真空チャック

真空チャックとは

真空チャックとは、真空によって生じた負圧により物体を吸着する固定具です。

バキュームチャックと呼ばれる場合もあります。真空チャックによりワークの固定を行うための装置の多くはテーブル状です。表面には内部の真空と繋がる小孔が複数設けられており、これらの小孔部分の負圧により物体を吸着します。

空気を通さない平面を有する物体であれば吸着が可能であるため、磁性材料のみをチャック可能である磁石を使用するチャック方法よりも、多くの種類の材料に対して使用できます。

真空チャックの使用用途

真空チャックは、研磨や梱包などの作業を行う際に、材料や製品を固定するために使用されます。具体的には、物理的に固定できない繊細な精密部品や衛生管理が重要な食品の容器、マグネットチャックを使用できないステンレス、アルミなどの非磁性材料や磁場によって故障の可能性がある電気素子などの吸着に使用されています。

特に、力を加えると破損しやすく、ほこりなどが付着しないようクリーンルームで扱われ、磁場により故障しやすい半導体材料の加工・塗工工程においては真空チャックが必須です。また、真空チャック内部から小孔に負圧ではなく、正圧をかけて空気を送り込むことでワークを浮かせる運搬台として活用することも可能です。

真空チャックの原理

真空チャックは、テーブル内部の空間を真空状態にすることによって、テーブル表面に設けられた小孔を通じ、負圧により物体を吸着するシステムです。物体底面がテーブル内部の真空空間と接触していると、物体は相対的に底面以外の面から大気圧による圧力を受けるため、物体をテーブルに押し付ける力が作用することでテーブルに吸着されます。

真空状態を解除すると、吸着力も解除されます。真空状態を発生させる手段は真空ポンプを使用する方法もしくは工場内で供給されている圧縮空気を利用して真空エジェクタによって真空状態とする装置を使う方法です。

真空ポンプや真空エジェクタの必要能力は、吸着する物体の底面積や材質、必要な吸着力に依存するため、吸着する対象によってシステムの規模も異なります。

真空チャックの構造

真空チャックは加工するワークを負圧により固定しますが、チャックに設けられている小孔の配置や大きさによっては構造上ワークの固定が行えない場合があります。

チャックの大きさとワークがもつ平面固定部面積の広さの差が小さい場合、大気が流入する小孔が少ないため負圧部の圧力は高くなりにくいです。しかし、チャックの大きさに対してワークの平面固定部が比較的狭い場合には小孔から大気が流入しやすく、確実に固定するための工夫が必要になります。

また、ワークが薄物の場合には小孔に近い部分のみが大きく大気圧に押さえつけられるので、へこみや歪みが発生しやすいです。

真空チャックの種類

セラミック製の真空チャックは、高精度の小孔を持っているため部分吸着ができない欠点を克服できます。数μmの小孔を高精度で構成させることでワークがない部分でも負圧を維持できるためです。小孔の間隔が小さくなり小孔の大きさもとても小さくなっているため薄物についても扱いやすくなります。

このセラミック製の高精度真空チャックは、製品によって既存の真空チャックの上に載せるだけでも部分吸着が可能になります。真空チャックは主に平面のテーブル状ですが、同様の機能の持たせて円筒状にすればサクションロールとすることができます。

フィルム状のものを円筒状の真空チャックに吸着すれば運搬する際に活用可能です。逆に空気を送り出せば、浮遊させることもできます。真空チャックの制御機能に加え、エアーブローによって物体を動かしやすくする機能や僅かな流量の空気を排出し続けることで小孔内への異物の混入を防止する機能を搭載した製品も展開されています。

参考文献
https://www.supertool.co.jp/products/products.php?eid=00265
https://www.nabeya.co.jp/search.php?action=Detail&Key=1101
http://www.newstrong.co.jp/air/octopus/octopus1.htm

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