X線顕微鏡

X線顕微鏡とはX線顕微鏡

X線顕微鏡とは、X線を光源として対象物の構造を観察できる顕微鏡です。

物質にX線を照射すると様々な信号が得られますが、X線顕微鏡では主に透過 (吸収) X線と、蛍光X線を用いて観察します。X線は透過性が高く、物質を透過する際に、内部の構造や厚み、組成に固有の減衰をしていく反応を利用することによって、コントラストのついた画像を取得できます。

また、試料を回転させながら連続的に取得した画像を3D構成すると、断層像 (いわゆるCT) を取得可能です。一般に電磁波を用いる顕微鏡において、空間分解能はその波長に依存します。X線は可視光よりも100倍から10,000倍波長が短いので、精細な画像を取得することができます。

X線顕微鏡の使用用途

X線顕微鏡は、主に工業分野の研究開発や、製造現場の検査において使われます。X線を用いれば非接触・非破壊の検査ができるため、部品の欠陥検査や、特性検査に使用される場合が多いです。また、岩石などの構造評価を行い、新規の原材料としての特性評価を行うためのパラメータを取得することもできます。

半導体製造分野では、超微細加工を施した製品の特性評価を行うために使用される機会も増えてきました。水分を多く含む生体試料を観察する際は、水の吸収が低いX線の波長領域を使用することで、コントラストの高い画像を取得できます。

X線顕微鏡の原理

X線顕微鏡は試料にX線の照射し、物質から得られる透過 (吸収) X線や、蛍光X線などの信号を利用して像を得たり、成分分析など行ったりします。使用されるX線の波長は、1~10 nmの軟X線と呼ばれるものである場合が多いです。特に2.3~4.3nmの領域は、水の吸収が極端に低く「水の窓」と呼ばれ、生体試料の観察などに用いられます。

X線顕微鏡には、X線の透過率をコントラストとして画像取得を行うものと、X線照射によって発生する蛍光X線を検出するものがあります。蛍光X線は、X線照射によって物質中の内殻電子が励起されることで生じたホールに、外殻の電子が緩和する際に内殻と外殻のエネルギー差に対応したX線が放射される現象で得られる信号です。

蛍光X線は、原子により固有の波長を持っているため、元素分析などにも応用できます。また、X線顕微鏡は、光学系も光学素子の有無によって2種類に大別されます。光学素子を用いないX線顕微鏡では、投影拡大法と密着法という方法によって観察します。

X線像波レンズを使って拡大することができないため、試料と撮像面を物理的に離すことによって拡大投影されます。光学素子を用いた結像法は、光の解説を用いたゾーンプレートを用いる方法や、全反射や多層膜反射を利用したミラーを用いて実現されます。

X線顕微鏡

1. X線顕微鏡と電子顕微鏡の違い

X線顕微鏡がX線を光源とするのに対し、電子顕微鏡は電子線を試料に当てて像を拡大します。電子線は、電子の速い流れのことです。原子は陽子と中性子でできた原子核と、その周りを回る電子からできています。陽子や中性子、電子に加速器という装置で非常に速いスピードに加速すると、陽子線や中性子線、電子線といった放射線になります。

電子線はX線と異なり粒子線であるため、浸透力に限界があります。電子線の浸透力は加速電圧によって決まり、加速電圧が大きいほどより深くまで電子が到達し、被照射物の密度が小さいほど深くまで浸透します。

透過型電子顕微鏡 (TEM)
薄膜状にした試料に電子線を当て、試料を透過した電子線を電子レンズを通し、電子線によって光る蛍光板に拡大した像を結ばせます。電子レンズは、電界や磁界によって電子線を曲げて、像を結ばせる働きをします。

走査型電子顕微鏡 (SEM)
真空中で電子線を細く絞り、試料の表面を走査するように照射し、試料から放出される二次電子や反射電子を検出します。二次電子とは、照射した電子線が試料内の別の電子をたたき出したものですあり、反射電子とは、照射した電子が試料の表面で反射されたものです。

走査電子顕微鏡にX線検出器を取り付けると、試料中に含まれる元素の種類や量を調べるX線分析装置としても活用することができます。 

2. 走査型X線顕微鏡

X線顕微鏡の一種で、硬X線をプローブとする顕微鏡です。硬X線は0.1nm前後と波長が短く、原理的に高い分解能が可能です。また、物質との相互作用は、透過 (吸収) ・屈折・反射のほか、光電子、蛍光X線、弾性散乱、非弾性散乱、磁気吸収・散乱など多岐にわたります。

さらに、高い透過性を持つため、非破壊的な観察も可能であり、大気中での測定にも使用されています。走査型X線顕微鏡は、集光X線、試料を走査するためのステージ、検出器からなり、試料を走査しながら、X線分析 (透過X線、蛍光X線、散乱X線など) を行い、様々な情報を可視化します。

参考文献
https://www.jstage.jst.go.jp/article/kenbikyo1950/38/1/38_1_3/_pdf
https://www.toray-research.co.jp/technical-info/analysis/form/for_008.html
https://www.iwasaki.co.jp/optics/chishiki/eb/07.html
https://www.jaima.or.jp/jp/analytical/basic/em/principle/

http://www-up.prec.eng.osaka-u.ac.jp/matsuyama/research.html
https://www.jeol.co.jp/science/em.html 

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