シリコンラバーヒーターとは
シリコンラバーヒーター (英: Silicon Rubber Heater) とは、シリコンゴムを使用したシート状のヒーターです。
一般的なニクロム線のヒーターと同様に、電流を流すことで面全体が加熱されます。2mm以下に設定可能な薄さに加えてゴム材料の特徴である柔軟性を有しているため、狭幅部や曲面の加熱に適しています。また、シートの形状も自由に設計できるので、被加熱物の形状に合わせた形状が選択可能です。
設定温度は60℃から300℃程度まで設定可能であり、円筒容器やパイプの加熱や紙・プラスチックなどのヒートシールに使用されます。
シリコンラバーヒーターの使用用途
シリコンラバーヒーターは柔軟性と高い熱伝導性から、さまざまな使用用途で利用されます。
1. 自動車分野
自動車においては、バッテリーの温度管理や自動車内のシートヒーターなどに使用されます。デフロスター (除霜) システムなどでも利用される場合があります。また、寒冷地や冬季の低温環境では、エンジンオイルの温度を適切に制御するために使用する場合もあります。
2. 医療分野
医療現場では、医療機器の保温や温熱療法に使用されます。血液温度制御装置や熱療法パッドなどがその一例です。また、早産児や病弱児の保温環境を提供するインキュベータにも使用されます。
3. 製造分野
製造業では、さまざまなプロセスで加熱のために使用されます。溶接の前処理やラミネート加熱などが代表例です。また、発火の恐れが小さい点や、ニクロム線ヒーターと比較して省スペースな点から、航空宇宙分野でも採用の実績があります。
シリコンラバーヒーターの原理
シリコンラバーヒーターは、2枚の薄肉シリコンゴムシートの間に一定間隔で折り返した抵抗線を挟み込んだ構造です。シリコンラバーヒーターの端部では抵抗線の両端部がリード線と接続されており、リード線に電圧を印加すること加熱することができます。
抵抗線にはニッケル合金であるニクロム線や、炭素などが使用されます。電流が流れると抵抗を生じ、その結果として熱が発生します。
リード線の材質は銅が最も一般的です。銅は高い電気伝導性を持ち、信号や電力の効率的な伝達が可能です。また、柔軟性にも優れており、加工や取り扱いが容易となっています。
シリコンラバーヒーターの発熱能力は、出力ワット数を面積で割ったワット密度という値で表されます。ワット密度は抵抗線の発熱量や配置密度に依存し、およそ0.1~2W/cm2の発熱能力の製品が展開されています。
シリコンラバーヒーターの種類
シリコンラバーヒーターには、使用用途合わせて穴あけや、丸型、金属発熱体のパターン設計に合わせたものの作成などができますが、代表的なものは下記の2つです。
1. シリコンヒーターパッド(角形)
一般的なタイプで、フレキシブルで均一な熱を発生させることができます。平面で使用することはもちろん、様々な形態に対応可能で、配管、食品、薬品などに使用されます。
2. シリコンヒーターバンド
管やシリンダーなどの円形または円筒形のオブジェクトを温めるために使用されます。これらのバンドは対象物の周囲に巻き付けられ、必要な温度を維持するために設計されています。またドラム缶やタンクなど比較的大きなものに対応しているものがあります。
シリコンラバーヒーターの選び方
シリコンラバーヒーターを選ぶ際には、設置条件や発熱能力を考慮します。
1. 設置条件
どのような対象物やプロセスを加熱する必要があるのかを明確に把握します。加熱する対象物の形状やサイズを考慮し、厚さや大きさを選定します。また、使用環境によっては耐久性と耐環境性を持つシリコンラバーヒーターを選ぶ必要があります。
2. 発熱能力
各メーカーからシリコンラバーヒータの発熱能力と空気中での温度変化のグラフが提供されています。そのため、使用する際には目標加熱温度と到達時間、被加熱物の熱伝導係数などから電熱計算を行います。計算結果からシリコンラバーヒーターの発熱能力を決定します。
ただし、シリコンラバーヒーターの到達温度は周囲温度や被加熱物との密着状態によって変化するので、厳密な温度設定をしたい場合には別途サーミスタやコントローラーなどを用意して制御システムを構築する必要があります。
参考文献
https://www.om-heater.jp/whatssrh/index.html
https://www.threehigh.co.jp/blog/2017/09/silicon-rubber-heater-calculation.php