないシリコンゴムの吸着パッド、自動車の車体に使用する場合は耐油性がありシリコンフリーの材質の吸着パッドが使用されます。

吸着パッドの材質は、ワークの材質はもちろんのこと、その使用環境にも合わせることが必要です。例えば、耐久性や高速搬送が求められる場合には交換頻度の少ない高耐久性の材質を使用します。

吸着パッドの選び方

吸着パッドの選定では最初に使用条件を決定します。使用条件の主なものは、ワークの重量、吸着姿勢、使用真空圧、ワークを持ち上げる際の加速度、ワークを移動させる際の加速度、ワークと吸着パッドの摩擦係数などです。

ここでは、ワークを垂直方向に持ち上げてピックアップしたあとに、水平方向に移動する例を用いて説明します。

  1. まず、ワークを垂直方向に持ち上げピックアップする際の吸着パッドの理論保持力を求めます。吸着パッドの垂直方向にピックアップする際の理論保持力は、ワーク重量に、重力加速度とワークを垂直に持ち上げる加速度の和を乗じ、さらに安全率を乗じた値です。安全率とは、実際の使用に関する係数で、一般的なワークでは1.5程度、危険性があるワークや通気性があるワークなどの強い吸着効果が必要な場合には、2.0以上とします。
  2. 次に、ワークを垂直方向にピックアップしたのち、水平方向に移動する際の吸着パッドの理論保持力を求めます。ワークを水平方向に移動する際の吸着パッドの理論保持力は、ワーク重量に、重力加速度とワークを水平方向に移動する際の加速度を摩擦係数で除した値の和を乗じ、さらに安全率を乗じた値です。
  3. 最後に、実際の装置に使用する吸着パッドの理論保持力は、ピックアップ時と水平移動時の大きい方とし、吸着パッドの選定に使用します。実際の装置においては、吸着パッドは単体で使用する場合と、複数個をセットで使用する場合があります。

個々の吸着パッドの理論上の吸着力は、大気圧と吸着パッドの圧力の差を大気圧で除した値に、吸着面積と大気圧による力を乗じた値です。単体で使用する場合はこの値が理論保持力より大きくなる吸着パッドを選定します。一方、複数個で使用する場合には、個々の吸着パッドの吸着力に吸着パッドの数量を乗じた値が、理論保持力より大きくなるように吸着パッドを選定します。

吸着パッドの材質は、一般的な用途ではニトリルゴムが多く使用されますが、静電気を嫌う環境では導電性ニトリルゴムや導電性シリコンゴムを使用するクリーン環境では、フッ素ゴムを使用するなど、用途やワークの材質に合わせた選定が必要です。

吸着パッドのその他情報

吸着パッドの寿命

吸着パッドはゴムでできているため、使用していくと吸着面が摩耗していきます。摩耗状況は使用頻度や真空圧によって様々ですが、摩耗が激しくなると空気の漏れが発生し、吸着力が落ちる、吸着までの時間が長くなるなどの不具合が生じます。

吸着パッドは通常、消耗品として扱われており、吸着面の摩耗を考慮した定期的な交換が必要です。交換時期は使用環境で異なりますが、摩耗による空気漏れで必要吸着力が得られない場合、ワークの落下など大きな事故につながる恐れがあり、余裕をもった交換時期を設定する必要があります。

例としては吸着パッドでの漏れによる真空圧力低下を測定し、規定値を下回った場合は交換するなど、基準数値を決めておく方法がよく用いられます。

参考文献
https://www.fukudaco.co.jp/support/glossary/vacuum-pad.html
http://www.schmalz.co.jp/products/vacuum-components/suctionpads.html
http://www.schmalz.co.jp/fileadmin/schmalz/country-pages/jp/pdf/VT_Main-2012/vt-vacuum_components-2012_06-P0163-vacuum_knowledge_system-cp-01.pdf
https://jp.misumi-ec.com/tech-info/categories/press_mold_design/pr01/a0217.html http://www.smcworld.com/newproducts/ja/pdf/zp3.pdf

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