緊急地震速報受信機

緊急地震速報受信機とは

緊急地震速報受信機 (英: earthquake early warning system receiver) とは、気象庁が発信する緊急地震速報、もしくは緊急地震速報を元に配信事業者 (地震動予報業務許可事業者) が送信する予報を受信する装置です。

気象庁が発表する緊急地震速報は、「緊急地震速報 (警報) 」と「緊急地震速報 (予報) 」の2種類があり、一般的にテレビ、ラジオ、携帯電話で発出される緊急地震速報は「警報」です。一方、「予報」は迅速性を狙いとして出されるものです。緊急地震速報受信機は、この予報速報を受信して、受信地点の予測震度や主要動到達予想時刻などを表示したり、エレベータ・交通機関・館内放送などの機器制御を行ったりする際に使用されます。

緊急地震速報受信機の使用用途

緊急地震速報受信機の用途は、一般家庭や各種産業・企業、教育機関などにおける安全対策です。業務用では、商店・オフィス・ビル・工場・交通機関・学校などで広く用いられています。

受信した緊急地震速報を音声ガイダンスや館内放送で音声通知する他、受信した地震情報を様々な機器と連動して震度別に制御して安全対策を行うこともあります。具体例としては、下記のようなものがあります。

  • エレベーター: 自動で最寄りの階に停止してドアを開放状態にする
  • 自動ドア: 自動で開放 (地震によってドア枠がゆがむことによる閉じ込めを防止するため) 
  • 工場ライン: 巻き込み防止、ブロック制御などの安全を確保
  • 安否確認システム: 事前に登録している人 へ(従業員や家族など) 、安否確認メッセージをプッシュ配信

家庭用では、一般家庭世帯単位で設置して緊急地震速報を音声通知するものの他、マンションなどの集合住宅単位で設置して各戸のインターホンに一斉通知するタイプもあります。

緊急地震速報受信機の原理

緊急地震速報受信機で用いられている「緊急地震速報 (予報)」は、気象庁から配信事業者 (地震動予報業務許可事業者) を経由して緊急地震速報受信機へ配信されます。気象庁が発表する緊急地震速報 (予報)を元に、地震動予報業務許可事業者は任意の地点での予想震度や主要動到達予測時刻を予報することが可能です。そのため、利用者は緊急地震速報受信機を利用することで、利用する場所に合わせた予報情報を得られます。

緊急地震速報の配信と利用の形態は、主に下記の3種類があります。受信するためには、インターネット環境などの用意が必要です。

  • 予報業務許可事業者の会社で緊急地震速報を元に予報を行い、受信機側では配信された予報の受信と通知のみを行う
  • 予報業務許可事業者が気象庁からの緊急地震速報を配信し、受信機側で個別地点の予報を行う
  • 予報業務許可事業者は利用者に予報を行う装置の提供のみを行い、受信機側での緊急地震速報の受信は別の配信事業者より行う

緊急地震速報受信機の種類

1. 用途による分類

緊急地震速報受信機は、用途別に様々な種類の製品が提供されています。住居用では一般家庭用の製品、集合住宅一棟全体をカバーする製品などの種類です。業務用ではオフィスビルや商業ビル向け製品、工場など製造業向け製品などがあります。緊急地震速報に基づいてアラームが鳴るという基本機能は共通ですが、それぞれの用途に応じてその他の機能が異なります。下記は用途別の機能の具体例です。

  • 一般オフィス用途: 受信機本体に固定IPアドレスを付与して社内LANへ接続し、社内ネットワーク内機器として利用が可能
  • ビルや工場など大型建物用途: 館内放送設備に接続可能
  • 製造業: 生産ラインの制御が可能

2. 機能による分類

緊急地震速報受信機の中には、地震計を内蔵して、直下型地震にも対応できる種類の機器があります。その他、津波や噴火にも対応している機器もあります。機器によっては、設置建物内ににて無線子機への伝送が可能です。

3. 受信方法による分類

緊急地震速報受信機の受信方法は複数の種類があります。受信方法での種別には、インターネットや専用回線経由で受信する種類や、FM電波で受信する種類などがあります。FM電波タイプはラジオ放送局から発信される緊急地震速報を利用し、多くは警報のみを発信しますが、インターネットが遮断された場合などに特に有効です。

緊急地震速報受信機のその他情報

1. 緊急地震速報の原理

地震波は、縦波のP波(初期微動)と、横波のS波(主要動)とがあります。P波が地盤を伝わる速度は約7Km/sで、上下方向の微振動です。S波の伝達速度は約4Km/sで、P波より遅れて大きい水平振動が到達します。この時間差を使って、初期微動時点で震源を予測して各地点の震度と到達時間の予測を行い、緊急地震速報として気象庁から発表されます。

2. 緊急地震速報の種類

気象庁が発表する緊急地震速報には、「緊急地震速報 (警報) 」と「緊急地震速報 (予報) 」の2種類とがあります。「警報」は、気象庁が最大震度が5弱以上または長周期地震動階級3以上を予測した場合に、震度4以上が予想される地域に対して発表されます (震度6弱以上または長周期地震動階級4を予測した場合は特別警報) 。

「予報」の発出条件は下記の通りです。

  • 1ヶ所以上の地震観測点において、P波またはS波の振幅が100ガル以上となった場合
  • 地震計で観測された地震波を解析した結果、予測マグニチュードが3.5以上、または最大予測震度が3以上、長周期地震動階級が1以上である場合

予報は、警報に比べて迅速性が高いことが特徴です。地震を検知してから数秒~1分程度の間に数回 (5~10回程度) 発表されます。第1報では迅速性優先の情報が発出されますが、第2報以降、徐々に精度の高い情報が発出され、精度が安定したところで最終報となります。

3. 緊急地震速報の技術的限界

緊急地震速報受信機は、地震における安全確保に有効ですが、緊急地震速報自体に下記のような技術的限界があるため、運用にあたってはこれらを理解しておくことが必要です。

  • 速報の発出後、主要動が到達するまでの時間が極めて短い (長くても十数秒から数十秒)
  • 震源付近では速報が間に合わない
  • 震度や到達時刻の予想には誤差が伴う

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