ブースタコンプレッサとは
ブースタコンプレッサとは、低圧の圧縮空気や窒素ガスなどを吸い込んで、増圧するコンプレッサのことです。
工場などの圧縮空気ラインの圧力を低い圧力に設定し、ブースタコンプレッサを使用して、高圧が必要なところのみを部分的に増圧することにより、省エネが可能です。
ブースタコンプレッサは、大きく分けると、給油式とオイルフリー式とがあります。
ブースタコンプレッサの使用用途
1. 一般用途
ブースタコンプレッサは、部品を加工する機械工場、自動車や電気機器などの組み立て工場、製鉄所、鉄鋼加工工場、熱処理工場、化学工場などの圧縮空気ラインや窒素ガスを使用するラインなどで、使用されます。
圧縮空気を使用する機器には、低圧から高圧まで各種あります。最も圧力が高い機器に必要な圧力に、空気源の圧力を上げると、空気源の消費電力が大きくなります。この場合、ブースタコンプレッサを使用して、高圧を必要とする機器用に、部分的に増圧が可能です。
2. 特殊用途
プラスチック射出成形用にも使用されます。成形機の手前の圧縮空気管にブースタコンプレッサを設置し、部分的に増圧します。PETボトルなどの生産に使われます。
また、気密試験は、他の機器より高圧空気が必要であり、ブースタコンプレッサを使用して圧力を高くします。
レーザー加工機用ブースタコンプレッサは、レーザー加工機の窒素ガスなどのアシストガスを昇圧するために使われます。3MPa以上の高圧が必要です。
ブースタコンプレッサの原理
ブースタコンプレッサは、低圧の圧縮空気などを吸い込んで、高圧に増圧するものです。工場の圧縮空気ラインの圧力を、0.1~0.5MPaに設定し、高い圧力が必要な機器の手前で、ブースタコンプレッサにより、0.5~3MPaに増圧します。
ブースタコンプレッサには、レシプロタイプが多く使われます。多気筒とし、圧縮比により多段圧縮を行います。4段圧縮で30MPa程度まで増圧が可能です。
ブースタコンプレッサと同様な目的に使われるものに、空気駆動型増圧器があります。これは圧縮空気を使用してシリンダとピストンにより増圧する機器です。空気の使用量が多く、ブースタコンプレッサに比較すると、効率が良くないのが短所です。
ブースタコンプレッサの特徴
ブースタコンプレッサの特徴は主に下記の5つです。
1. 省エネ
ブースタコンプレッサを使用して、スポット的に高圧空気に増圧することにより、大きなエネルギー低減が可能です。圧縮空気ラインの設定圧力を0.1MP下げると、消費電力を約7%低減させることが可能です。
また、高圧空気が必要な所に新たにコンプレッサを設置する場合より、ブースタコンプレッサの方が、電力量を約17%節約できます。
さらに、空気駆動型増圧器と比較すると、ブースタコンプレッサは、消費電力が1/3ぐらいになり、約27%低減します。空気駆動型増圧器は、圧縮空気を駆動源に使いますが、増圧時半分以上エネルギーが無駄になります。
2. 配管末端の圧力低下防止
大きな圧縮空気ラインの末端では、圧力低下が懸念されます。ブースタコンプレッサで、補うことができます。
3. 低騒音・低振動
配管から直接吸入するので、通常の吸入音がなく低騒音です。パッケージタイプのブースタコンプレッサは、必要機器をすべて内蔵し、低騒音・小型で外観が良い特徴があります。
4. 高い体積効率
ブースタコンプレッサの吸入圧力が大気圧ではなく、圧縮空気ラインの圧力、即ち0.1~0.5MPaであるので、体積効率が高く、小さなブースタコンプレッサで大きな空気量が得られます。
5. ロングライフ
連続長時間運転が可能です。中間整備サイクルが10,000時間程度の製品があります。
ブースタコンプレッサの種類
ブースタコンプレッサは、給油式とオイルフリー式の2種類が使われています。
1. 給油式
レシプロタイプのコンプレッサの給油は、はねかけ式やオイルポンプ式で行います。はねかけ式は、クランクケースにオイルをため、クランクシャフトに設置した突起により、オイルをシリンダやクランクシャフト軸受各部、シリンダにかける方式です。
また、オイルポンプ式は、クランクケースのオイルを給油ポンプで吸い上げ、圧力をかけて摺動各部に送油します。オイルはタービン油が多く使われます。
オイルセパレータなどで、含油量を減らしますが、ある程度のオイルが圧縮空気に含まれます。
空気や窒素ガス用のほか、ヘリウムやアルゴン用のブースタコンプレッサもあります。
2. オイルフリー式
食品工場などオイルを嫌う所で使われるブースタコンプレッサです。摺動部にはオイルレスベアリングなどを使用します。オイルレスベアリングは、樹脂系、複層系、金属系の種類があります。コンポジット樹脂のピストンなども使われます。
オイルフリー式は多くのメリットがあります。給油装置・給油孔・油溝加工などが不要、ランニングコストの削減、メンテナンスフリー、潤滑油のリサイクル不要と環境保全などです。
ブースタコンプレッサのその他情報
コンプレッサとブースタの違い
コンプレッサは、吸入空気が大気圧 (約0.1MPa) であり、0.1MPa以上の所定の必要な圧力まで上げる機械です。
一方、ブースタは、上流のコンプレッサによる圧縮ガスを吸入し、所定の圧力まで増圧する機械です。