レンガ鏝とは
レンガ鏝とは、左官道具の一つで、レンガなどの資材を積むときに使うコテの一種です。
形状、材質、仕上げ方などによって様々な種類がありますが、一般的に1種類だけでは全ての作業に対応できず、複数のコテを使い分けて仕上げます。実際に左官職人は塗りやすさや仕上げ方によって数十本のコテを使い分けており、レンガ鏝はレンガやブロックなどを積む作業に用いられます。
レンガ鏝の使用用途
レンガ鏝の形状にはトランプのスペード型や桃型が多くあります。コテ本体は小さいものの、幅広い使用用途があり、主にモルタルを使う作業に重宝されます。モルタルをすくったり、塗ったり、かき混ぜたり、平らにならす作業に役立ちます。コテの先端部分を使うとバケツの中にある材料を隅々まで撹拌可能です。
レンガ鏝の原理
1. レンガ鏝の握り方
利き手の人差し指、中指、薬指、小指で柄部分を軽く握り、親指は柄部分の上部先端の左側に軽く添えます。卵を握るような感覚で、柄の部分と掌の間に少し空間ができるように持ちます。
2. レンガの積み方
シャベルを使うようにモルタルをすくい、コテの背部分にモルタルを載せます。モルタルをレンガの幅に合わせて2列に並べ、その上にレンガを積んでいきます。
3. レンガ鏝の洗い方
作業を終えたら、コテ部分に付着した材料をよく洗い流します。乾いたタオルで水気をよく拭き取ります。
レンガ鏝の選び方
レンガ鏝の大きさや形状は様々です。作業する環境や目的に合わせて適切なものを選ぶ必要があり、以下にポイントをまとめます。
1. 大きさ
一般的にレンガ鏝の大きさは5種類に大別され、1番、2番または1号、2号などで表されます。1番 (1号) が最も大きく、5番 (5号) になるほど小さくなります。積みたいレンガが大型になると置くモルタルの量も増えるため、レンガの大きさに合わせて使い分けることがポイントです。
2. コテ部分の形状
コテ部分の形状は、桃型またはお福型の2タイプが最も多いです。円型や特殊な形状をしたものもあり、形状の違いで使い勝手が異なります。
レンガ鏝の構造
コテ部分の形状には次の3種類があります。
1. 桃型
桃型はコテ部分がふっくらしていて横幅があり、先端に向けて小さくなっています。レンガに塗ったモルタルを均しやすいため、全形レンガのような大きいものにも利用可能です。
2. お福型
お福型はおたふく型とも呼ばれ、形状は桃型に似ていますが、桃型よりもコテ部分のふくらみが下側にあります。モルタルなどをすくったときに大きな塊にしやすいため、表面が小さくても材料を盛りやすい形状です。
3. 丸型
丸型はバケツやトロ箱の中に残っているモルタルなどをしっかりすくえます。桃型やお福型のように先端が尖っていないため、材料が入った容器を傷つけません。ただし丸型を使用しながらモルタルを盛りつけたり平らにするのは難しいため、桃型やお福型の補助用として利用される場合が多いです。
レンガ鏝の種類
鉄、ステンレス、木がレンガ鏝の材質として挙げられます。以下に各素材の特徴をまとめます。
1. 鉄
鉄のコテは鋼の性質や焼きつける方法で値段や硬度が異なります。主な鋼の種類には、炭素工具鋼・ハイカーボン鋼・安来鋼・スウェーデン鋼などがあります。炭素工具鋼は鉄に炭素・ケイ素・マンガンなどを含む鋼のことで、ハイカーボン鋼は通常よりも炭素が多い鋼です。安来鋼は島根県の直接製鋼法で作られた鋼の総称で、スウェーデン鋼はスウェーデンで産出された鉄で作られる鋼のことです。
焼きつけ方法は、本焼き・油焼き・半焼き・地金に大別されます。本焼きが最も硬く、地金が最も軟らかいです。本焼きは焼入れと焼き戻しによって作られ、セメントなどに利用可能です。油焼きは塗りやすく、焼入れ後に300°C程度で焼き戻しを施します。半焼きや地金は滑りにくいため、主にモルタルの中塗りに使用されます。製造元やメーカーによって異なりますが、半焼きは本焼きと比べて焼入れが軽いものや、焼入れをしないものを指し、地金は焼入れをしないタイプです。
2. ステンレス
ステンレスは本焼きよりもさらに硬いです。扱いやすく錆びにくい点が特徴です。
3. 木
金属製以外にも木製などもあります。表面がざらつくため、下塗りに使われます。