グローブボックス

グローブボックスとは

グローブボックスグローブボックスとは、細胞培養作業や人体に有害なガスを取り扱った作業など、外気や人間との接触が好ましくない作業を行う際に主に用いられる、グローブと密閉容器が一体化することで密閉環境内で作業が可能な装置のことを言います。

グローブボックスの使用用途

主に細胞培養などの生物分野の実験室や、外気と接触することで何かしらの反応を引き起こしてしまう材料研究など、多くの実験室で使われています。

特に、材料開発の分野では、外気は酸化の原因となる酸素はもちろん、腐食の原因になる水分も含んでいる外気中での実験では予期しない反応がおきてしまうことが多く、実験環境としては不十分です。

その際に、実験用の試料は水分と酸素から隔離した空間に置きつつ実験作業を手作業で行うために考案されたのが、グローブボックスというわけです。

グローブボックスの種類

グローブボックスは、その内部の清浄度管理の仕組みの違いから、大きく2種類に分けることができます。

1. 真空型グローブボックス

1つは内部空間を一度真空引きし、その後窒素やアルゴンなどの不活性ガスを注入するグローブボックスです。

2. 置換型グローブボックス

もう1つは置換型と呼ばれ、内部を真空引きすることなく、不活性ガスによって置換するグローブボックスです。

一度真空に引く真空型の方が、グローブボックス内の水分や酸素などの不純物質を一掃できるため、清浄度の高い空間を作り出すことができます。

また、グローブボックス内に置くサンプルが非常に反応性の高い場合は、容器本体やグローブとも反応を起こすことが考えられます。そのため、反応性が高いサンプルに対応するため、本体やグローブの素材はプラスティックからステンレスまで幅広い素材を適切に選定することが必要です。

グローブボックスの選び方

一般に、真空型のグローブボックスの方が清浄度の高い空間を確保できますが、付帯設備として真空ポンプが必要であり高額になることが多く、環境がシビアでない簡易的な実験を行うには少し大がかりとなります。そのため、比較的周辺環境の依存が少ない実験用に使う場合や、初めての導入などの場合は、置換型のグローブボックスから取り扱ってみるのもいいでしょう。

ただし、どちらの場合も本体とグローブの素材には、実験を予定しているサンプルとの反応性がない素材を選ぶことが重要です。

その他のグローブボックスの情報

1. グローブボックスと不活性ガス

グローブボックスのみならず不活性ガスとして窒素が用いられる頻度は高いです。例えば不活性である特性を活かして食品パッケージのパージ用ガスとして利用されたり、半導体分野などのエレクトロニクス関連の工場でも頻繁に利用されています。

窒素は大気中に容積比で約78.1%存在し、手軽に入手できるのでコスト的にも有利という特徴をもっています。またその比重は0.97であり、空気=1よりも少し軽くなっています。

一方アルゴンも空気中には存在していますが、容積比で0.93%しか存在していません。とはいえ大気中に3番目に多く存在するガスであることには代わりありません。アルゴンは希ガス類であるため、窒素よりもさらに反応性が低いことが特徴です。その比重は1.38と窒素や空気と比較して重いため、グローブボックスの中に溜まっていき、上から空気を押し出していくのが特徴です。

より不活性な環境を要求される場合はアルゴンガスが必要となります。また、グローブボックス内の圧力を大気圧より高く維持することでグローブボックスのわずかな隙間から大気が侵入することを防ぎ、より清浄な環境を保ちます。

2. グローブボックス内の水分除去

グローブボックス内部を不活性ガスで置換した後、所望の反応を進めた場合、水分が発生することがあります。グローブボックス内の水分は水分吸着剤によって除去されています。吸着剤には活性炭やモレキュラーシーブと呼ばれる特殊材料を用いることがあります。

ここでモレキュラーシーブについて説明します。

モレキュラーシーブとは結晶性ゼオライトを指します。多孔性結晶であり、この細孔に分子が吸着することでグローブボックス内の不純物を取り除きます。当然ながら結晶構造を変化させることで、その吸着特性を制御可能ですので、特定の有機ガスのみを吸着させたい場合は、用途に合致したモレキュラーシーブを選定することが重要です。

近年では、その種類も豊富となってきています。先述の通りその結晶性を制御することで吸着対象を選択することが可能です。多くの場合、分子の有効直径が<0.3nm、<0.4nm、<0.5nmといった条件での吸着が可能となっています。

水分を除去したいだけなのであれば、<0.3nmのものを選定すれば大丈夫であり、露点温度-76℃以下(水分量:1ppm以下)の超低湿度雰囲気を作ることも可能です。水分を吸着したモレキュラーシーブは不活性ガスを流したり、真空加熱することで再生し、再度利用することができます。

3. グローブボックス内の酸素除去

嫌気性環境を必要としたり、酸素と反応性が強いものを取り扱う必要があるなど酸素を取り除くことも重要です。

酸素を取り除くためには触媒を使用する必要があり、ニッケルのような酸素吸着材とパラジウムや白金のような貴金属触媒の2種類があります。酸素吸着材を使用した場合、再生するためには数%の水素を含んだ不活性ガスを流す必要があるのに対し、貴金属触媒であれば再生時に再生ガスが必要ありません。貴金属系触媒の導入コストは高いですが、水素混合ガスを使用しないため安全性も高く、ランニングコストも低いことが特徴です。

4. グローブボックスを使用する上での注意点

グローブボックス内は密閉であるという特徴から、試薬等によりグローブボックス内に汚れがたまりやすいため、コンタミネーション等を防ぐためには内部を清掃する必要があります。

また、グローブボックスは水分や酸素をppmオーダー以下の雰囲気にすることが可能ですが、その一方でわずかに大気が入り込むだけで急激に環境が悪化してしまいます。グローブボックス内の環境をより厳密に保つためには、試薬等をグローブボックス内に入れる際はきちんと水分・酸素を取り除いた状態にすることや、グローブ等に穴が開かないよう定期的なメンテナンスが重要となります。

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