セミリジッドケーブル

セミリジッドケーブルとは

セミリジッドケーブル (英:semi-rigid coaxial cable) とは、外部導体に無継目金属管を使用した同軸ケーブルです。

外部導体が編組構造となっている一般の同軸ケーブルと比較すると、高周波域での伝送特性が優れています。また、絶縁体にフッ素樹脂を使用することで、誘電体損失も低減しています。

セミリジッドケーブルの用途は、通信装置、電子機器、測定器などの高周波信号の伝送です。

セミリジッドケーブルの使用用途

セミリジッドケーブルは、一般の同軸ケーブルと同様に、UHF (極超短波) 帯やSHF (マイクロ波) 帯を利用する機器の伝送用ケーブルとして使用されます。同軸ケーブルに比べ優れた特性があり、マイクロ波伝送路・遅延線路、高精度の測定などの用途が多くあります。

具体例

・レーダーを含む通信システム・制御システム
・放送機器、医療用電子機器
・高速コンピューターシステム
・誘導雑音の問題になる配線路
・耐熱性・耐寒性が必要な配線路
・オーディオ・計測機器など

セミリジッドケーブルの原理

同軸ケーブルは、4層の円筒状を重ねた構造です。一番内側に内部導体、その外膜にはポリエチレン誘導体などの絶縁体があり、次に外部導体、そして最外側は絶縁層で覆われています。外部導体は信号の漏洩や外部電波の侵入を防ぐシールドの役目をします。

セミリジッドケーブルは、この外部導体を金属チューブにすることで、一般の同軸ケーブルより優れた特性を持つ様にしたものです。素材にはさまざまなものが使われていますが、例えば内部導体には銀メッキ銅覆鋼線、外部導体には無酸素銅を使用します。また、絶縁体にフッ素樹脂を主に使用します。

セミリジッドケーブルは、自由に曲げることはできないが、遮蔽特性、インピーダンス特性、挿入損失、耐振動安定性などが一般の同軸ケーブルに比べ優位です。

セミリジッドケーブルの特徴

セミリジッドケーブルにはいくつかの特徴があります。

1. 低損失・低VSWR (電圧定在波比)

同サイズの他のケーブルに比べ、低損失です。また、絶縁体は厳しい許容差を維持しており、ケーブル構造の均一性が高く、反射による電力損失を最小限におさえています。マイクロ波帯域で安定した電気特性を示します。

2. 高遮蔽性

外部導体になどの金属管を使用しているため、遮へい特性に優れており、130dB以上の高い遮蔽能力があります。漏洩放射、および外部雑音の侵入はありません。

3. 高電力容量

同サイズの他ケーブルに比べ、低減衰量であることにより、高い電力容量が得られます。

4.優れた加工性

曲げ、巻き付け、剥き出し、はんだ付け、およびコネクターの装着が容易であり、また、外部導体を直にグランドできる等、他のケーブルにはない優位な点があります。

5. その他

・温度特性(-40℃~+100℃以上)に優れ、広範囲な温度で安定した特性が得られます。
・多くはRoHS指令 (EUの特定有害物質の使用制限に関する法律) 適合品です。
・低インピーダンス・ケーブルであり、10~20Ωタイプがあります。
・形状が固定されるので、不意なケーブルの曲がりで伝送特性を変化させることがありません。
・その他ケーブルより、同じ仕様でもより小さい外径のものを選ぶことが可能です。そのため、機器の小型化、高集積化および高精度化が図れます。

セミリジッドケーブルの規格

同軸ケーブルにはJISケーブル、軍用規格ケーブル、セミリジットケーブルがあり、それぞれ規格が定められています。セミリジットケーブルは、米軍規格MIL RGー402、MIL RGー405などの規格があります。

セミリジッドケーブルの種類

セミリジッドケーブルの種類は多くありますが、その中で内部導体・外部導体の材質別に3種類が多く使われています。

1.
外部導体 : 無酸素銅
内部導体 : Fe (Cu厚メッキに銀メッキ処理)
外径:0.9,1.2, 2.2,3.6mmの4種類

2.
外部導体 : キュプロニッケル
内部導体 : Fe (Cu厚メッキに銀メッキ処理)
外径:1.2,2.2,3.6mmの3種類

3.
外部導体 : キュプロニッケル
内部導体 : キュプロニッケル
外径:1.2,2.2,3.6mmの3種類

この他、航空機用として、誘電体にSiO2 (二酸化ケイ素) /純度99.995%を使用するケーブルもあります。フッ素樹脂ケーブルと比べ30~50%小サイズ及び軽量です。

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