ACファンモーターとは
ACファンモーターとは、交流電源で動くファンに使われているモーターのことです。
電気には直流電源と交流電源の2種類があります。直流電源は電流の向きが常に一方向の電源で、交流電源は電流の向きが周期的に入れ替わる電源です。
英訳すると、直流がDirect Currentで交流がAlternate Currentです。それぞれ頭文字を取ってDC電源、AC電源と呼びます。ACファンモーターはAC電源を使用し、駆動負荷がファンのモーターを指します。
ACファンモーターの使用用途
ACファンモーターは民生品から産業機器まで幅広く使用されています。最も身近な例が扇風機です。扇風機の一部はACファンモーターを搭載しています。家庭用コンセントはほとんどAC電源であり、扇風機には構造が簡単なACファンモーターが使用されます。
産業用途としては、局所排気用のファンなどがあります。地下や汚水タンクなど、酸欠が懸念される場所内での作業の際に使用されます。
ACファンモーターの原理
ACファンモーターは、ACモーターのシャフト軸にファン(羽根)を取り付けたものがACファンモーターです。ACモーターの動作は固定子と回転子によって構成されています。固定子に電流を流した際に発生する磁界の変化で回転子に渦電流が発生します。
その結果、いわゆる「フレミング右手(発電機)の法則」で誘導電流が起こります。その誘導電流と磁界による「フレミング左手(モーター)の法則」で動力が発生します。
ACファンモーターには交流電源が単相と3相の2種類があります。ACモーターは単相のみでは通常は動きません。したがって、単相ACファンモーターは位相を進角させるためのコンデンサを内蔵したものや、隈取りと呼ばれる構造のモーターが主流です。
3相電源は電源内に3種類の位相が存在するため、電源をそのまま印加すれば動く誘導モーターが主流です。ACモーターの利点は、構造が簡素かつ部品点数が少なく堅牢で長寿命な点です。欠点は、DCモーターに比べて運転速度の調整が難しい点です。
ACモーターは商用電源で動作し、堅牢で保守が簡単なため、用途に応じて今後も広く使用されると考えられます。
ACファンモーターのその他情報
1. ACファンモーターとDCファンモーターの違い
ACファンモーターとDCファンモーターの違いはファンの駆動電源の違いです。ACファンモーターは交流電源で動作し、DCファンモーターは直流電源で動作します。
ACファンモーターは交流電源の周波数によって、ファン(羽根)の回転速度が一定となりますが、DCファンモーターは回路によって回転速度を安価に可変できます。ACファンの中には、AC電源でDCモーターを動作させるAC/DCファンもあります。
2. AC軸流ファンとは
AC軸流ファンとは、ACモーターで駆動する軸流ファンです。軸流ファンとはファンを使って風を送る方向が軸方向にあるファンを指します。風を起こす羽根の回転方向と垂直方向(軸方向)に風が発生します。
用途としては、発熱する機械の冷却に使用される場合が多いです。抵抗物による風量の増減が比較的少ないことが、軸流ファンの特徴です。軸流ファンのほか、風を送る方向が異なる遠心ファン、斜流ファンなどがあります。
遠心ファンとは軸流ファンと直交するように風を起こすファンで、遠心方向に風が起こります。斜流ファンは、軸流ファンと遠心ファンの間のようなファンです。軸方向から吸気し、軸の斜め方向に排気送風します。小型・軽量になることが特徴です。
3. ACファンの構造
代表的なファンの構造としては、羽根車、ケーシング、主軸、軸受からできています。
- 羽根車
風をつくる部分でファンにおいて心臓部となる部品です。送風の効率に関わり、用途や環境などに応じて様々なものがあります。 - ケーシング
ファン自体の外枠と内側の風の流れ道をつくるもので、ファンの吸入部や吐出部をつくる部分です。 - 主軸
ファンの中心の軸になる部分で、羽根車を支える強度をもちます。 - 軸受
主軸の回転運動を受ける部分で、その作用をスムーズにしつつ主軸を支える部分です。軸受があることにより、摩擦や摩耗を軽減することができます。この部分の品質が悪いと機械的な摩耗などにより故障につながるため重要な部分です。
参考文献
https://www.orientalmotor.co.jp/tech/webseminar/ac_kiso_1_1/
https://www.eminebea.com/jp/product/airmover/fanmotor/ac/
https://techcompass.sanyodenki.com/jp/training/cooling/fan_basic/002/index.html
https://fan-blower-soufuuki.com/handbook1_1/handbook1_9