インライン粘度計とは
インライン粘度計とは、配管や液体の材料などが入ったタンクの中において、流体の粘度計の粘度を知るための計測器です。
液体の粘度は測定対象の製造ラインなどに直接装置を設置し、リアルタイムで粘度が算出されるデジタル式の製品が多いことから、インライン粘度計と呼ばれています。また、インライン粘度計は粘度を計測するだけでなく、測定値からその他の安全装置の起動や流量の調整、撹拌の速度などを調整するためのスイッチの役割としても使用されます。
インライン粘度計の使用用途
インライン粘度計は、化学工場やプラント、食品工場などで使用されます。インライン粘度計の選定の際には、対応する流速や粘度、測定精度、メンテナンス性、出力のモニタリングのしやすさなどを考慮することが大切です。
また、粘度は温度にもよって変化するため、プラントの工程の中で温度などの環境が変化する場合は、測定部の温度も同時に測定できる製品が適しています。
インライン粘度計の使用例を以下に示します。
- 化学工場における撹拌作業時の混合の度合いのモニタリング
- 食品工場の輸送管における食品状態の管理
- 塗料製造工程における塗料の粘度管理
- 製紙工場でのコーティング材の粘度管理
インライン粘度計の原理
インライン粘度計の多くは、ねじり回転運動への抵抗の大きさから対象となる流体の粘度を算出しています。振動式と表現されることもありますが、これは棒にねじり振動を与えて粘度を測定するためです。
振動式のインライン粘度計では、トーションロッドと呼ばれる長くて細い棒の両端に同じ慣性質量を持つ2つの慣性マスを取り付け、一方を検出子として液体中に入れます。トーションロッドの長手方向を回転軸として回転振動を与えると、粘度を持った液体中にある測定子は空気中にある慣性マスに対して抵抗を受けるので、トーションロッドはねじり外力を受けることになります。
インライン粘度計の測定原理は、空気中の慣性マスと液体中にある測定子との振動振幅の変化を粘度の変化を粘度として算出するものです。なお、トーションロッドの振動は、セラミックアクチュエータなどを用いて発生させています。セラミックアクチュエータは圧電 (ピエゾ) アクチュエータとも呼ばれ、外力が加わると変形し、電圧を発生する圧電効果という性質を持つものです。
インライン粘度計の構造
インライン粘度計は、配管やタンク内に接続する測定部と、粘度を計算し出力する操作部や表示部の2つから構成されています。
測定部は配管に接続するためのハウジングがあり、ハウジングの中には上下に同じ大きさの慣性マスが取り付けられています。上側の慣性マスは空気中に、下側の慣性マスは液中に浸かり、粘度の計測時にはそれぞれ異なる抵抗を受けます。
2つの慣性マスをつなぐ細い棒は、トーションロッドです。トーションロッドは液体の粘度の大きさに、よってねじり力を受けます。また、慣性マスとトーションロッドにねじり振動を与えるための駆動部があり、セラミックアクチュエータが取り付けられています。
インライン粘度計のその他情報
粘度の定義
粘度は液体を2枚の板で挟んだ状態から説明されます。まず、2枚の板のうち一方を固定し、もう一枚をある速度で水平方向にずらす時、2枚の板の相対的な速さを板同士の間隔で割った値が「ずり速度」です。
また、2枚の板の間で生じる摩擦力から受ける抵抗力を「ずり応力」と呼びます。あるずり速度Vとずり応力τを以下の式に当てはめた時の係数μが、液体の粘度と定義されています (μ=τ/V) 。
なお、粘度はずり速度によらず一定になる流体ばかりではありません。ずり速度によらず粘度が一定である流体は「ニュートン流体」、粘度が一定にならない流体は「非ニュートン流体」と呼ばれています。さらに、非ニュートン流体にはその特性から、塑性流体、擬塑性流体、ダイラタント流体の3つに分けられています。
参考文献
https://www.sekonic.co.jp/product/viscometer/download/pdf/catalog/catalog_inline.pdf
https://rheonics.com/ja/solutions-item/inline-viscosity-measurements-in-polymerisation-reactions/