監修:株式会社イーソニック
パラメトリックスピーカーとは
パラメトリックスピーカーとは、超音波を使って音を発生させることによりピンポイントに音を届けることの出来る超指向性スピーカーです。
音の伝わる強さが方向により異なる性質を音の指向性といいますが、この指向性が特に狭くなっている状態は超指向性と呼ばれています。パラメトリックスピーカーは超指向性を有し、パラメトリックスピーカーから出た音は広がらずに直進性が高く、ピンポイントに音を届けることが可能です。
パラメトリックスピーカーは、美術館や商業施設で特定の位置にいる人へ向けての音声案内など様々な場所で使用されています。また、パラメトリックスピーカーから出た音は、高い直進性で減衰も少なく壁などで反射することから、反射音を使った利用法もあります。
パラメトリックスピーカーの使用用途
パラメトリックスピーカーは様々なシーンで使用されています。以下はその使用用途の一例です。
1. 美術館・博物館
静かな環境である美術館や博物館において、特定の展示物の前にいる人に向けて展示品の説明を流すことが出来ます。パラメトリックスピーカーは超指向性を持つため、隣の展示物で別の説明を流しても隣同士の音声が干渉し合うことがありません。
また、鑑賞者の言語に合わせた案内をすることも可能です。
2. デジタルサイネージ
商業施設・駅などデジタルサイネージが配置された雑音が多い場所であっても、デジタルサイネージの前にいる人に向けて音声案内をすることが出来ます。
3. 注意喚起の呼びかけ
パラメトリックスピーカーは、エスカレーターの乗降時など注意が必要な場所での呼びかけにも有効です。また、危険なエリアに入りそうな人に注意喚起をすることも出来ます。
工場、工事現場、高速道路の注意喚起用として、パラメトリックスピーカーが設置されている例もあります。
4. テレワーク
テレワーク時に、短距離型のパラメトリックスピーカーを使用することにより、イヤホン無しで周りを気にせずにオンラインミーティングをすることが出来ます。また、環境音も聞きながらPC作業などを行いたい場合にも有効です。
5. 壁などの反射利用
パラメトリックスピーカーから出た音は、直進性が高く減衰も少なく壁・窓などで反射します。
アミューズメント施設でキャラクターなどの対象物へ向けてパラメトリックスピーカーを設置することで、対象物が音声を発しているかの様な効果を狙う利用の仕方もあります。
パラメトリックスピーカーの原理
パラメトリックスピーカーは、人間には聞こえない40kHz程度の周波数の超音波を使って音を発生させます。以下に主要な構造と原理を記載します。
1. パラメトリックアレイ構造
超音波の発生には、小型の超音波素子を複数個並べたパラメトリックアレイと呼ばれる構造をとります。直進性が高い超音波の性質とアレイ構造をとることにより、特定のエリアにだけ超指向性を有した音を発生させることが出来ます。
2. 振幅変調
超音波を聞こえる音に変える仕組みは、ラジオの原理と同様に周波数変調 (FM) と振幅変調 (AM) がありますが、ここでは代表的な振幅変調の原理を記載します。
パラメトリックスピーカーは、超音波を可聴音により振幅変調し、キャリア波と可聴音成分を有する側帯波の2種類の超音波を同時に発生させます。
2種類の超音波が空気中を伝搬する中で、2種類の超音波の干渉で生じたうなりが、空気の非線形性により可聴音として復調され聴こえる様になります。超音波が干渉する領域のみで復調するため、可聴音は超音波と同じ超指向性を有した音になります。
パラメトリックスピーカーの選び方
パラメトリックスピーカーを設置する際には、設置場所・用途に合った製品を選ぶことが大切です。以下に、主に考慮すべき項目を記載します。
1. 寸法・質量
狭い場所や端末などへの設置にはコンパクトな製品が向いており、隣り合ったランニングマシンにパラメトリックスピーカーを複数並べて設置した例もあります。
2. 出力レベル
広い設置場所での用途には出力レベルが高く長距離型のもの、テレワーク用には短距離型のパラメトリックスピーカーが向いています。
3. 周波数帯域
周波数帯域により聞こえる音域が様々変化しますので、音楽や音声案内など使用したい音域を考慮する必要があります。
4. その他
温度・湿度などの耐候性、屋外で使用する場合には耐久性・耐水性、アンプ内蔵型・外付け型など、使用用途に合わせ製品の特徴を確認します。
本記事はパラメトリックスピーカーを製造・販売する株式会社イーソニック様に監修を頂きました。
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