自動車用バッテリー管理システム

自動車用バッテリー管理システム

自動車用バッテリー管理システムとは、電気自動車やハイブリッドカーなどに搭載される車載用リチウムイオン電池の安全制御を行うシステムです。

一般的に、リチウムイオン電池などの二次電池について、安全管理を行うシステムをバッテリーマネジメントシステム (BMS) と呼びます。自動車用バッテリー管理システムとは、BMSの中でも車載用バッテリーに特化したシステムです。リチウムイオン電池は高効率でエネルギー密度が高い一方、発火や発煙などの危険性があるため、適切に制御を行う必要があります。自動車用バッテリー管理システムを使用することで、安全で効率的なバッテリー運用が可能です。

自動車用バッテリー管理システムの使用用途

自動車用バッテリー管理システムの主な使用用途は、車載バッテリーを適切に制御することで、安全性とパフォーマンスを高めることです。また、健全なバッテリーの使用により、バッテリー寿命が延びる効果も期待されます。

自動車用バッテリー管理システムが使用される主な車両は下記の通りです。

  • ハイブリッド車 (HEV)
  • プラグインハイブリッド車 (PHEV)
  • バッテリー電気自動車 (BEV)
  • フルハイブリッド車 (FHEV)
  • 商用車および農業用車両(CAV)
  • 低速電気自動車
  • 電動二輪車/三輪車

自動車用バッテリー管理システムの原理

自動車用バッテリー管理システムは、バッテリーの充放電を電子制御回路で監視および制御します。
具体的な監視項目には

  • 電圧
  • 温度
  • 容量
  • 充電状態
  • 消費電力
  • 残りの動作時間
  • 充電サイクル

などがあります。また、バッテリーに過度な負担をかけないこともバッテリー管理システムの役割の一つです。極端な急速充電や高放電電流によって生じる、セル (バッテリーモジュール内の単電池) の過放電や過電圧を防ぐ機能があります。

1. 具体的な機能

自動車用バッテリー管理システムの主な機能は下記の通りです。

  • セルの過充電、過放電を防ぐ機能
  • セルの過電流を防ぐ機能
  • セルの温度管理を行う機能
  • 電池残量を算出する機能
  • セル電圧の均等化 (セルバランス) を行う機能

自動車用バッテリー管理システムは、バッテリーモジュール (組電池) におけるセル(単電池)の電圧、電流、温度を測定します。規定の範囲を超えた場合、出力端子を切り離すことで過充電、過放電、過電流などからの保護を行い、電池残量を測定することで電力供給を制御することが可能です。

また、セルごとの電圧差を解消する働きも行い (セルバランシング機能) 、異なるバッテリーセルが同じ充放電要件を持つように管理します。

2. 装置構成

自動車用バッテリー管理システムは、大きく分けて下記のような構成になっています。

電圧検出:バッテリーモジュールおよび各セルの電圧を計測する
モニタリング回路:セルごとに状態を監視し、セルバランス調整を行う
温度検出:セルごとに温度を計測する
制御回路:BMSの計測、バランス調整を制御する
電流検出:ユニット全体の電流を計測する
電圧検出:ユニット全体の電圧を計測する
ジャンクションボックス:異常時に遮断しバッテリを保護する
地絡検知:ユニット全体の地絡を検知する

また、具体的には、次のような電子部品が用いられています。

  • 温度計測: NTCサーミスタなどの温度センサー
  • セルバランスの調整、電圧計測: チップ抵抗器
  • 制御回路 : DC/DCコンバータ回路
  • ノイズ除去、スイッチング・平滑: 導電性高分子ハイブリッドアルミ電解コンデンサ
  • 電圧変換: 車載用パワーインダクタ
  • ESDノイズ除去: チップバリスタ

自動車用バッテリー管理システムの種類

自動車用バッテリー管理システムは、車種によって種類が異なります。ハイブリッド車 (HEV) 、プラグインハイブリッド車 (PHEV) 、バッテリ電気自動車 (BEV) など、車両の種類に合わせて選択することが必要です。

車両種別以外では、製品によって、一般的には監視可能なセルの数、バッテリー電圧の種類 (12-24Vや48Vなど)、電圧制御の精度などが異なります。また、特に高電圧電池が使用されている場合では、高電圧用のシステムを使用することが適切です。

大物鋳物

監修:株式会社マルトモ

大物鋳物とは

大物鋳物とは、鋳物技術を使用して製造された大型の金属製品です。

鋳物とは鋳造によって製造された金属製品です。金属を溶かして型に流し込み、冷却固化させることで製品を形成します。産業の多くで重要な役割を果たしており、大規模な機械や構造物の製造に不可欠な技術です。

大物鋳物は高温で大量の金属を扱うため、特に頑丈な鋳型や設備を使用します。建設や重機械などの様々な分野で、大型構造物として利用されています。材料となる金属は鋼鉄が多く使用されますが、アルミニウムや銅によって大物鋳物を製造することも可能です。

大物鋳物の使用用途

大物鋳物は様々な用途で使用されます。以下はその一例です。

1. 建築物

建設業において、大物鋳物は様々な用途で活用されます。建築構造物としては柱や梁などに使用されることが多いです。また、排水管や排水格子などの鋳鉄部品は耐久性や長寿命が求められるため、大物鋳物も多く活用されます。

さらに、鉄道橋の建設には大型の鋳鉄製品が必要です。構造的な強度や耐久性が重要であるため、大物鋳物が最適です。

2. 船舶

船舶の船体は大物鋳物で作られることもあります。船首や船尾の構造部分など、船体の主要な部品は鋳造されることが多いです。これらの部品は船の構造的な強度と安定性を確保するために不可欠です。

3. 重機

クレーンは重い貨物を持ち上げて移動させるための機械です。クレーンのアームやフレームなどの構造体は大物鋳物によって製造されることがあります。また、動力源となるエンジンのシャフトなども大物鋳物を使用することが多いです。

4. エネルギー施設

発電所では、ボイラーやタービンなど、高温・高圧条件下で使用される部品が必要です。これらの部品は高い耐久性と信頼性が求められるため、鋳造されることがあります。風力発電所のブレードも大型で複雑な形状を有するため、大物鋳物によって製造されます。

大物鋳物の原理

大物鋳物の原理は鋳造プロセスに基づいています。以下はその工程です。

1. 溶解

鋳造プロセスは最初に適切な金属を溶かすことから始まります。金属は高温で溶解され、液体の状態になります。この際、適切な合金化元素が添加されることもあります。

2. 型への注入

溶けた金属は特定の形状や寸法を持つ型に流し込まれます。型は金属や砂などの材料で作られることが多いです。方に流し込むことで、液体となった金属が所望の形状へと変わります。

3. 冷却固化

溶けた金属が型内に注入されると、冷却が始まります。金属が冷却するにつれて液体の状態から固体の状態に変化する仕組みです。この過程で金属の結晶構造が形成され、製品が固体化します。

冷却時間も鋳造品の重要なパラメータであり、長短によって結晶構造が変化します。適切な冷却時間を確保することで、金属の結晶構造が適切に形成され、製品の強度や耐久性が向上します。また、不十分な場合は、内部に気泡や欠陥が発生することも多いです。

4. 取り出し

金属が完全に固まった後に型から取り出されます。取り出しの際、製品が型に引っかかったり損傷したりしないように注意が必要です。取り出された製品は必要に応じて研磨や表面処理などの仕上げが施されます。

大物鋳物の選び方

大物鋳物を選ぶ際は、以下の選定要素を考慮することが重要です。

1. 材質

材質は製品の耐食性などに大きな影響を与えます。鋳造に使用される材料には鉄鋼やアルミニウムまたは真鍮などがあります。製品の用途や環境条件によって材質を選定することが重要です。

2. 強度

大物鋳物は大型構造物に使用されるため、強度は重要な要素です。建築構造物や重機部品のように、高い耐荷重性や衝撃耐性が求められる場合は、強靭な構造とする必要があります。製品が受ける負荷やストレスレベルを考慮して、適切な強度の構造または材料を検討します。

3. 品質

製品の品質は性能と信頼性に直接影響を与えます。製品内部に欠陥や不均一な結晶構造を持っていると、耐久性や寸法の精度に問題が生じる可能性があります。信頼性の高い製造者を選定することが重要です。

4. 形状

所望の形状で鋳造可能なメーカーを選定します。複雑なデザインを有する大物鋳物の場合、製造時に特別な配慮が必要な場合があります。形状によっては、特殊な鋳造プロセスや材料でのみ製造可能なことも多いです。

本記事は大物鋳物を製造・販売する株式会社マルトモ様に監修を頂きました。

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プラスチックダンボール

プラスチックダンボールとは

プラスチックダンボールとは、ポリプロピレンやポリカーボネートなどのプラスチック素材を段ボールと同様の中空構造のシートに成型したものです。

省略してプラダンと呼ばれることもあります。紙製の段ボールに比べて強度があり、耐久性や耐水性も格段に優れた特性を持ちます。梱包資材、物流資材をはじめとして、様々な用途で使用されている素材です。

※記事内において、広く使用されている製品名については「プラダン」と記載します。

プラスチックダンボールの使用用途

プラスチックダンボールは、梱包資材や物流資材を中心として様々な用途で使用されています。

1. 梱包資材

プラスチックダンボールを箱状に加工したものは、梱包材として使用され「プラダンケース」などと呼ばれています。繰り返しの使用や重量物の収納に耐えられるため、繰り返し使用する通い箱や、折りたたみのコンテナ、各種保管箱、引越しの際のハンガーボックスなどとしても利用可能です。

2. 物流資材

シート状のプラスチックダンボールは物流現場において建物や荷物を保護する緩衝材として使用されます。主な用途は壁・柱・窓・床などに傷が付くのを防ぐことを目的とした、養生シートやパレットの敷板などです。引越しや荷物搬入などにおいて使用されます。

3. 工業製品

プラスチックダンボールは軽さと強度のバランスが優れた素材であるため、軽量化を図る目的で、工業製品のパーツとして使用されることがあります。主な用途は、自動車の内装部品や機械の絶縁材、ベッドの中芯などです。

4. 看板

プラスチックダンボールは穴あけ加工や印刷ができ、水濡れにも強い性質があるため、看板としても使用されます。選挙ポスターの台紙としても使用される素材です。

5. DIY

プラスチックダンボールは、工作やDIY用途で利用される場合もあります。カッターで切断でき、素手で折り曲げて加工できる素材でありながら、紙製のダンボールよりも耐久性が高く、通常のプラスチックの板よりも軽量で加工しやすいためです。ペットサークル、引き出しの中仕切り、網棚の下敷きなどの他、半透明のプラダンを用いて窓用の断熱シートを作ることもできます。

プラスチックダンボールの原理

1. 概要

プラスチックダンボールは、熱可塑性樹脂であるポリプロピレンやポリカーボネートなどを材料として製造されます。

プラスチックダンボールは、通常のダンボールと同様に、2枚の平面板の間に中芯を挟んだ中空構造となっています。紙段ボールの中芯の断面が波型なのに対して、プラダンの中芯は真っすぐな柱が等間隔に並び、ハーモニカの吹き口のような断面です。この中芯を「リブ」、表層を「ライナー」と呼びます。

一般的なダンボールの場合は接着剤を用いて成形される一方、プラスチックダンボールは原料を型に流して押し出す「一体押出成形」で製造されます。すなわち、プラスチックダンボールには接着部分がなく、剥がれる心配がありません。

2. 特性

プラスチックダンボール (プラダン) には、下記のような特性があります。

  • 軽い
  • 加工しやすい
  • 強度が高い
  • 緩衝性がある
  • 耐久性・耐水性・耐薬品性に優れる
  • 繰り返し使用することができるため費用対効果が高い
  • 環境に優しい

プラスチックダンボールは中空構造を持つことから、プラスチックの一枚板よりも軽く、カッターなどで切断加工することも容易であるという特性があります。プラスチック素材であることから、熱を加えて溶着を行う成型も容易です。また、中空構造ゆえに衝撃を吸収する緩衝性があります。

紙製ダンボールに加えて水に強いのみでなく、酸やアルカリ、溶剤への耐性もあります。環境面では、長期間リユースできるため、ごみの削減に貢献できます。また、原料として使用されるポリプロピレンは、リサイクルしやすい素材です。軽量素材であることから、輸送時のCO2削減にも貢献できます。

プラスチックダンボールの種類

1. 素材種類

プラスチックダンボールには、1.5mmから7.0mmまで様々な厚みがあり、白・黒・半透明やその他にも青・水色・赤・緑をはじめとする様々なカラーバリエーションがあります。

その他、機能性プラスチックダンボール素材の種類には下記のようなものがあります。

  • 導電プラダン: 製造時に導電性物質であるカーボンブラックを含有させたプラスチックダンボールです。静電気対策に有用であり、特に埃の吸着や物品の静電気破壊を防ぐのに有効です。
  • 表面導電プラダン: 簡易的な静電気対策に使用されるプラスチックダンボールで、表層部分のみにカーボンブラックが含まれています。
  • バイオエコプラダン: 環境に配慮し、原料の一部に植物由来のプラスチック (バイオマスプラスチック) が添加されたプラスチックダンボールです。
  • エコリアルボード: リサイクル原料100% (顔料・添加剤を除く) で製造されたプラスチックダンボールです。

2. 製品形状

プラスチックダンボール製品には、大きな板状のプラダンシートや、プラダンケースとして箱状に成形されたもの、コンテナ型のものなどがあります。用途に合わせたものを選択することができます。

業務用洗濯機

監修:株式会社TOSEI

業務用洗濯機とは

業務用洗濯機とは、商業施設や産業用途で使用される大型の洗濯機です。

一度に多量の衣類や布地を洗うことができるように設計されている製品が多いです。一般家庭での使用よりも高価であり、設置にも専用のスペースや配管が必要な場合があります。ただし、大量の衣類を処理する必要がある商業施設などにおいては非常に重要な機器です。

業務用洗濯機の使用用途

業務用洗濯機は様々な産業および商業施設で使用されます。以下は用途の一例です。

1. 宿泊施設

ベッドシーツや枕カバーなどの寝具は、毎日洗濯する必要があります。業務用洗濯機は大量の寝具を一度に洗浄できるため、効率的に施設の清潔さを維持することが可能です。また、バスタオルなどのタオル類も、業務用洗濯機によって効率的に選択することができます。

2. 医療施設

病院では、患者の衣類や寝具、手術着などを使用するたびに洗浄する必要があります。業務用洗濯機は高温洗浄や消毒工程を備えた製品も多いため、病原菌や細菌を除去し、衛生的な状態を維持することが可能です。これにより、院内感染のリスクを最小限に抑えます。

3. 工業施設

工場や製造業の施設では労働者が着用する作業着を定期的に洗浄する必要があります。特に鉛などを取り扱う産業においては、事業者側で洗濯しなければならない場合も多いです。特に頑固な汚れを落とすことができる業務用洗濯機が重宝されます。

4. クリーニング所

クリーニング所では、様々な素材や汚れ具合に対応できる業務用洗濯機が求められます。これにより、衣類やリネン類を高品質かつ効率的に洗浄することが可能です。特に、ドライクリーニングが必要なデリケートな素材や、頑固なシミや汚れが付いた衣類を取り扱う際に、適切な洗浄プログラムを備えた業務用洗濯機が重宝されます。迅速な処理が可能なため、多くの顧客に迅速かつ満足のいくサービスを提供できます。

5. コインランドリー

コインランドリーでは、大型の業務用洗濯機が使用され、大量の衣類や大きな布製品を効率的に洗濯できます。業務用乾燥機も併設されており、短時間で洗濯から乾燥まで完了するため、利用者に好評です。特に布団やカーテンなどの大きなアイテムや、季節の変わり目に大量の衣類を洗濯する際に重宝され、コストパフォーマンスにも優れています。

業務用洗濯機の原理

業務用洗濯機の動作原理は、一般的な家庭用洗濯機と同様に、主に水と洗剤を使用して衣類を洗浄する仕組みです。

1. 水張り

まずは洗濯槽に水を注入します。業務用洗濯機では大量の水が必要なため、高容量のポンプが使用されることが多いです。水が注入された後、衣類の汚れを浮かび上がらせるために適度な洗剤が注入されます。

2. 衣類投入

同時に洗濯する衣類が洗濯槽に投入されます。業務用洗濯機では、大容量の衣類を一度に洗浄できるように、大型のドラム状に設計されていることが多いです。

3. 回転・洗浄

その後、洗濯時間や洗濯槽の回転速度などが定められた洗濯サイクルに従って動作が開始します。多くの場合は洗濯槽を回転させることにより、衣類が水と洗剤の中で均一に混合され、汚れが除去される仕組みです。一般的にはドラムに付属するモーターによって洗濯槽を回転させます。

洗濯サイクルが完了すると、汚れた水を排水します。高低差によって洗濯槽内の水を排水パイプに送り出す場合が多いです。排水パイプは一般的に下水道へ繋がっています。

4.  すすぎ・乾燥

次に、洗濯槽に新しい水が注入され、衣類がすすがれます。これにより、残留洗剤や汚れが洗い流されます。洗濯サイクルの最後に、洗濯機は高速スピンさせることにより、衣類から余分な水が除去します。

洗濯機の種類によっては、乾燥工程を有する場合があります。家庭用洗濯機の乾燥工程は電熱ヒーターを使用することが多いですが、業務用洗濯機の場合は蒸気を使用することも多いです。これにより、衣類を素早く乾燥させることが可能です。

業務用洗濯機の選び方

業務用洗濯機を選ぶ際は、以下の要素を考慮することが重要です。

1. 容量

洗濯需要の規模に応じて、適切な容量の洗濯機を選択する必要があります。大規模な施設では、大容量の洗濯機が必要になる場合があります。一般的にはkgなどの重量単位で表示した製品が多いです。

2. 洗浄効率

洗浄効率の高い洗濯機を選ぶことで、洗濯サイクルや水・電力消費量を削減することが可能です。これにより、運用コストを削減しつつ環境への負荷を軽減することができます。効率的な洗浄サイクルを備えた洗濯機を選びます。

3. オプション

様々な種類の衣類や布地に対応できる洗浄プログラムを備えた洗濯機を選ぶことが重要です。柔軟な設定オプションや洗浄プログラムがあると便利です。また、乾燥機能なども考慮する必要があります。

コインランドリー用には、集中精算システム連携可能か、クレジットカード、プリペイドカードや電子マネー決済への対応が可能か。また、売上管理がクラウド化され、遠隔管理システムに対応可能であるかは、店舗の売上に繋がります。

また、業務用洗濯機は高性能な機器であり、安全性も重要な要素です。安全機能や保護装置が備わっているかどうかを確認します。

本記事は業務用洗濯機を製造・販売する株式会社TOSEI様に監修を頂きました。

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真空成形

監修:名古屋樹脂工業株式会社

真空成形とは

真空成形とは、型と材料の間を真空にすることでプラスチックをする技術です。

加熱されたプラスチックシートを型と密着させ、材料と型の間を真空にすることで成形する仕組みです。半導体設備部品や自動車などのプラスチック製品の製造に広く使用されています。

真空成形は少量多品種の製品を製造するのに適しています。シート材を使用するため、1個から製造することが可能です。また、加熱されたプラスチックシートが型の形状に柔軟に合致するため、高度なデザインを持つ製品が製造することが可能です。これにより、高品質な外観を有する製品を製造することができます。

また、真空成形は一般的に比較的低コストで行うことができます。型の製造コストが低く、生産効率が高いため、試作や少量多品種に有利です。

真空成形の使用用途

真空成形は様々な製品の製造に利用されます。以下は使用用途の一例です。

1. 自動車

自動車の内装部品は真空成形によって製造されることがあります。ダッシュボードやドアパネルまたはシートカバーなどがその一例です。また、バンパーなどの一部の外装部品でも活用されることがあります。

2. 工業用品

工業用の機器のカバーを、真空成形で製造されることがあります。衝撃から機器を保護する重要な役割を果たします。プラスチックの種類を正しく選定することで、頑丈かつ軽量なケースを製造することが可能です。

3.  半導体部品

半導体製造・搬送装置のカバーを、真空成形で製造されることがあります。プラスチックの種類を正しく選定することで、頑丈かつ軽量なケースを製造することが可能です。

真空成形の原理

真空成形は加熱されたプラスチックシートを型に配置し、その後真空とすることでプラスチックを成形する技術です。以下のような手順で実施されます。

1. 材料準備

最初に成形に使用するプラスチックシートを選択し、必要なサイズに切断します。通常は熱可塑性ポリマーを選定することが多いです。ポリ塩化ビニルやポリプロピレンなどがその一例です。

2. 加熱

次に、プラスチックシートを加熱することで柔軟にします。これにより、型の形状に合わせて柔軟に曲がる仕組みです。加熱されたプラスチックシートは、製品形状に合わせた型の上に均等に配置されます。

3. 真空化

プラスチックシートが型の上に配置されたら、プラスチックシートと型の間を真空にします。これにより、型の形状に沿ってプラスチックシートが吸い付けられ、成形される仕組みです。真空ポンプなどを使用することでプラスチックシートと型の間を真空にします。

4. 冷却

プラスチックシートが型の形状に成形されたら、自然冷却にてプラスチックを固めます。冷却時間を適切に設定することで、割れや反りなどの不具合を防止することが可能です。固まったプラスチック製品は型から取り外され、必要に応じてトリミングなどの仕上げ作業が行われます。

真空成形の選び方

真空成形を代行する加工業者を選定する際は、以下の要素を考量することが重要です。

1. 信頼性

真空成形サービスを提供する企業の経験と信頼性は非常に重要です。長年の実績や信頼性の高い顧客サービスを提供している企業を選ぶ必要があります。過去の実績や顧客のレビューを調査することで、企業の信頼性を確認することが可能です。

2. 技術・設備

真空成形技術と設備は、製品の品質や生産性に直接影響します。最新の技術を採用し、最新の設備を備えた企業を選ぶことで、高品質な製品を生産することが可能です。

3. 品質管理

品質管理制度が整備されている企業を選ぶことが重要です。ISO認証を取得している企業や、品質管理に積極的な企業を選ぶことにより、高品質な製品を提供することが期待できます。

4. 柔軟性

真空成形サービスを提供する企業が柔軟に生産対応を実施してくれるかも重要です。顧客のニーズに合わせた製品や生産プロセスを提供できる企業を選ぶことで、より良い製品を製造することができます

本記事は真空成形を行う名古屋樹脂工業株式会社様に監修を頂きました。

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圧空成形

監修:名古屋樹脂工業株式会社

圧空成形とは

圧空成形とは、圧縮空気を利用してプラスチックを成形する技術です。

成形機に樹脂のシート材料をセットし、ヒーターにて加熱軟化させ空気圧力を使って型に密着させて成形する仕組みです。
プラスチック製品を作るための製造プロセスの一種であり、プラスチック容器や機械カバーなどを製造するために広く使用されています。
圧空成形を活用すると、比較的低コストで製品を製造することが可能です。金型の製作コストが比較的低く、少量多品種に向いています。

圧空成形の使用用途

圧空成形は様々な用途で使用されます。以下はその主な例です。

1. 医療機器

医療機器の製造においても圧空成形が利用される場合があります。少量多品種に向いているという特徴から、医療機器のカバーなどに幅広く使用されています。

2. 工業用機械カバー

工業用機械カバーの製造においても圧空成形が利用される場合や、金属部品からの置き換えなどでも利用される場合があります。射出成型では難しい、少量多品種でのカバーなどに幅広く利用されています。

3. ロボットカバー

ロボットのカバーの製造においても圧空成形が利用される場合があります。真空成形では製造できない細かい形状も再現できることから、ロボットのカバーなどに幅広く利用されています。

4. 食品

圧空成形は薄物業界と厚物業界に分かれています。上記は厚物業界がメインですが、薄物の業界では食品に使われるプラスチックトレーなどを、圧空成形によって効率的に製造することが可能です。たまごのパックやお菓子の容器などを製造するために使用されることが多いです。

圧空成形の原理

圧空成形は比較的にシンプルな工程によってプラスチックを加工する技術です。以下は一般的な圧空成形のプロセスです。

1. 加熱

まず、使用するプラスチック板材料を選定し、加熱して軟化させます。この段階でプラスチックが柔らかくなり、形状が変えられる状態へと変化させる仕組みです。加熱後は金型がプラスチックにセットされ、密封することで空気が抜けるのを防止します。

2. 加圧

金型がプラスチックにセットされた後、圧縮空気を上部から吹き付けられます。圧縮空気によってプラスチックを金型に密着させることが可能です。圧力の強弱や空気導入のタイミングは、製品形状やプラスチック特性に合わせて調整されます。

3. 冷却

成形されたプラスチックは自然冷却にてを冷却します。冷却によってプラスチックの硬化を促進し、製品の形状を固定させる仕組みです。金型内に冷却水や冷却油を循環させる方法が一般的に使われ、迅速な冷却・硬化を促進します。

4. 取り出し

プラスチックを十分に冷却して硬化した後、金型を開放して成形された製品を取り出します。金型と圧空BOXを開放することで成形された製品を容易に取り出すことが可能です。製品が金型から取り出された後は、余分な部分を取り除くなどの仕上げ作業が行われることもあります。

圧空成形の選び方

圧空成形をサービスとして受注する会社も多く存在します。これらの会社を選ぶ際は、以下の選定要素を考慮することが重要です。

1. 経験・信頼性

圧空成形サービスを提供する企業の経験と信頼性は非常に重要です。長年の実績や信頼性の高い顧客サービスを提供している企業を選ぶことが重要です。過去の実績や顧客のレビューを調査することで、企業の信頼性を確認できます。

2. 技術・設備

圧空成形の技術と設備は、製品の品質や生産性に直接影響します。

3. 品質管理

品質管理制度が整備されている企業を選ぶことが重要です。ISO9001などの認証を取得している企業は高品質な製品を提供することが期待できます。

4. ロケーション

圧空成形サービスを提供する企業のロケーションは製品の配送料や納期に影響します。地理的にアクセスしやすく、効率的な物流手段を持つ企業を選ぶことが重要です。

本記事は圧空成形を行う名古屋樹脂工業株式会社様に監修を頂きました。

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Plastic Recycling Machine

What Is Plastic Recycling Machine?

Plastic recycling machine refers to equipment used to manufacture recycled pellets from plastic waste.

When recycling plastic waste, the following processes are involved:

  1. Cleaning of Contaminated Materials
  2. Dehydration
  3. Size Reduction with Shredders or Grinders
  4. Drying and Volume Reduction
  5. Manufacture of Recycled Pellets Using Extruders

Each of these processes is necessary to convert waste into pellets of appropriate size and shape, facilitating easy reuse or recycling. This promotes waste reduction and resource reuse.

Plastic recycling machines can refer to machines specific to these processes or those involved in multiple or all recycling stages.

Applications of Plastic Recycling Machines

Plastic recycling machine is used to manufacture recycled pellets from plastic waste for material recycling purposes. These pellets undergo mixing, melting, and molding processes to create various recycled products.

Materials commonly used for recycling include PET (Polyethylene Terephthalate), HDPE (High-Density Polyethylene), LDPE (Low-Density Polyethylene), and PP (Polypropylene).

Recycled plastics are used in various products such as:

  • Bottles, containers, and packaging
  • Furniture and household items
  • Clothing, carpets, and textiles
  • Footwear like sneakers
  • Bags, films, and sheets
  • Automotive parts
  • Toys, stationery, and building materials

Principles of Plastic Recycling Machines

Plastic recycling machines can refer to machines specific to certain recycling stages or those involved in multiple stages. The main processes include:

  1. Supplying Raw Material Waste via Feeders
  2. Cleaning Contaminated Materials
  3. Dehydration and Drying
  4. Volume Reduction
  5. Size Reduction with Shredders or Grinders
  6. Pelletization: Manufacturing Recycled Pellets Using Extruders

Plastic waste materials like films, foams, non-woven fabrics, bags, and flakes are used as raw materials.

Types of Plastic Recycling Machines

Various machines are used in different recycling stages:

  • Cleaning, Dehydration, and Drying Machines: Bottle washers, flake washers, screw press dehydrators, and dryers.
  • Size Reduction Machines: Shredders, crushers, granulators, and grinders.
  • Pelletization Machines: Extruders and pelletizers.

Integrated machines for multiple processes or complete recycling lines are also available, contributing significantly to efficiency in plastic recycling processes.

計算科学ソフトウェア

計算科学ソフトウェアとは

計算科学ソフトウェアとは、工学などの領域で数値計算やシミュレーションを行うためのソフトウェアです。

これらのソフトウェアは複雑な数学的な問題を解決するために使用されます。物理学や気象学または経済学などの分野において、様々な問題を解決するためのソフトウェアです。高度な数学的アルゴリズムや計算技術を用いて、現実世界の問題を解析するために役立ちます。

計算科学ソフトウェアの使用用途

計算科学ソフトウェアは、研究分野などにおいて複雑な計算を実行するために使用されます。以下はその主な例です。

1. 化学

計算科学ソフトウェアの中でも分子モデリングソフトウェアは、分子の構造や性質をモデル化するためのツールであり、化学反応の機構の解明や新しい化合物の設計に必要不可欠です。また、新しい反応経路の発見や反応条件の最適化にも活用されます。触媒や材料選定を行う際にも使用されることが多いです。

2. 地学

地学においては、地形の高度データを処理し、地図や地形プロファイルを作成する際に使用されます。また、数値地形モデルやプレートモデルを用いて、地震や火山活動などの地殻変動のシミュレーションを行うことも可能です。地層の厚みや地下水の流れなどを数値モデルを作成し、地下構造の解析や地下資源の探査に役立てる場合もあります。

災害防止の観点からも計算科学ソフトウェアを使用する場合があります。地震の発生や火山の噴火、地滑りなどの現象をシミュレーションして、災害予測や防災対策の立案に活用することが可能です。

3. 物理学

量子科学などにおいては、素粒子同士の衝突実験の結果を予測し、新粒子の発見や素粒子の性質の解明に使用する場合があります。また、機械工学においても広く活用されます。流体の流れや熱伝導などの物理現象を数値モデルを用いて解析し、エンジニアリングや材料科学の分野に応用することが可能です。

4. 経済学

経済学においては、ソフトウェアを使用して市場の挙動をモデリングすることもできます。回帰分析やARIMAモデルなどの統計手法を用いて、経済指標の動向や将来の予測を行います。これにより、経済界の混乱を防止し、市場を安定させることが可能です。

5. 気象学

気象学では、計算科学ソフトウェアが天気予報や気候研究に不可欠です。気象データの解析と予測では、気象観測データを解析し、将来の天候や気候変動を予測します。気候変動の解析では、気候モデルを用いて地球の気候変動のメカニズムを解析し、将来の気候変動の影響を予測することが可能です。

計算科学ソフトウェアの原理

計算科学ソフトウェアは、数学的な問題を解くための数値計算アルゴリズムを実装したソフトウェアです。微分方程式の数値解法や行列計算または最適化アルゴリズムなどを実行することが可能です。これにより、複雑な計算が必要な様々な問題を解決することができます。

大規模なデータセットや高次元のデータを処理する際に、効率的なデータ構造とアルゴリズムが必要です。計算科学ソフトウェアはデータの効率的な管理と処理を実現するために、適切なデータ構造や最適化されたアルゴリズムを使用します。例えば、高速な行列演算を実現するために、データ構造や演算のアルゴリズムが最適化されています。

また、大規模な計算やシミュレーションを行う際には、並列処理や分散処理が必要です。計算科学ソフトウェアは複数のプロセスを使用して処理を並列化し、複数のコンピュータ間で処理を分散することが可能です。これにより、計算のスケーラビリティが向上し、より大規模な問題を解決することが可能です。

一般的にはこれらを簡単に実行するために、適切なインターフェイスが実装されています。実行した計算結果を、簡単に可視化できるソフトも多いです。グラフやアニメーションなどを用いて、計算結果を視覚的に分かりやすく表現します。

計算科学ソフトウェアの種類

計算科学ソフトウェアには様々な種類があります。以下はその一例です。

1. 数値解析ソフトウェア

数値計算ソフトウェアは数学的な問題を解くための数値計算アルゴリズムを実装したソフトウェアです。微分方程式の数値解法や行列計算または積分・微分などを実行することができます。これにより、様々な数学的問題を実行することが可能です。

2. シミュレーションソフトウェア

シミュレーションソフトウェアは物理現象をモデル化し、シミュレーションを実行するためのツールです。物理学や工学などの様々な分野で使用されます。

3. データ解析ソフトウェア

データ解析ソフトウェアは大規模なデータセットからパターンやトレンドを抽出し、データの解釈や予測を行うためのツールです。統計解析や機械学習またはデータマイニングなどの手法を使用してます。これにより、データの分析や可視化が可能です。

耐アルコールペン

監修:大道産業株式会社

耐アルコールペンとは

耐アルコールペンとは、耐水性・耐溶剤性を持ち、書いた文字がアルコールなどでも消えないペンです。

理化学実験などでは、ガラス器具やマイクロチューブなどの実験器具・研究備品に実験情報を書くことが多くあります。一方で、実験室などではアルコールなどの溶剤を用いることが多いため一般的な油性インクでは消えやすい環境です。そのため、研究開発シーンをターゲットとした耐アルコールペンが製品化されています。インクはにじみにくく、速乾性に優れた特性を持つことが特徴です。

耐アルコールペンの使用用途

1. 概要

耐アルコールペンは主に研究・開発・試験などにおいて、実験器具に実験情報などを筆記するために用いられる筆記用具です。

例えば、バイアルやマイクロチューブなどにサンプルを保管する際に内容物の番号や情報などを筆記したり、フラスコや試験管などに重量などの一時的なメモを筆記する用途などがあります。化学、生物学などに関係する研究分野で特に一般的に需要があります。

2. 筆記する対象物など

筆記される器具や備品には主に次のようなものがあります。

  • ラベル
  • ビーカー
  • 試験管
  • 遠沈管
  • フラスコ
  • バイアル
  • スライドガラス
  • カバーガラス
  • シャーレ
  • マイクロチューブ

また、耐アルコールペンは、紙・木材・段ボール・布・金属・磁器などの一般的な素材にも筆記することが可能です。耐水性に優れており水と混ざりにくい素材のインクであるため、凍結面や結露面にも筆記することができます。研究開発においては、冷凍庫から取り出したサンプルチューブや水で濡れた器具などに筆記する場合もあるため、このような特性は役に立ちます。

耐アルコールペンの原理

1. 耐水性・耐溶剤性

耐アルコールペンは、油性顔料インクなどが使用され、下記のような物質に対して消えにくい性質を持ちます。

  • アルコール (エタノール、イソプロパノールなど)
  • クロロホルム
  • キシレン
  • 耐酸性
  • 耐アルカリ性

実験室で用いられる様々な溶剤に対して耐性を発揮する筆記用具です。

2. 筆記特性

耐アルコールペンは、ガラス、各種樹脂 (ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリスチレン、ポリエチレンテレフタレート、ABSなど) 金属などに特に優れた筆記特性があります。

滑面およびフロスト面への筆記が可能です。各素材について充分な耐性、強度を得るための目安となる乾燥時間は概ね下記のとおりです。

  • ガラス滑面: 3〜5分
  • 樹脂滑面: 3分
  • ガラス・樹脂のフロスト面: 30秒
  • フィルム: 30秒

また、製品によっては紙・布・ビニール・木材・段ボール・磁気へも筆記を行うことができます。オートクレーブの使用は、材質や表面状態によって、筆記した文字が消えることがあります。

3. その他の特性

耐アルコールペンは、耐溶剤性以外にも次のような特性があります。

  • 耐熱性
  • 耐冷性
  • 耐摩擦性
  • 耐候性
  • 耐光性

ただし、これらの性質は製品にもよります。耐熱性では、インクが乾いたあとであれば一般的に220℃から400℃程度の熱に耐えることができます。耐冷性では-50℃よりも低い温度まで対応しており、ディープフリーザーなどでも使用可能です。凍結面や結露面に筆記することができるため、フリーザーから出したばかりのサンプルなどにも筆記することができます。

耐アルコールペンは、十分に乾燥したあとは簡単には落ちなくなりますが、落としたい場合はウエスに中性洗剤を含ませこすり落とすことで落とすことができます。

耐アルコールペンの種類

耐アルコールペンは、様々なメーカーから複数の製品が販売されています。

色の種類には、黒・赤・青などが有ります。細さは0.3mm、0.6mm、0.8mm、1.0mmなどです。両頭タイプのものもあり、細いものから太いものまで用意されています。細いものは特にマイクロチューブの蓋など狭いところに筆記することに最適です。細い製品では、ペン先に硬い素材が用いられ、筆記しやすさを実現しています。用途に合わせて適切なものを選択することが必要です。

本記事は耐アルコールペンを製造・販売する大道産業株式会社様に監修を頂きました。

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撥水ペン

監修:大道産業株式会社

撥水ペンとは

撥水ペンとは、主に生化学実験である免疫組織化学染色法やその他の蛍光抗体反応において、スライドガラス上の試料周囲に撥水性のサークル (囲い) を作製することに用いられるペンです。

免疫組織化学染色法とは、抗体を用いて組織切片中のタンパク質やその他の抗原の位置を検出する生化学手法です。抗原を抗体で標識した後、蛍光色素を用いた蛍光検出法などにより、抗原抗体複合体を可視化します。撥水ペンは、スライドグラス上の試料周囲に疎水性サークルを作製することで、抗体や検体の流失を防ぐことが可能です。一般的な蛍光抗体法の一つであるペルオキシダーゼ-抗ペルオキシダーゼ複合体 (Peroxidase Anti-Peroxidase; PAP) の名前を取って、PAPペンと呼ばれる場合もあります。

撥水ペンの使用用途

撥水ペンは、主に顕微鏡用のスライドグラスを用いる、免疫組織化学染色法やin situハイブリダイゼーション法などの生化学実験で使用されます。

試料周囲に撥水性のサークルを筆記することで、検体の囲いを作製し、スライドグラス上から試料や抗体などが流れ出ることを防ぐことが可能です。「ペン」ではありますが、一般的な文字などの筆記には適しておらず、このような実験用途専門に使用されます。

撥水ペンの原理

1. 免疫組織化学染色法

免疫組織化学染色法とは、特異的な抗原-抗体反応を用いて細胞および組織内の抗原物質を特異的かつ再現性良く検出する手法です。蛍光抗体法や酵素抗体法などが含まれます。

  1. 標本調製
  2. 抗原賦活化
  3. 抗体染色
  4. 抗体検出

免疫組織化学染色法は、上記のステップから成ります。撥水ペンは、標本調製の段階で撥水サークルを作製することで、スライドグラス上からその後のステップで試料や試薬が流出するのを防ぐ役割があります。

抗体標識には直接標識法と間接標識法があり、直接標識法では、酵素または蛍光プローブで直接標識した一次抗体を用います。間接標識法は、一次抗体と二次抗体を使います。二次抗体は一次抗体に特異的に結合する抗体で、酵素または蛍光プローブで標識されています。検出は、「発色または酵素による検出 (酵素抗体法) 」と「蛍光に基づく検出方法 (蛍光抗体法)」などで行われます。

2. 撥水ペンの機能

撥水ペンは、ペン形状のため、試料の大きさや形状、個数に合わせてスライドガラス上に撥水ラインを引くことが可能です。

撥水ペンのインクは撥水性を持ち、アルコールやアセトンに不溶です。一方、キシレンに容易に溶解するため、キシレンやその代替品で完全に除去することができます。大抵の撥水ペンにおいては、120℃までの耐熱性があります。

3. 撥水ペンの使い方

  1. 初回使用時は、ペンのキャップを外し、ペン先を上にして固い面に置きます。手袋をはめた指などで先端を押し込み、ペンからガスを放出します。
  2. 使用前によく振ります。
  3. ペン先を顕微鏡のスライドに置き、チップ先端にインクが染み込むまでスライドに対して先端を数回押し下げます。
  4. 顕微鏡スライドの各試料の周囲に線を引きます。
  5. ペンキャップを元に戻し、チップを下にして室温で保管します。

インクが出過ぎるとスライドに過剰な試薬が溜まる可能性があるため、インクが出すぎてしまった場合は、不要な紙などに押し当て、余分なインクを拭き取ることが必要です。

撥水ペンの種類

撥水ペンは、それほど製造メーカーは多くないものの、複数のメーカーで製造されています。撥水ペンの線の太さには、2mm、3mm、4mmなどの種類が有ります。

インク容量は、2mmの細線タイプで2.5mLまたは3mL、4mmの太線タイプで5mLです。細線タイプは約500回、太線タイプで約1000回使用することが可能です。インクの色は、通常、薄い緑または水色です。

一般的には撥水ペンはガラス上に界面活性剤が残っていると機能しませんが、中には界面活性剤 (Tween 20、Triton X-100など) を含んだバッファーに対しても安定な種類の撥水ペンも有ります。

本記事は撥水ペンを製造・販売する大道産業株式会社様に監修を頂きました。

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