ハンドリングロボットとは
ハンドリングロボットとは、主に製造工場などでワークを搬送するために使用される産業用ロボットのことです。
人の腕のように動く垂直多関節ロボット、水平方向と垂直方向だけの動作に特化した水平多関節ロボット (スカラーロボット) 、直交ロボット、パラレルリンクロボットなどがあります。最近は、安全柵で囲む必要のない人協働ロボットもハンドリングロボットとして使用されています。
人協働ロボットでは、人と接触しても人がケガをしにくい構造や動作スピードが採用されており、人協働ロボットは人とハンドリング作業を行うロボットです。
ハンドリングロボットの使用用途
ハンドリングロボットは、主にピックアンドプレースや梱包、パレタイジングなどの作業を行います。製造業や物流業など、業界は幅広いです。
1. ピックアンドプレイス
ピックアンドプレイスは特定の位置にある部品や製品 (ワーク) を掴んで持ち上げてから、指定の位置まで運んで降ろす作業です。パラレルリンクロボットやスカラーロボット、垂直多関節ロボットなどほとんどのロボットが使用されています。
2. 包装
梱包はピックアンドプレイスに近い作業で、ワークを段ボールや発泡スチロールなどの梱包材に詰めていきます。アームが2本ある双腕型のスカラーロボットや人型ロボットなどが使われています。
3. パレタイジング
パレタイジングは梱包済みの製品やカートン、箱、袋、製品自体などのワークをパレットの上に整列、積み上げていく作業です。ハンドリングロボットに要求される動作は単純になります。重量物に対応可能で、可動域が広い垂直多関節ロボットが使われています。
ハンドリングロボットの原理
ハンドリングロボットは、ワークを把持するハンドおよびハンドが連結されるアームを備えています。ハンドには、指や爪を用いてワークを機械的に掴む把持ハンドや真空吸着や磁気吸着によってワークを吸着して把持する吸着ハンドなどがあります。把持ハンドでは、複雑な形状のワークの把持が可能です。吸着ハンドでは、短時間でのワークの把持が可能です。
近年、ハンドリングロボットに3次元ビジョンセンサを搭載することによって3次元的にワークの状態を確認してワークの必要な箇所を把持できるようになってきました。そのため、従来はパーツフィーダと呼ばれるワークを整列させて所定の位置まで運ぶ装置を使ってワークの供給を行っていましたが、ロボット自体がワークの状態を判断してワークを把持できるようになっており、いわゆるバラ積み状態のワークの把持が可能になっています。
ハンドリングロボットの種類
冒頭で紹介したようにハンドリングロボットには、垂直多関節ロボット、水平多関節ロボット、直交ロボット、パラレルリンクロボットなどがあります。
1. 垂直多関節ロボット
垂直多関節ロボットは、人間の腕に近い構造を持つロボットです。一般的に4軸、5軸または6軸で構成されています。それぞれの軸を回転させることによって、3次元空間上での自由な動作が可能です。
2. 水平多関節ロボット
水平多関節ロボットは、水平方向に動作するハンドを持つロボットです。基本的に4軸で構成され、水平方向に動作する3軸と垂直方向に動作する1軸を持っています。
3. 直交ロボット
直交ロボットは単軸の直動ユニットを組み合わせたシンプルな構造のロボットです。一般的に2軸、3軸または4軸で構成されています。
4. パラレルリンクロボット
パラレルリンクロボットは、並列に繋がれた複数のリンクを持つロボットです。ハンドリングできるワークの重量やロボットの稼働範囲は制限されますが、精密で高速な動作が可能になっています。
ハンドリングロボットのその他情報
ハンドリングロボットのメリット
ハンドリングロボットは、人手不足が深刻になると予想される将来への準備として人の代わりに製造工程の一部を担う存在です。重たいものを簡単に持ち上げることが可能で、24時間365日休むことなく働き続けます。
また、従来は人とロボットの間に安全柵が必要でしたが、人にやさしい設計になった人協働ロボットを使うことで安全柵を設置せずに、人からロボットに手渡しでワークを渡すことも可能になっています。