アルミ電解コンデンサ

アルミ電解コンデンサとは

アルミ電解コンデンサ

アルミ電解コンデンサとは、誘電体に酸化アルミニウムが使用された、小型で静電容量の大きいコンデンサです。

陰極に電解液を使う湿式タイプが主流ですが、性能を向上させた導電性高分子等の固体を使用した乾式タイプもあります。価格が安く汎用性が高いため、家電やパソコンなど電子基板をもつ製品の多くに使用されています。

アルミ電解コンデンサの使用用途

アルミ電解コンデンサは他のコンデンサよりも小型で容量が大きく、価格も安価であるため、自動車分野、家電分野、産業機器分野など広い分野において、電子基板をもつ様々な製品に使用されています。具体的な使用用途は、以下の通りです。

  • 自動車分野
    エンジン制御装置、先進運転支援システム、エアバック制御、カーステレオ、カーナビゲーションシステム
  • 家電分野
    テレビ、レコーダー、デジカメ、オーディオ、冷蔵庫、洗濯機、エアコン、電子レンジ、照明器具、パソコン、テレビゲーム機
  • 産業機器分野
    各種製造装置、再生エネルギーのパワーコンディショナ

再生エネルギーのパワーコンディショナとして使用する場合、多いものだと10~100個のアルミ電解コンデンサを使っています。汎用性が高い分、アルミ電解コンデンサに要求される性能は年々高くなっている状況です。

アルミ電解コンデンサの原理

アルミ電解コンデンサの陽極、陰極には薄いアルミニウム箔、誘電体に酸化アルミニウムが使用されています。酸化アルミニウムは、アルミニウム箔に電気化学的な酸化処理 (化成) を施すことでアルミニウム箔の表面に形成されます。

アルミニウム箔表面は、エッチング処理で凹凸をつけることにより表面積の大きくしています。コンデンサの静電容量は以下の式で表され、誘電体の表面積に比例、厚さに反比例することから、エッチング、化成処理を通じて作成される酸化アルミニウムは非常に高い静電容量をもった誘電体です。

静電容量C=ε×S/d 
ε:誘電体の誘電率 S:誘電体の表面積 d:誘電体の厚さ

酸化アルミニウムの被膜は、電圧がかけられると微小な電流が流れるので、漏れ電流が他のコンデンサよりも多く発生することが欠点として挙げられます。湿式のアルミ電解コンデンサの内部の陰極には、電解液が使用されているため、故障時に電解液が漏れてしまう可能性があります。

また、電解液の漏れや蒸発により電解液が減る場合があり、耐久性が低いことも欠点の一つです。一方で、乾式のアルミ電解コンデンサは、内部の陰極に導電性高分子が使用されているため蒸発せず、湿式よりも耐久性が向上しています。

アルミ電解コンデンサのその他情報

1. アルミ電解コンデンサの寿命

電子部品の中でも湿式のアルミ電解コンデンサは、特に寿命が短いことが知られています。LSIには数万時間の動作時間が求められるのに対し、一般的なアルミ電解コンデンサで85℃中で2,000時間、高信頼性を謳うものでも105℃中で5,000時間が寿命といわれています。

寿命が短い理由として、絶縁紙に含浸された電解液が時間の経過とともに封止ゴム部から徐々に漏洩していくというアルミ電解コンデンサの構造が挙げられます。電解液が抜けると静電容量が減少し、ESR (等価直列抵抗) は増加します。

アルミ電解コンデンサの寿命は、最大使用温度以下であればアレニウスの法則 (熱エネルギーによる化学反応式) に従うといわれており、温度が10℃低くなると寿命は約2倍になります。従って、85℃/2,000時間のアルミ電解コンデンサは、75℃中で使えば4,000時間、65℃中であれば8,000時間程度が寿命です。

また、アルミ電解コンデンサは他のコンデンサと比べるとESRが大きく、動作時に大きな電流が流れるとコンデンサ内部が発熱します。この発熱はコンデンサの温度上昇をもたらすため、電解液の漏洩を更に促し、寿命を短くする要因となります。

2. アルミ電解コンデンサの極性表示

有極性コンデンサには、容易に極性を確認出来るようにするため、何らかの表示が必ず付けられています。

  • 縦型電解コンデンサ
    一般的に、本体の下方の負極側にラインがあります。また、負極のリード線が短くなっています。
  • 表面実装型電解コンデンサ
    電解コンデンサの上面に静電容量や耐電圧が表示されていますが、その一角に着色されたマークがあります。このマークの下側の電極が負極です。
  • アキシャルリード型コンデンサ
    矢印が付いたラインが負極のリードを示しています。また、電解コンデンサ本体に凹みが設けられていますが、この凹みがある側が正極です。

極性を誤って取り付けると、コンデンサが故障するだけでなく、発火などの危険性もあるため極性表示の確認は極めて重要です。

参考文献
https://www.chemi-con.co.jp/faq/detail.php?id=29AJZG2
https://www.chemi-con.co.jp/catalog/pdf/al-j/al-sepa-j/001-guide/al-technote-j-2020.pdf
https://jp.rs-online.com/web/generalDisplay.html?id=ideas-and-advice/aluminum-electrolytic-capacitors-guide
https://www.jp.tdk.com/tech-mag/electronics_primer/10

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