ポテンショスタットとは
ポテンショスタットとは、電位や電流の制御、電位の計測などを行う装置のことです。
電解液中の作用極、対極、参照極から成る3電極系において、作用極-参照極間の電圧を制御し、作用極-対極間に流れる電流を測定します。電気化学測定で用いられ、ガルバノスタット、ファンクションジェネレータとともに用いられるケースが多いです。
ガルバノスタットが電極を流れる電流を正確に制御し、電気反応化学速度を任意に規制するのに対し、ポテンショスタットは電極の電位を制御し、その時に電極に流れる電流を測定します。1つの機器でガルバノスタット/ポテンショスタットを切り替え可能な機種も多く市販されています。
ポテンショスタットの使用用途
ポテンショスタットの使用用途は主に電気化学測定です。実際にはポテンショスタットのみで用いられることは少なく、ガルバノスタットとファンクションジェネレータとセットで使われることがほとんどです。
ポテンショスタット単独では定電圧制御しか行うことはできませんが、これら機器と組み合わせることで電圧の掃引操作やパルス出力などを行うことができ、その応答を測定することで対象の電気化学特性をより深く知ることができます。
ポテンショスタットの原理
ポテンショスタットの原理のポイントは、オペアンプを用いたネガティブ・フィードバック制御を行っていることです。
オペアンプは図1に示す回路記号で表され、特徴は以下の2点です。
- 内部インピーダンスが非常に大きい
- プラス端とマイナス端の入力端子の電圧は同じとみなせる (VIN1=VIN2)
図1. オペアンプの回路記号
オペアンプを用いた回路により、ポテンショスタットの以下の主要な機能を実現しています。
- 参照極に電流が流れるのを防ぐ
- 参照極を基準とした作用極の電位を制御する
- 作用極-対極間に流れる電流を測定する
内部インピーダンスが高いため参照極に電流が流れるのを防ぎ、プラス端とマイナス端の電圧が同じになることから、設定電圧をそのまま参照極の電圧とすることが可能です。
オペアンプは流れる電流に応じた電圧を出力することから、電流を測定することができます。
ポテンショスタットのその他情報
1. 電気化学測定とは
図2. ボルタモグラムの例
電気化学測定とは、特定のサンプルに対して電源や別の回路から電気的な信号を加えることで、化学反応を引き起こすこと、応答信号から内部で起きている化学反応を評価する測定手法です。
一般的な例として、水の電気分解が挙げられます。水にポテンショスタットと接続した電極を挿入し、外部回路から電気エネルギーを加えることで、作用極上で水の分解反応を進めたり、逆転させたりすることができます。水の電気分解を促進する触媒の開発などに生かすことができます。
また、ボルタモグラム測定ではパソコンを用いて、制御した電極電位をコンピュータからデジタル信号をアナログ信号に変換し、ポテンショスタットにより測定した電解電流をデジタル化し、コンピュータによって読み取ります。こうすることで、電圧変化に対してどれくらい電流が流れたかを調べることができます。
ボルタモグラムからは、各電位において作用極でどのような酸化/還元反応が起こっているのかが考察できます。
2. 3電極系を用いる理由
図3. ポテンショスタットと3電極系の模式図
電気化学測定においては、電極で起こる反応の電位を正確に知ることが必要です。2電極系で電気化学測定を行うと、作用極も対極も電流が流れているため、分極という現象が生じて電位を正確に測定することができません。分極とは、回路に電流が流れることで電極電位がずれることを指します。
そこで、第3の電極として参照極を加え作用極/対極/参照極から成る3電極系を構成します。参照極には電流を流さないようにし、作用極-参照極の電位差を測定することで作用極の電位を正確に測定することができるようになります。
参考文献
https://www.jstage.jst.go.jp/article/sfj/68/5/68_270/_pdf/-char/ja
https://www.bas.co.jp/xdata/mnews/series_ps_1.pdf