ジュラコンワッシャ

ジュラコンワッシャとは

ジュラコンワッシャとは、ジュラコン®を素材として成形された樹脂ワッシャ (平座金) です。

ジュラコン®はポリプラスチックス株式会社の日本やその他の国における登録商標で、POM (ポリアセタール樹脂) と呼ばれるエンジニアリングプラスチックの1つです。POMは高い電気絶縁性を有し、耐衝撃性、耐クリープ性、耐薬品性、耐摩耗性に優れています。こうしたPOMの利点を活かして、ジュラコンワッシャは、相手材料の保護や電気的絶縁を目的とし、ボルト締結部に使用されます。

ジュラコンワッシャの使用用途

ワッシャは、ボルトの頭部の大きさに対して締結力が大きい場合に使用されます。ボルトの頭部よりも面積が大きいワッシャを挟むことで座面の面積を拡大し、締結部の座面の陥没および振動や外力による緩みを防止することが可能です。

ジュラコンワッシャを始めとする樹脂ワッシャは、樹脂の変形や絶縁性を利用して、締結力により相手材を変形させないよう保護する目的や、樹脂の絶縁性により通電部からボルトや他の部材を絶縁する目的で使用されます。

ゴム製のワッシャは、締結部に振動が加わる際の緩み防止や締結部の気密性を重視する場合などに使用されます。

ジュラコンワッシャの原理

ジュラコンワッシャは、ジュラコンの特性を活かして用いられる樹脂ワッシャです。以下でジュラコンの特性とその原理について説明します。

ジュラコン含むPOMは、化学名としてはポリオキシメチレン (polyoxymethylene) を省略した呼び方です。POMは主に (-CH2O-) の構造単位を持つ結晶性の熱可塑性樹脂になります。POMにはモノマーとコポリマーがありますが、ジュラコンはコポリマーに分類される樹脂です。

POMの特性の多くは、その比重の高さによるものです。POMの比重は1.4g/cm3で、エンジニアリングプラスチックの中でも高いです。POMの高い比重は、結晶内の分子間距離が短いことが影響しています。分子間距離が短いことによって分子同士の相対位置が変化しづらく、弾性率が高まります。また、繰り返し応力が作用したり、クリープという低い荷重が長時間作用することによって大きな変形に至ってしまうような機械部品で求められる特性においても優れています。

その他のPOMの大きな特徴に、耐摩耗性の高さが挙げられます。耐摩耗性は、結晶に取り込まれている分子が、他部材が近接しても移行しにくいという特徴によるものです。

ジュラコンワッシャのその他情報

ジュラコンワッシャの特徴

ジュラコン® (POM) は汎用エンジニアリングプラスチックに分類され、成形加工性、機械的強さ、耐衝撃性、耐摩耗性、耐疲労性、絶縁性、耐薬品性など多くの長所をもっています。これらの特徴の中で、樹脂ワッシャにおいては、特に絶縁性や材料強度、耐疲労性などが重視されます。同様の特徴を有するものとして、PTFE (テフロン樹脂) やPC (ポリカーボネート樹脂) などのエンジニアリングプラスチックもありますが、ジュラコンは安価で入手可能である点が利点です。

ジュラコンワッシャの短所としては、分子構造に酸素を含むため燃えやすい点、耐候性が低い点、接着性が悪く接着剤を用いた接着ができない点 (溶接は可能) 、強酸には耐えられない点などがあります。したがって、揮発性の有機溶剤を使用する施設など、防爆機器の使用が指定されているエリアや屋外や、強力な溶剤や洗浄剤が付着する環境での使用においては、異なる材料のワッシャを選定する必要があります。

また、限定的な用途ですが、ジュラコンワッシャは結晶性樹脂の特性上から、透明とすることができません。ジュラコンを含む結晶性樹脂には、高密度の結晶部分と低密度の非晶部分が存在しており、結晶部分と非晶部分とでは光の伝搬速度が異なります。光は結晶/非晶界面を通過する際に屈折あるいは反射するので、白く見えます。

参考文献
https://wilco.jp/products/special_topic12.html

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