サーマルリレー

サーマルリレーとは

サーマルリレー

サーマルリレーとは、ある電気回路へ設定値を超えた電流が流れた際に、接点出力する部品です。主にモーターや配線への過負荷を防ぐために用います。

サーマルリレーを回路に組み込むことで、回路の焼損などのトラブルを抑止できます。

サーマルリレーの使用用途

サーマルリレーはほとんどの場合、モーター保護のために使用されます。モーターに定格以上のトルクがかかると、定格を超える電流が流れます。この現象を過電流と呼びます。

モーターが長時間過電流状態となると、内部巻線が発熱します。これにより、内部のニスが溶けたり、巻線が焼き切れたりします。これがモーターの焼損です。サーマルリレーは、定格以上の電流が流れると、接点出力により電源を遮断させてモーターを保護します。

サーマルリレーの原理

サーマルリレー内部の回路導体にはバイメタルが採用される場合がほとんどです。

バイメタルは、2種類の熱膨張係数が違う金属を組み合わせた材料です。電流により発熱すると、熱膨張係数の違いによって偏って変形します。

サーマルリレー内部のバイメタルはこの偏りによって接点を駆動させ、接点出力します。バイメタルの太さなどにより、異なる電流設定値のサーマルリレーが販売されています。

モーターは始動時に、定格の倍以上の電流が発生します。バイメタルは発熱変形するため、温まるまで遅延時間があります。この遅延時間により、モーターの始動大電流には反応しません。

サーマルリレーの出力接点はばねで固定され、一度動作するとリセットボタンを押すまで出力し続ける場合がほとんどです。これにより、過負荷機器の再始動を防ぎます。

サーマルリレーの選び方

サーマルリレーは、保護するモーターの定格電流に合わせて選定します。モーターの保護要素には、瞬時要素と限時要素があります。

瞬時要素はモーター自体の異常時に、上位回路を保護するためにモーター電源を瞬時に遮断する保護要素です。高圧モーターに対してはパワーヒューズやモーターリレーを用い、低圧モーターでは主にショックリレーブレーカを用います。

限時要素はモーターの過負荷を検知し、モーター保護のために電源を遮断する保護要素です。高圧モーターに対しては過電流保護継電器などを用い、低圧モーターにはサーマルリレーを用います。

上記より、低圧モーターに対しては、ブレーカー、駆動装置、サーマルリレーを合わせて選定します。ブレーカーは始動電流でのトリップを避けるため、モータ定格電流の2倍以上を選定します。駆動装置とサーマルリレーはモーター定格電流に合わせてメーカーカタログを参照しつつ選定します。

サーマルリレーの劣化要因

メーカーごとに異なりますが、サーマルリレーの交換推奨期間は約10年といわれています。ただし、サーマルリレーを定期交換するとコストが余分にかかるため、重要負荷のサーマルリレーについてのみ定期交換する場合がほとんどです。

サーマルリレーは劣化しづらいバイメタルや樹脂で構成されるため、自然劣化はほとんどしません。強制劣化要因としては、以下に示す4つが挙げられます。

1. 電気的要因

駆動電圧や周波数、突入電流の大きさやその頻度に依存して絶縁劣化が生じます。これによりサーマルリレーが故障します。

2. 機械的要因

ネジの緩みや、衝撃・振動などの物理的要因が加わることにより金属疲労などの劣化が生じます。

3. 熱的要因

過電圧・過電流・自己発熱などによる熱の影響でサーマルリレーに反りや変形、溶融断線が生じることで故障します。

4. 環境要因

高温高湿、腐食性ガスやオイルミストなどによって金属腐食が生じます。また、粉塵や異物がサーマルリレーに噛み込み、接触不良が生じることもあります。劣化の要因を把握し、これらを回避することで製品寿命をユーザーの手により長くすることも可能です。

サーマルリレーのその他情報

1. サーマルリレーの配線

サーマルリレーは電磁開閉器の一部として使用されることが多くあります。その場合主回路一次側は市販品では給電用の銅バーで接続される場合がほとんどです。二次側の配線についてはサーマルリレー定格電流以上の許容電流を持つように設計します。

配線の許容電流は配線種類によって違いがありますが、種類ごとに内線規程によって定められています。国内で販売されている配線は内線規程を遵守しています。

2. サーマルリレーの設定

サーマルリレーはバイメタル式と電子式の2種類に分類されます。

  • バイメタル式

    バイメタル式は、バイメタルの熱膨張によりリレーを動作させる仕組みとなります。バイメタル方式の場合、設定用つまみを回転させることで±20%程の電流値設定が可能です。

    それ以上の設定変更は構造上できないため、リレーを取り換える必要があります。保護する装置がモーターである場合は、メーカーごとにモーター容量に見合ったサーマルリレーが販売しているためカタログを確認して選定します。

  • 電子式

    電子式は保護する駆動装置がインバータ等であった場合に使用されます。回路に流れる電流値を電子回路で読み取り、負荷特性曲線を外れた際に動作します。市販されているインバータでは、インバータ保護機能として本機能が常備されている場合がほとんどです。

    モーターコントロールセンターなどでも電子式のサーマルリレーが用いられます。電子式サーマルリレーの設定方法はメーカーにより異なりますが、下限電流値はバイメタル式よりも幅広く設定可能です。取扱説明書を確認して設定します。通常は定格電流値を設定することで自動的に設定されます。

3. サーマルリレーの接点

サーマルリレーの接点は、モニター用の通常時開接点(a接点)と回路遮断用の通常時閉接点(b接点)があります。

  • バイメタル式の接点

    バイメタル式の場合は購入段階でどちらをいくつ使うか選ぶ必要があります。接点に流れる定格電流値はリレーにより決まっており、通常は2A程度です。主回路に使用すると溶着する危険性が高いため、制御回路用として使用します。

  • 電子式の接点

    電子式のサーマルリレーは多くの場合、設定によりどちらの接点をいくつ使うかを選べます。ただし、電子式の場合はリレー接点ではなく、トランジスタ接点の可能性があります。トランジスタ接点では交流制御電源を使用すると電子部品が故障します。

4. サーマルリレーの復帰

過負荷状態が続きサーマルリレーが動作したとき、その原因を取り除いた後にサーマルリレーの出力接点を解除する必要があります。この手順を「復帰」や「リセット」と呼びます。

復帰手順にも2種類あり、手動復帰型と自動復帰型に分類されます。手動復帰型は単純で、過負荷原因を取り除いた後にリセットボタンを押すだけです。リセットボタンを押すことで出力接点が解除されます。

自動復帰はリセットボタンを押す必要はなく、サーマルリレー自身が自動でリセットをかけます。サーマルリレーに人が近付きづらいような特殊な用途で使用されます。

参考文献
https://jeea.or.jp/course/contents/08203/
三相誘導電動機の保護システム https://jeea.or.jp/course/contents/08203/
http://www.mekatoro.net/digianaecatalog/fujid-sougou/book/fujid-sougou-P0141.pdf
https://dl.mitsubishielectric.co.jp/dl/fa/document/techsheet/lvsw/bqn-s8-9497-03/BQN-S8-9497-03.pdf

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