パワーオペアンプとは
パワーオペアンプ (Power Operational Amplifier) とは、汎用的なアナログ回路の一つであるオペアンプをベースにしており、特に増幅器の役割を担う電気部品です。
時代のニーズにより大電力が必要な増幅器で用いられる集積回路 (IC) を指します。元となるオペアンプは、1968年に米国フェアチャイルド社から発売された741シリーズが起源になったICです。
パワーオペアンプは単体で使われることが少なく抵抗やコンデンサを接続して使いますが、昨今はアナログ回路のみならず、デジタル回路を含めIC化した製品が市場で販売されています。
パワーオペアンプの使用用途
パワーオペアンプは、大きいモータードライバやサーボコントローラ、FA機器の電磁アクチュエータ、オーディオアンプで大型スピーカーを駆動するための高電圧や高電流の必要な増幅回路用として主に使用されています。
また、応用例として、測定器やセンサー回路などが挙げられます。パワーオペアンプICで良く使われ、テキサスインスツルメンツ社の汎用ICであるOPA541の場合を例にとると、電源電圧は±5Vから±40V、動作温度も-40℃〜+125℃と広範囲対応の上、大電流5Aで使えるため、この広範囲なダイナミックレンジが様々な使用用途を支えています。
また、低電圧ロジック回路とも接続可能です。なお、本ICを用いる時は放熱用のヒートシンクが必要となり、大電力を扱う場合には負荷インピーダンスにも注意が不可欠です。
パワーオペアンプの原理
パワーオペアンプの原理は、汎用アナログ回路であるオペアンプの出力側の後段に大電力を扱えるようにサイズ大きいトランジスタで構成されたブースト回路や大電力ならではの保護回路などを追加し、高電圧や高電流に対応したオペアンプとしている点にあります。
起源となるオペアンプは、アナログ回路部品の一つで抵抗やコンデンサ等の電気素子を用いることで加算回路、減算回路、微分回路、積分回路として自動的に演算を行なっていました。技術革新により、オペアンプはトランジスタやFET (Field Effect Transistor:電解効果トランジスタ) の半導体素子とともに小型集積化された後、幾つかの回路が組み込まれ集積回路 (IC) として現在を迎えています。
パワーオペアンプのその他情報
1. 負荷インピーダンスの影響
オペアンプの中でもパワーオペアンプと称される回路部品の場合は、大電力対応のために、負荷インピーダンスの扱いに注意が必要です。例えば、モーターなどを駆動する場合には、負荷は単純な抵抗成分ではなくリアクタンス成分を含むため、正弦波動作の場合には電流と電圧の位相が異なります。出力がゼロの場合にも、パワーオペアンプには比較的大きな電流が流れる場合があります。
このとき、パワーオペアンプ内の損失は大きくなるため、トランジスタの自己発熱に伴い、オペアンプICは非常に高温です。放熱用のヒートシンクなどの対策の他、使用動作範囲が製品のSOA (安全動作領域) を超えていないか、よく確認することが重要です。
2. 過渡現象の保護回路
電磁アクチュエータなど、負荷がどちらかといえば誘導性の場合には、動作時の過渡現象に伴う予期せぬ逆起電圧が発生する場合があります。このようなケースも、過電圧によるデバイス破壊や劣化を防ぐために動作条件の確認が必要となりますが、汎用性を高める観点から、パワーオペアンプ内に保護回路が内蔵されているものが多いです。
保護回路の多くは、電流リミッタや温度上昇を感知し動作抑制することで部品を保護するタイプですが、スパイク的な瞬時の過電圧から保護するためには、応答性が重要となります。そのため、通常ショットキーバリアダイオードなどを電源ラインやトランジスタの出力端子に接続し、過電圧発生時にクランプする対策が効果的です。
参考文献
https://www.ablic.com/jp/semicon/products/analog/opamp/intro/