圧電素子

圧電素子とは

圧電素子

圧電素子とは、水晶や石英などの誘電体で起こる圧電効果と逆圧電効果を利用して、微小動作制御や検知などをする受動素子のことです。

動作にギアやモータなどを必要としないシンプルな構造なため、他の微小動作機構素子に比較して小型の素子になります

圧電素子の使用用途

圧電素子は、主に工業向けの微小動作の検知および制御する装置に使用されています。例えば、振動計にも使用されており、振動による微小な力変化を圧力として圧電素子にインプットし、圧力を与えられた圧電素子に生じる電圧をアウトプットとして電圧値を得ることで振動の大きさとして数値化する仕組みです。

また、精密な動きが要求される顕微鏡や干渉計のような装置のステージ動作に付随する駆動系としても使用されています。このような駆動系の圧電素子の部材は、ピエゾドライバピエゾアクチュエータと呼ばれており、圧電素子を複数積層させた積層アクチュエータなども汎用的な部材です。

これらにおいては、圧電素子に微小なパルス電流を加えることで、微小動作を実現しています。このように高応答性と精密な動作制御が必要な場面では、圧電素子が好適です。

圧電素子の原理

圧電素子で用いられる素材には、主に圧電体セラミックスが使用されており、圧電体は結晶内部に電気的な歪みである極性を持っています。

図1に示すように、圧電素子は、圧電体をプラス側の電極とマイナス側の電極で挟み込んだ構造です。

圧電素子の模式図

図1. 圧電素子の模式図

 電極間に電圧をかけることにより圧電体に圧力がかかり、電圧の大きさに応じて青い矢印のように伸縮して変位し、この変位を駆動力などとして利用しています。なお、その逆で圧電素子を変形させるような圧力をかければ電圧を検知することも可能です。

圧電体内の結晶格子は、図2に示すように、平常時は、雰囲気中のイオンを取り込むことで電気的に安定した状態を保っています。ところが、電圧が加わると図3に示すように容易にそのバランスが崩れ結晶内の極性が変化し、結晶格子自体が矢印で示すような方向に伸縮し、これによる変位が圧電体の変位です。

圧電状態の変化による模式図

図2. 圧電体が通常状態の模式図(左) / 圧電体に圧電をかけた状態の模式図(右)

圧電素子ではこの極性を利用し、電気エネルギーを効率的に素子の変形エネルギーへと変化させるため、圧電体を電極で挟んだ構造となっています。この電極間に印加された電圧に対して、圧電体へ圧力がかかり変形します。また、その逆で圧力をかければ電圧を検知することも可能です。

この際の圧電体の変形は、圧電体の持つ結晶格子の電子的な極性を利用した歪み変形のため、高々数ミクロンレベルの変形量となります。そのため、一般的には数ミクロン微小な駆動量しか表現することができないため、さらに大きな駆動量を確保しようとすると複数の圧電素子を合体積層させる必要があります。

圧電素子の選び方

圧電素子を設置して動作させる物質の構成が、質量負荷か弾性負荷かによって適切な動作をする圧電素子を見極める必要があります。

特に、バネなどの弾性部材を介して保持された実際に動く構成物の動作を行う場合は弾性負荷条件となり、圧電素子で負荷をかけていくに従ってバネの弾性により圧電素子による力を押し返す力が働き、力の伝わり方が変わるためです。

具体的には、図3に示すように、圧電素子が駆動部材を押圧したときに発生する力をそのまま、実際に動く構成物に伝達する場合を質量負荷といい、圧電素子に電圧がかかった時から青い矢印方向の一定の力が掛かり続けることになります。

質量負荷の模式図

図3. 質量負荷の模式図

一方、上述した弾性負荷とは、図4に示すように、青い矢印で示す圧電素子が駆動部材を押圧したときに発生する力をバネなどの弾性部材を介して、実際に動く構成物に伝達する場合です。

圧電素子に電圧がかかった時から赤い矢印で示すバネの抵抗を受けながら押圧することとなり、構成物に加わる力は徐々に大きくなって一定の力に達するがことになります。

弾性負荷の模式図

図4. 弾性負荷の模式図

そのため、バネなどの弾性部材を介して押圧する場合に、圧電素子が一定の電圧しかできない素子では動作の前半と後半で移動量が異なってしまいます。

また、圧電素子には動かせるストロークが決まっているため、目的の動作が叶うストロークを備えたものを選定することが重要です。

圧電素子のその他情報

1. 圧電素子材料

圧電効果をもつ材料にはセラミック系とフィルム系があります。

圧電セラミックス

  • チタン酸ジルコン酸鉛 (PZT) 
    もっとも普及している圧電セラミックスで、広い用途に使用されており、ブザー、振動センサ、アクチュエータなどが代表的な製品です。
  • リチウムタンタレート (LT) 
    単結晶で安定性がよいため、電子デバイスに使用されます。もっとも多い用途はSAWフィルタと呼ばれる、特定の電波だけを通過させる電子デバイスです。携帯電話などで広く使用されています。

圧電フィルム

  • ポリフッ化ビニリデン (PVDF)
    圧電特性をもつ樹脂フィルムです。変位量はセラミックスに及ばないものの、安価に生産でき、様々な形状に加工できることから、自走式掃除機の近接センサやタッチセンサなど、家電で広く使用されています。

2. 圧電素子が使用されている製品例

ライター用圧電素子
圧電素子は衝撃を印加すると高電圧の電荷を発生することを利用して、電子ライターやガスコンロの発火部に使用されています。フリント (発火石) は使用するごとにすり減ってしまいますが、電子ライターで使用される圧電素子は破損しない限り半永久的に使用できるため、充てん式ガスライターなどに好適です。

圧電素子使用のスピーカー
圧電素子は、電気信号を印加すると伸び縮みする性質を利用して、発音部品としても使用されます。金属板に圧電セラミックスの薄板を貼り合わせ、広がり振動を利用した振動振幅を得て、大きな音を発することができます。

主に家電のお知らせ音、パソコンのビープ音、時計の電子音、車室内の後退音やオーディオのクリック音などに使用されています。

一部の高級オーディオでは、人の耳にほとんど聞こえないような20kHz付近の音を出すツイータとして圧電スピーカを搭載したものもあり、クラシック音楽などで音の広がりをもたせる効果を生み出すものもあります

圧電アクチュエータ
圧電素子は、電気信号で伸び縮みする性質を生かして、物体を押し引きするためのアクチュエータ (駆動部) としても好適です。インクジェットプリンターの駆動部に使用して高精度なインク吐出機能や、液体を押し出すためのディスペンス機能を実現しています。

圧電素子を使用したアクチュエータは、電磁コイルを使用したアクチュエータに比べて小型にできることがメリットですが、振動振幅ではコイル式に及ばないため、微小で高精度な駆動振幅が要求される用途に限定して使用されています。

参考文献
https://www.matsusada.co.jp/column/whats_piezo.html
https://www.pi-japan.jp/ja/technology/piezo-technology/fundamentals/
http://www.piezoposition.jp/piezo/choose.html
http://www.piezoposition.jp/piezo/choose.html

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