流体継手とは
流体継手とは、油などの液体を利用して動力を伝達する装置です。
主に2つの羽根車とそれらを覆うケーシング、そして内部に満たされた作動油で構成されます。入力軸に取り付けられた羽根車をポンプインペラ、出力軸に取り付けられた羽根車をランナと呼びます。この2つの羽根車はお互いに向き合うように配置されていますが、機械的に直接つながってはいません。入力軸が回転するとポンプインペラも回転し、遠心力によって作動油が外側へ勢いよく押し出されます。この作動油の流れが向かい側にあるランナの羽根に当たり、ランナを回転させることで出力軸へ動力が伝達される仕組みです。
このように液体を介して動力を伝えるため、機械的な継手と比べて衝撃や振動を吸収する能力に優れています。また、出力側に大きな負荷がかかった場合でも、内部の液体が滑ることで入力側のエンジンが停止するのを防ぐ、安全装置としての役割も果たします。
流体継手の使用用途
流体継手は以下のような用途で使用されます。
1. 産業機械
クレーンや破砕機、大型のポンプやファンといった産業機械で広く活用されます。これらの機械は起動する際に大きなトルクを必要とし、動力源であるモーターに大きな負担がかかります。流体継手を用いることで、モーターが一定の回転速度に達してから、ゆっくりと機械本体へ動力を伝えることが可能です。
2. 船舶・鉄道車両
船舶では、主機関であるエンジンとプロペラをつなぐ軸の間に使用されることがあります。エンジンの回転によって生じる振動が直接プロペラや船体に伝わるのを防ぎ、騒音を低減して乗り心地を向上させる仕組みです。鉄道車両においても、エンジンと車輪駆動装置の間に組み込み、発進時や変速時の衝撃が緩和し、乗り心地を向上させます。
3. 自動車
自動車では、主に初期のオートマチックトランスミッションに採用されていました。エンジンと変速機の間に設置し、エンジンの動力を滑らかにタイヤへ伝える役割を担います。液体を介して動力を断続するため、停車時にブレーキを踏んでいてもエンストすることなく、スムーズな発進が可能です。