ひずみゲージとは
ひずみゲージは、物体のひずみを測定する装置です。ひずみを測定し、圧力や荷重などを算出できるため、圧力計やフォースゲージにも使用されています。
ひずみゲージの使用用途
ひずみゲージの使用用途としては、ひずみが直接強度に影響するような製品のひずみの測定や、生産工場における荷重測定、金型などの変形度合いの測定などがあげられます。ただし、ひずみケージを正しい方向で取り付けなければ、測定誤差が生じるので注意が必要です。
具体的な使用例としては以下のようなものがあります。
- プリント基板の強度やひずみの測定
- プレス機器の荷重のモニタリング測定
ひずみゲージの原理と種類
下記では、ひずみゲージの原理と種類を解説します。
1. ひずみゲージの原理
ひずみケージは、測定対象に取り付けられて使用され、測定対象と一緒にひずみ、内部の電気抵抗が変化します。そして、この電流が変化する変化量を測定することによって、ひずみを算出する仕組みです。
2. ひずみゲージの種類
ひずみケージの種類は非常に豊富です。最も広く流用されている箔ひずみゲージや線ひずみゲージ、半導体ひずみゲージなどがあります。
この他にも、低温・高温環境に適したものや、より微細なひずみを測定できるもの、各種被測定材料に応じた材質のものなど、用途によって使い分けができるのもひずみゲージの特徴です。
ひずみケージの構造
下記では、「箔ひずみゲージ」と「半導体ひずみゲージ」の構造をそれぞれ解説します。
1. 箔ひずみゲージ
ひずみゲージの中で最もポピュラーな箔ひずみゲージの構造は、絶縁体のベースの上に、ジグザグに金属の箔を貼り付け、その金属の箔から2本の配線が出ている構造です。この2本の配線は、ホーインストンブリッジ回路という回路につながっています。
ホーインストンブリッジ回路は、3つの既知の抵抗値を持つ抵抗と、ひずみゲージの4つをブリッジ状に配置し、その中央の電位差を測定することによって、ひずみゲージの抵抗値を測定できる回路です。
そして、ひずみゲージが取り付けられた測定対象がひずむと、取り付けられたひずみゲージの箔が伸縮し、電気抵抗の値が変化するので、その抵抗値の変化量をホーインストンブリッジ回路の電位差から求めます。ここで、ひずみゲージにはゲージ率という、ひずみに対する抵抗値の変化量の固有値があるため、ゲージ率と抵抗値の変化量から測定対象の物体のひずみを算出することが可能です。
2. 半導体ひずみゲージ
半導体ひずみゲージは、箔ひずみゲージの箔の部分に半導体を利用したひずみゲージで、応力が半導体に作用すると半導体の電気抵抗率が変化するという性質を利用します。
ひずみゲージのその他情報
1. ひずみゲージの貼り方
ひずみゲージによるひずみ測定の精度は、ゲージの設置方法(多くの場合は接着)に強く依存します。そのため、ひずみゲージを測定対象に貼り付ける際は、充分慎重に作業することが必要です。手順としては、最初にゲージを貼り付ける測定対象の表面をきれいに洗浄します。
洗浄には油性洗剤等を使用して油分を徹底して除去することが好適です。これをしないと、貼り付け時に表面研削または研磨した際に、油分がより深い材料内部にまで浸透してしまうことになります。洗浄が終わったら、ゲージをピンセットで持ち上げ、慎重に測定対象表面に接着していきます。
この時、表面とゲージの間の空泡はすべて確実に押し出すように貼り付けることが重要です。その状態で接着剤が固まるまで数分待ちます。数分経過したら、最後に全体に絶縁テープを巻きつけて破損しないように保護し、貼り付け完了です。
2. ひずみゲージの欠点と解消方法
ひずみゲージは測定対象に接着するだけで簡単にひずみ測定ができるのがメリットですが、実際には複雑な要素が絡み合い、測定をより難しくしています。たとえば、応力の問題もその一つです。
ひずみは外部から加えられた力と材料内部に生じる内部応力との相互作用によって変化します。そのため、2方向あるいは3方向のひずみを解析するには、複数のゲージを組み合わせた「ロゼットひずみゲージ」を使用することが必要です。
また、測定対象を構成する材料の熱膨張係数によって、実際にはひずみがなくてもひずみが生じていると判断される場合もあります。これを防ぐためには、ゲージの材質を測定対象の材料と合わせることが必要です。
ひずみゲージによるひずみ測定では、こういった物理的あるいは機械的特性をよく理解した上で、数ある種類の中から最適なものをピックアップしなければなりません。
3. ひずみゲージと温度補償
測定対象に接着したひずみゲージへの影響の大きな要因は、外力によるひずみと、温度変化の影響です。温度変化が生じると、測定対象とひずみゲージの線膨張係数の違いや、ひずみゲージの温度による抵抗値変化の影響を受けます。
温度変化によりあたかもひずみが生じているかのように計測されることをみかけひずみと言います。自己温度補償型ひずみゲージを使用することがみかけひずみへの最も有効な対策です。自己温度補償型ひずみゲージとは、測定対象に適合するようにひずみゲージの抵抗温度係数を調整し、温度によるみかけひずみ量を最小にしたひずみゲージです。
測定対象に適したひずみゲージを選択することは最良の選択ですが、誤差が残る場合があります。場合によっては非線形の特性を有するものもあります。ほとんどの場合、この誤差はひずみケージのデータシート上に記載されており、より精密な測定が必要な場合はデータシートから算出される誤差を見込んだ補償演算が可能です。
4. ひずみゲージとクリープ補正
一定の温度条件下において、一定の加重が作用するとき、時間とともにひずみが増大する現象をクリープ現象といいます。ひずみゲージにおいて、クリープ現象は天敵で、これが生じてしまうと測定誤差に直結しかねません。
ひずみゲージのクリープ現象は、ほとんどの場合はベース材料・グリッド形状・接着剤に起因しています。そこで、これらの要因が引き起こすクリープとは逆位相の起歪体を材料クリープとして用い、そこにひずみゲージを貼り付けることによってお互いのクリープ現象の影響をキャンセルする方法が一般的です。
重要なのは材料の組み合わせで、クリープ現象が逆位相にもかかわらず、その絶対値が大きく異なる場合は、キャンセルしきれずに片側方向に影響が出てしまいます。なお、材質にもよりますが、温度が高いほどクリープ現象が顕著に現れる場合がほとんどです。クリープ現象によるひずみ増大を考えるとひずみゲージに加わる応力が大きいほど、破断に至るまでの時間(寿命)が短くなる点には留意してください。
参考文献
https://www.jstage.jst.go.jp/article/sicejl1962/45/4/45_4_323/_pdf
https://www.jp.omega.com/technical-learning/strain-gage-quality-control.html
https://ednjapan.com/edn/articles/0909/01/news147.html
https://tml.jp/knowledge/strain_gauge/transducer_gauge.html
https://www.keyence.co.jp/ss/products/recorder/testing-machine/material/creep.jsp
https://www.aandd.co.jp/products/loadcell/introduction/cell_intro02.html