電波暗室

電波暗室とは

電波暗室

電波暗室とは、電波無響室とも呼ばれ、外部に電磁波を漏らさず、内部でも電磁波が反射しない実験室や研究施設のことです。

シールドルーム室内に電波吸収体を取り付けることにより、電磁波の反射を抑制します。外部に漏らすことがないだけではなく、外部からの電磁波の影響も受けないのが特徴です。シールドルームの場合、内部空間における電磁波の乱反射を防げないことがデメリットですが、電波暗室であれば電磁波の乱反射を防ぎ、自由空間 (オープンサイト) に近い環境にすることができます。

近年、私たちの身の回りでは電気・電子機器や無線機器、情報システムなど多くの電磁波発生源であふれていますが、それらから発生する電磁波による周辺機器への悪影響が懸念されています。周囲の影響を遮断した電波暗室は、スマートフォンや無線LANなどの無線機器・電子機器の製品性能確認やノイズ試験に使用され、大きな役割を担っています。

電波暗室の使用用途

電波暗室の使用用途は、スマートフォンや無線LANなどの高周波通信用電子機器の電気的特性の試験や、車載部品のノイズ試験、アンテナそのものの放射特性試験などです。

一般には、電気・電子機器が外部からの電磁波にどのような影響を受けるかを知るために使用されます。また、外部へどのように影響を及ぼすかを測定する目的でも活用されています。

電波暗室の原理

電波暗室は、外部と内部それぞれの電磁波を遮断するため、電波暗室の外側では試験中の誤作動防止のために外部の電波が入らないように遮蔽し、電波暗室の内側には壁面内側に電波吸収体を取り付け、室内で電波が反射するのを防いでいます。

検査機器が室内で反射した電波をキャッチしないようにするために、壁面の電波吸収体が内部で発生した電波を吸収しています。この電波暗室のベースとなっているのは、シールドルームです。材料内での吸収のみならず、その表面での反射を利用するシールド材料を用い、電波を完全に反射することにより大きなシールド効果が得られます。

この室内に電磁波吸収体が取り付けられているのが電波暗室です。吸収体の材料では磁性、誘電性、抵抗性という3種類の特性が重要になります。実現したい吸収帯域などの条件と照らし合わせて、これらの特性を適切に判断する必要があります。

これらを満たす材料として主流となっているのがフェライトです。フェライトは、高周波の交流磁界に対して自然共鳴や磁壁共鳴といった磁気損失を起こす性質を利用したものであり、吸収した電波エネルギーを吸収体内部で熱エネルギーに変換することで電波の反射を抑制しているという特徴があります。

電波暗室のその他情報

1. 電波暗室の面数

電波暗室は、構成面の構造上で大きく2つに分類することができます。1つは上下前後左右の6面すべてに吸収体を取り付けた6面電波暗室です。

もう1つは、床以外の計5面に吸収体を取り付けた5面電波暗室です。5面電波暗室は、大地  (アース) での電波反射を想定し、床に吸収体をつけていないという特徴があります。

2. 電波暗室の性能指標

電波暗室の性能指標を左右する暗室の大きさは、様々な要素によって決定されます。例えば、電波を計測したい対象物の大きさや、電波を遮蔽したい周波数帯、試験の規格 (10m法なのか3m法なのかなど) です。これらの要素によって、既存の建屋に入れるか、新しく建屋を建設するかが決まります。安価ではないため、十分な検討が必要です。

電波暗室の性能指標で重要な項目は、正規化サイトアッテネーション(NSA Normalized Site Attenuation)と呼ばれる特性です。「CISPR16-1-4」で規定されていますが、送信アンテナと受信アンテナを対向させて配置し、受信アンテナの高さを1mから4mの間で動かし、かつ送信アンテナも規定範囲内で動かした場合の最大の伝搬損失を求め、その値が理論値(オープンサイトでの値)と比較して+/-4dB内に収まっている必要があります。

また、SVSWR (Site Voltage Standing Wave Ratio) と呼ばれる試験もあります。6面すべてに電波吸収体がある電波暗室で、送信アンテナの位置を規定範囲で変化させた場合の受信レベル変化の変化幅の最大値が、6dB未満でなければなりません。

参考文献
https://www.jp.tdk.com/tech-mag/noise/11
http://www.rf-world.jp/bn/RFW07/samples/p107-108.pdf
https://www.telec.or.jp/services/equipment/price.htm
https://www.telec.or.jp/services/equipment/price.html

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