ステッピングモーターとは
ステッピングモーターは、パルス信号によって回転角度を制御できるモーターを指し、高い位置決め精度を保証できるモータの一種です。
別名でパルスモーターとも呼ばれ、回転角度は制御信号であるパルス信号数とモーターの相数で決まり、回転速度は、パルスの速度に相当するパルス周波数に依存します。比較的安価で簡易なモーター構成ながら、オープンループ制御で高い位置決め精度とトルクが得られるのが特徴です。
ステッピングモーターの使用用途
ステッピングモーターの構造上、緻密で可逆的な角度制御を得意とするため、主に位置決め精度が要求される現場で使用されます。例をあげると、自動搬送機器などのロボット装置の2次元的な動作を表現するための駆動用モーターがあります。
高精度のボールネジとステッピングモーターを組み合わせることで、ステージの送り量を非常に高精度でかつ再現性高く表現できます。また、弁の開き具合によって一定量の塗料を噴出するような塗布機械についても、ステッピングモーターで弁の開き角度を精密に調整することでより精巧な作業ができるようになります。
ステッピングモーターの原理
ステッピングモーター内部は、シャフトとつながったローター部およびその外周に設置された複数のステータから構成されています。ローター部はさらに2つの部分に分かれておりそれぞれがN極S極と逆位相になるように磁化されています。
また、ステータには小さい歯が存在し、その歯の間隔が緻密に制御されているのが特徴です。2相型のステッピングモーターを例に取ると、向かい合うステータ同士は同じ極性に磁化され、隣り合うステータは逆向きに磁化されます。そのため、ローターの凹凸と引き合うステータおよび反発するステータが互い違いに存在することになり、ステータの磁化状態に対してエネルギー的に安定な位置にローターは保持されます。
次に、ステータの極性を反転させるように電流を流すと、ステータ1つ分ローターが回転します。これを繰り返し制御することにより、ステータの小歯の機械精度に従って正確に回転角度が制御できます。5相型のステッピングモーターでは、これを5段階で順次制御するため、より細かな角度制御ができることになります。
ステッピングモーターのその他情報
1. ステッピングモーターのトルク
ステッピングモーターは回転速度によって出力トルクが変わり、一般的に回転速度が遅い時には高トルク、回転速度が速い時は低トルクとなります。ステッピングモーター選定時にはモーターの回転速度-トルク特性表を確認し、使用回転速度時の必要トルクがプルアウトトルク曲線の範囲内に入るように選定します。
特に高速回転時のプルアウトトルクは励磁最大静止トルクの20%程度になるので、高速回転で使用する場合には注意が必要です。
また、同じ外形寸法のモーターでも使用ドライバー、内部構造の違いや、入力電圧によってもトルク特性が変わってくるので、メーカーやドライバーの組み合わせや入力電圧も考慮してモーター選定する必要があります。
2. ステッピングモーターのドライバー
ステッピングモーターを動かすためにはドライバーと呼ばれる制御装置が必要です。ドライバーはステッピングモーターに流す電流電圧を制御して、回転速度、回転量などをコントロールすることができます。
ドライバーには定電流駆動方式と低電圧駆動方式がありますが、高速でのトルク特性が優れている定電流方式が採用される場合が多いです。一般的には、ドライバーに上位制御機器より回転速度、回転量の指示値としてパルス列を入力し、入力されたパルス列に従ってモーターを指示速度で指示量回転させます。
ドライバーにはマイクロステップと呼ばれる機能を搭載しているものがあります。ステッピングモーターは基本ステップ角を最小回転角度として回転しますが、マイクロステップ機能を持つドライバーは、各コイルに流す電流を調整し、基本ステップ角を電気的に細分化し、回転の分解能を上げることができます。
また、振動、騒音を低減させる効果や、ステップ角ごとのオーバーシュートの低減、起動停止時の衝撃緩和の効果もあります。マイクロステップ機能の分解能は、多いものだと1/250程度まであり、使用用途によって、ディップスイッチなどで選択することができます。
3. ACサーボモーターとの使い分け
ステッピングモーターでよく引き合いに出されるモーターに、ACサーボモーターがあります。
ステッピングモーターの向き・不向き
ACサーボモーターはエンコーダを内蔵しており、フィードバック制御を行うため、比較的回転数によらず、回転トルクはほぼ一定です。一方でステッピングモーターの場合は、高速回転時に回転トルクは低下してしまいますので、この用途には不向きです。反対に低速回転が主な使い方であれば、ステッピングモーターが向いているといえるでしょう。
ステッピングモーターはオープンループ制御タイプが主に市場に出回っていますが、エンコーダを取り付けてクローズド制御が可能で効率が改善された商品もあります。ただしその場合は、もう一つの魅力である比較的小型で簡易な構成で安価なモーターというメリットを見直す必要が出てきます。
ACサーボモーターの方が適している用途
ACサーボモーターでなければならない使用用途は、複数のモーターを用いる高度な回転制御が必要な場合です。オープンループ制御ではセンシングによるモーター間動作を補う制御は期待できないため、この場合は高速回転動作時と同様に、ステッピングモーターではなくACサーボモーターの使用の方が適していると言えます。
参考文献
https://www.orientalmotor.co.jp/products/stepping/overview_1/
https://www.orientalmotor.co.jp/tech/reference/stepping_motor01/
https://www.orientalmotor.co.jp/tech/reference/stepping_motor02/
https://www.orientalmotor.co.jp/tech/reference/stepping_motor03/
https://www.orientalmotor.co.jp/tech/reference/stepping_motor05/