防水ねじ

防水ねじとは

防水ねじ

防水ねじとは、座面 (ねじの頭部の裏側) にねじと締結物との隙間を防水するためのシール部品が付属したねじのことです。

シール部品はシールリング、シールドリング、Oリングなど、ねじメーカーによって名称は異なりますが、同じ役割をはたします。一般的に、ねじの座面と被締付物のと間にはわずかな隙間ができるため、水や有機溶媒の侵入経路になりやすい場所です。

防水ねじで用いられるシール部品は耐水性と密閉性が高く、座面と被締付物の隙間を塞ぐことができます。このため、家電製品の電子基板を水の飛沫から保護したり、屋外で使用する機械に雨水が浸透するのを防いだりする目的で使われるねじです。

防水ねじの使用用途

防水ねじは、精密機器や水に触れやすい機器を浸水から守るために使われます。特に以下の機器では防水ねじが欠かせません。

  • 浸水に弱い精密機器 (パソコン、計量機器、医療機器など)
  • 屋外で使われる機器 (気象観測器、太陽光発電設備など)
  • 水がかかる場所での使用を想定した機器 (食器洗浄機など)

防水パッキンとねじを別々に購入すると、サイズが合わなかったり密閉性が弱かったりする恐れがあります。防水性のシール部品がセットになった防水ねじを選べば、高い防水性を確保することが可能です。

防水ねじの原理

防水ねじは水がかかる環境を想定しているため、本体 (ビス部) は錆びにくいSUSで作られています。座面 (頭部の裏側) には、本体のサイズに合ったシール部品が付随しており、被締付物との隙間を塞ぐ役割を果たします。

シール部品の材質はニトリルゴムが一般的です。ニトリルゴムは、アクリロにトリルと1,2-ブタジエンの重合で合成されます。水だけでなくガソリン、アルコールなどの溶媒にも耐えられるため、油脂の浸透防止にも使用可能です。

ただし、酢酸エチルやエーテルには腐食されるので、これらの有機溶媒への耐性が求められる場合はフッ素樹脂 (PTFE) 製のものを選びます。

防水ねじのその他情報

1. 防水ねじの適正な使い方

防水ねじは基本的に外部のカバーなど、水がかかるところの使用を想定されたねじです。適正な使い方をしないと、相手側のナットが破損したり、防水ねじを使用して組み立てた製品や、機器が破損したりすることがあります。

これを防ぐために、基本的な考え方は下記となります。

  • 防水ねじ (特にシールドリング) 、相手側部材が壊れないよう、締め付ける力が許容範囲内であること。
  • 防水ねじと相手側部材に加わる、繰り返しの力 (振動などによる) が、許容範囲内であること。
  • 防水ねじの座面 (お互いに接触する側の面。工具が触れる面ではない) に加わる圧力で、締め付ける対象物 (金属や木材など) を陥没させないこと。
  • 防水ねじを締め付けることで、締め付ける対象物を壊さないこと。

2. 防水ねじの締結条件

防水ねじを締結する際には、締結条件の選定に気をつけなければなりません。一般的にねじが対象物を固定する締結力は、ねじ自体が弾性変形によって伸ばされ、元の長さに戻ろうとする力によって生み出されます。ねじを引っ張るための力はねじの締め付け作業によって発生しますが、トルクが引っ張り力に変換できるのは、ねじの螺旋形状によるものです。

重たい荷物をまっすぐに上に持ち上げるには大きな力が必要ですが、なだらかな斜面を滑らせれば、比較的小さな力で荷物を高い位置に運べます。滑らかに回るタイヤがついた台車を使えば、さらに軽い力で運ぶことが可能です。

一般のねじ締結が台車を使った場合とするなら、防水ねじの締結は斜面を滑らせた場合に相当します。つまり、シール部品が締結時の抵抗になり、十分な軸力が得られないこともあります。防水ねじで大きな外力が作用する部品を固定する場合には、締結条件は慎重に決定することが大切です。

参考文献
https://www.daimaru-neji.co.jp/pdf/seal_catalog_vol1.pdf
https://www.akaneohm.com/column/denshoku2/
https://www.nbk1560.com/

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です