エッチング液とは
エッチング液は金属や金属酸化物を腐食させる薬剤で、基板などを加工するときに用いられます。プレスなどの加工方法に比べてエッチングは微細加工性に優れる方法で、エッチング液を用いるウェットエッチング法はガスなどを用いるドライエッチングに比べてコスト、量産性に優れます。金属の種類によって反応する化合物の種類が異なるので、基板の材質に応じて適切なエッチング液を選定します。
なお、エッチング液には強酸、強塩基や有毒な化合物が含まれていることが多いため、使用前には保護具の選定や安全対策をとることが求められます。
エッチング液の用途
エッチングとは金やアルミニウムなどの金属、ならびに酸化インジウムスズ(ITO)などの金属酸化物を浸漬除去して加工する方法です。エッチングにはガスなどを用いるドライエッチングと溶液に金属を溶解させるウェットエッチングがあり、エッチング液はウェットエッチングで用いられます。
エッチング処理はプレス加工などに比べて微細加工が可能であるため、プリント基板や半導体デバイス、ディスプレイの生産に用いられています。製造現場では精密な加工が必要な場合はドライエッチング、コストや量産性を求めるときはウェットエッチングといったように2つの方法が使い分けられています。
エッチング方法とエッチング液の種類
ドライエッチングはガスやプラズマなどを用いてエッチング処理を行う方法です。微細加工性に優れますが真空などの特殊な条件が必要であるためコストが大きく、大量生産には適していません。
一方でウェットエッチングは金属を腐食させる化合物が含まれたエッチング液を用いて処理を行います。金属の種類によって反応、溶解する化合物は異なるため、様々なエッチング液が販売されています。
例えば塩酸や硝酸などの強酸、水酸化ナトリウムなどの強塩基、そのほか塩化鉄(Ⅲ)など酸化力の高い重金属イオンが含まれるものもあります。
エッチング液を用いたプリント基板の処理
エッチング液の使用例としてプリント基板の処理を紹介します。プリント基板のパターン面は銅であるため、銅を腐食、溶解させるエッチング液を選択する必要があります。ここでは市販されている液を3種類紹介します。
• 塩化鉄(Ⅲ)水溶液を使ったエッチング
反応式:2FeCl3 + Cu → 2FeCl2 + CuCl2
3価の鉄イオンを酸化剤として作用させる反応を利用した一般的な方法です。エッチングの再現性が高く、コストも安い方法ですが、銅などの重金属を含んだ廃液が多く生じるため、廃液処理のコストがかかります。
• 塩化第二銅水溶液を使ったエッチング
反応式:CuCl2 + Cu → 2CuCl
上記の塩化鉄(Ⅲ)水溶液を用いたエッチングに比べてエッチング特性は劣りますが、エッチング液をリサイクルできるという利点があります。
• ペルオキソ二硫酸アンモニウムを使ったエッチング
反応式:Cu + (NH4)S2O8 → CuSO4 + (NH4)2SO4
単独ではエッチング速度が遅いため、銀イオンなどの触媒が用いられます。過酸化物であるため分解が起こりやすく、不安定です。
エッチング剤の廃液処理
エッチング液は金属をイオン化させて溶解させるため、使用後の液には大量の重金属イオンが含まれます。したがって、未処理の廃液は環境へ排出することができません。そのため一般的にはエッチングの廃液処理は専門の廃液処理業者に委託します。
なおエッチング液の廃液には強酸、強塩基も含まれているため容器の材質によっては保管中に容器が腐食する危険性があります。したがって、まず薬品耐性がある適切な容器を選定することが重要です。なお、使用前、使用後によらずエッチング液は皮膚や眼への刺激性などの危険性があります。エッチング液を扱うときは安全データシート(SDS)を事前に熟読し、適切な保護具を着用の上、十分に注意して取り扱う必要があります。
参考文献
https://www.hirai.co.jp/technology/etching/
https://www.kanto.co.jp/dcms_media/other/backno5_pdf53.pdf
https://jp.misumi-ec.com/tech-info/categories/surface_treatment_technology/st01/c1934.html
http://www.pbfree.jp/topics/c-111/
https://www.aion-kk.co.jp/column/etching_vol4/