スパッタ付着防止剤

スパッタ付着防止剤とは

スパッタ付着防止剤とは、溶接作業時に発生する「スパッタ」が、溶接金属に付着するのを防ぐために使用される溶剤です。

「スパッタ」とは、溶接時に飛び散る金属粒やスラグのことを指します。細かいブツブツ状となって、溶接金属の表面に付着します。

これを取り除くには、タガネや圧縮空気を利用したジェットタガネなどを使用しなければなりません。このスパッタ除去作業を容易するのが、スパッタ付着防止剤です。

溶接作業前に溶接部にスプレーすることで、スパッタの付着を防ぎます。付着しても、ワイヤーブラシなどで取り除くことが可能です。タガネを使う必要はなくなり、作業性が向上します。

スパッタ付着防止剤の使用用途

スパッタ付着防止剤の使用用途は、主に以下の2つです。

  • 溶接する金属 (母材) の表面へスパッタが付着することを防ぐ
  • 溶接用ノズルの先端 (トーチ) へスパッタが付着することを防ぐ

1. 母材への使用

スパッタ付着防止剤は、母材へのスパッタの付着を防止するだけでなく、母材を傷めず容易にスパッタを除去することができます。防錆性能も高く、母材が錆たり腐食したりする恐れもありません。

母材によって種類が分かれているため、母材にあったものを選びます。また、溶接後に母材を塗装する場合、塗料となじみやすいものを選ベば、溶接後にスパッタ付着防止剤の塗膜を除去せず上塗りを行うことができます。

2. トーチへの使用

スパッタ付着防止剤は、溶接する金属に使用するだけでなく、溶接トーチに使用することで先端部の劣化を軽減し、作業性を向上させます。

半自動・自動溶接や、ロボット溶接、さらに溶断などの溶接に用いられるノズルやチップにあらかじめスプレーし、トーチ部を汚さず陽極性能を維持できるので便利です。

スパッタ付着防止剤の原理

スパッタ付着防止剤には、速乾性のある溶剤が配合されています。速乾性のある溶剤は塗布したあとすぐ蒸発するので、被膜がすばやく生成され、時間をおかずに溶接作業に入ることが可能です。

速乾性のある溶剤として以前はフロンが使われていましたが、地球温暖化防止の観点から現在では、特定化学物質や有機溶剤が使用される場合があります。

スパッタ付着防止剤の種類

スパッタ付着防止剤には、塗布する素材別に母材用とトーチ用があります。母材用のスパッタ付着防止剤はさらに母材の材質によって種類が分かれています。

1. トーチ用

溶接トーチのノズルやチップなどに使用されるスパッタ付着防止剤です。耐熱性の高い顔料が配合されています。

ノズルやチップなどの器具の先端にスパッタが付着することを防ぎ、陽極性能の維持に役立ちます。また、器具の寿命を延ばすのでコスト抑制が可能です。

さらに、器具の浄化の手間がかからないため、作業効率を向上させます。

2. 母材用

母材用のスパッタ付着防止剤には、次の2種類があります。

「高張力鋼・軟鋼用」には、高耐熱性の特殊樹脂が配合されています。高温になる厚い母材を溶接する際に、スパッタが付着しないようにするためです。また、塗料となじみやすいため、溶接後に塗料を塗る場合に対応しています。

「ステンレス用」は、無機系微粉体が配合された水溶性のスパッタ付着防止剤です。薄板から厚板まで幅広い母材に使用できます。水洗いで簡単に除去できえうので便利です。ただ、鉄材へ使用すると錆や腐食のリスクがあるため注意が必要です。

スパッタ付着防止剤のその他情報

水溶性への需要の高まりと注意点

環境負荷や健康安全性を考慮し、溶剤を使用しない水溶性スパッタ付着防止剤の需要が高まっています。

ただし、水溶性の場合、液の水分が溶接部に溜まってしまうと、その水分の蒸発によってブローホールなどの欠陥が発生するリスクがあります。特に、垂直面などで液だれを起こさないよう均一に塗布することが重要です。

参考文献
https://jp.misumi-ec.com/tech-info/categories/technical_data/td06/x0226.html
https://www.warner.co.jp/products.html#kiribijin

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