CTスキャナとは
CTスキャナ (英: Computer tomography scanner) とは、コンピューター断層撮影装置のことです。
CTスキャナでは、被撮影物にX線を照射して透過率を収集し、その透過率に基づいて内部の構造を画像として取得し、表示および記録などを行います。CTスキャナは大きく分けて、人体や動物を撮影する医療用のCTスキャナと、非破壊検査や製品の出荷検査などに使用される産業用のCTスキャナの2種類です。
CTスキャナの使用用途
CTスキャナは、人体や動物を撮影する医療分野と、非破壊検査や製品の出荷検査などに使用される産業分野で使用されています。医療分野では、脳や肺などに異常が無いかを診断するために使用されます。
産業分野では、製品の内部構造を検出することによって、配線の内部寸法の測定や、鍛造製品の内部の様子の解明、誤差の測定、繊維の配列の検出などへの使用が一般的です。医療分野で使用する場合は、過剰に被爆しないようX線の出力を抑える必要がありますが、産業用に使用する場合は、X線の出力を上げても問題ないため、医療用に比べてより高精度な情報を入手することができます。
CTスキャナの原理
CTスキャナは、X線の照射装置、検出器、および検出したデータを画像に変換する画像処理装置で構成されています。CTスキャナの原理は、レントゲンの原理に近いものです。
物質ごとにX線の吸収率 (X線吸収係数) が異なることから、X線を被検査物に照射すると、物質に応じて異なる透過率で透過します。これを利用し、被検査物にX線を照射し、被検査物の部位ごとに異なる透過線量を検出します。そして、この検出データをもとに画像処理をして画像を作成するのが大まかな原理です。
レントゲンとCTスキャナの大きな違いは、レントゲンは被検査物に一方向からX線を照射しているのに対し、CTスキャナでは被検査物に様々な方向からX線を照射していることです。このため、レントゲンでは二次元のデータによる平面画像のみを作成しますが、CTスキャナでは三次元のデータを用い、被検査物を複数個所で輪切りにした状態の連続画像や、三次元に構成された画像や動画を作成できます。
CTスキャナのスキャンでは、コンプトン散乱と光電効果の2つの物理現象が使用されています。
1. コンプトン散乱
X線が電子に衝突し、X線の一部のエネルギーが電子に付与され、電子が原子の軌道から飛ばされ、X線のエネルギーが減少することで、X線のエネルギーが高い場合に発生します。
2. 光電効果
X線が電子に衝突し、X線のすべてのエネルギーが電子に吸収され、電子が原子の軌道から飛ばされ、X線が消滅することで、X線のエネルギーが低い場合に発生します。
【用途別】CTスキャナの違い
CTスキャナの用途は、大きく分けて医療用と産業用の2種類です。それぞれの違いを以下の観点から解説します。
1. X線の出力
医療用CTスキャナは過剰な被ばくを起こさないよう、X線の出力を抑えることが必要です。一方で、産業用CTスキャナは、被検査物が物体であるため、X線の出力を比較的高出力にすることが可能で、高精度な情報を入手できます。
2. 構成
医療用CTスキャナ
医療用CTスキャナは、写真などで見るようにドーナツ型のガントリー内にX線照射装置と検出器が相対する形で配されています。このガントリーの輪の中にベッド状の被検査物載置部分が配置された構造です。そして、このベッドの周りをガントリーが回転し、相対するX線照射装置と検出器が被検査物の周りを回って検査を行います。
産業用CTスキャナ
産業用CTスキャナは、X線照射装置と検出器は相対して固定されており、その間に被検査物載置部分が配された構造です。被検査載置部分を回動させることで被検査物自体を回動させて、検査を行います。
このため、対象とする被検査物のサイズにもよりますが、産業用CTスキャナにおいては小型化が可能です。なお、産業用CTスキャナにおいては、装置にX線漏洩キャビネットを備え、X線を装置内部に閉じ込めることができるので、このことからも小型化が可能になります。
医療用CTスキャナおよび産業用CTスキャナの両者において、X線の透過面に沿って被検査物の幅方向に検出器を1列に配したものと、検出器を被検査物の長さ方向に複数列配して面を構成したものがあります。複数列配したものは一度にその列分のデータを取得できるので、一列のみ配したものより早くデータの取得が可能です。
産業用CTスキャナでは効率が重視されるため、複数列配したものの方が好適と言えます。医療用CTスキャナにおいても早く検査が終われば患者の負担が減るので、使用されることが多いです。
CTスキャナのその他情報
1. CTスキャナとがんの関係性
CTスキャンというとがんを見つけるために使用するイメージがありますが、検査から診断、更には診療まで広く使用されます。一方で、CTスキャンを行うことでがんが発生するリスクもあり、CTスキャンを実施する際はリスクについて十分に理解することが必要です。
CTスキャンはがんの再発の監視、がんに対する治療法の判断、生体組織検査の方針や治療計画の作成、がんの大きさや病期に関する情報の取得、腫瘍の診断、異常ながん増殖の検出など、診断から治療まで幅広く役立っています。CTスキャナは医療において重要な機器ですが、X線を照射するためがんを引き起こす恐れがないとは言えません。
ただし、一回のCT検査によるがん発症のリスクは低いとされており、CT検査を受診することでもたらされるリスクよりCT検査を受診しないリスクの方がはるかに高いと言えます。
2. CTとMRIの違い
どちらも大きな機器の中に寝て測定する検査方法であり、得られる画像も一見するとよく似ています。CTとMRIの大きな違いは測定原理です。
CTスキャナでは、前述のように物質ごとのX線の透過率の差に基づいて画像を形成するのに対し、MRIは物質の磁気共鳴に基づいて画像を作成しています。CTスキャンでは、短い撮影時間と、断層像の取得が容易であることがメリットであり、頭部救急病変 (出血疑いなど) への適応が高く、骨を撮影できることもメリットです。
一方、デメリットとしては、放射線被曝や、病変と正常組織の濃度の差ではMRIに劣ることが挙げられます。MRIでは、放射線被曝が無くCTと比較して組織間での違いをはっきりと認識できることがメリットです。
また、任意の断層像を得ることが可能で、造影剤なしで血管の画像を取得できることもメリットとして挙げられます。一方のデメリットは、体内に機器を埋め込んでいる方は検査できないことです。
参考文献
http://www.image.med.osaka-u.ac.jp/member/yoshi/mei_lecture/image_medicine/handout2007/naitoCT2007-1.pdf
https://www.jmc-ct.jp/study/
https://white-rabbit.jp/ct-scan/
https://www.kuki-med.jp/ctmri/