墨つぼとは
墨つぼとは、墨を含ませた糸を木材などの上にピンと張り、糸をはじくことで表面に直線を引くことができる大工道具の1つです。
墨つぼの使用用途
墨つぼは主に以下のような建築現場、設備工事、電気工事、造船所などで直線を引く用途で使われます。
- 建物の寸法の基準となるかえり芯を引く時や部屋の間仕切り
- 配管が通る場所を決める時
- 建設途中の梁や柱など場所を決める時
- 照明器具やインサートの位置などを設置場所を決める時
- 建設途中の梁や柱な
- ノコギリなどの刃物を扱う際
- リフォームや設備業者
- 造船所の現図作業
墨つぼの原理
図1. 墨つぼの構造
墨つぼは、中に墨を含んだ綿が入っている壺、糸が巻き取られている糸車、糸の先について糸を固定するカルコというピン部品で構成されています。墨つぼの外装は樹脂、糸の材質はナイロン、綿はセルロースが一般的に使われています。
図2. 墨つぼの使用方法
カルコを線を引きたい材木などに刺し固定した後、ゆっくり糸を引き出していきます。このとき、糸は墨を含んだ綿を通るので墨が付着しています。この状態から糸をはじくと、材木上に直線を引くことができます。
墨つぼの選び方
墨つぼは、直線上に墨で目印を付ける工具です。非常にシンプルな使用用途であるため、どれを選んでも同じと考えられがちですが、実際は製品によって扱いが大きく違い、作業場所や作業内容に合わなければ扱いが難しい製品もあります。
1. 本体側の糸抑え
墨つぼには、本体側に糸を押さえる部分が付属しているものがあり、指で墨のついた糸を抑えずに済むため手が汚れずに済みます。糸抑えの形状は斜めカットタイプと鶴首タイプがあります。斜めカットタイプは、墨つぼ先端が見やすく、また糸を安定して抑えることが可能です。そのため、糸をピンと張りやすく、非常に安定して墨を打つことができます。
鶴首タイプは、糸を押さえる部分が墨つぼ本体から棒状に伸びているため角などの狭い場所や糸が押さえにくい場所で活躍します。斜めカットタイプとは反対に、糸を押さえる部分が狭いため糸の固定が少し不安定になります。
2. 糸の巻き取り方式
墨つぼの糸の巻き取り方式には、手動と自動の2種類あります。自動巻き取りを利用すると一瞬で巻き取れるので、作業効率はいいですが、巻き戻す時に強く引っ張られてカルコが刺さることもあります。
自動的に減速する機能やカルコが針のほうから飛んでこない機能が付いているものを選ぶと安全です。手動巻き取りは、自動のものにスピードは劣りますが、ギアを増やして巻き取りスピードを上げているタイプを使えば、巻き取りもそこまで苦になりません。
3. 糸
糸の太さも墨つぼを選ぶ上で重要です。太い糸ははっきりと線をだせるため、模様のある場所に使用できますが、墨の消費が早いのが難点です。細い糸は墨の跡を残したくない場所に使用されますが、糸が細いほど使用中に切れることがあるため、丈夫な糸が使われている墨つぼを選択する必要があります。
4. 墨つぼ
頻繁に墨つぼを使っていないと墨が固まってしまうことがあります。使用頻度が低い場合は、フタなどで墨入れが密封されていて、墨が乾燥しにくいタイプを選ぶ必要がありますまた、墨か水を定期的に入れて固まらないようにしたり、糸車に巻き取られている糸に水を数滴たらしたりすると墨の乾燥を防ぐことができます。
5. インク
図3. つぼに使用されるインクの特徴
墨つぼのインクは、通常、黒色の墨汁を使用します。色分けをしたい場合などには、黒色以外に、白色、朱色、青色などの色のインクが使われます。墨つぼに用いるインクは、一般的にはっきりした線が引ける代わりに、引いた線が消えないことが多いです。
丸太や化粧材などの仕上げの済んだ部材に墨を打つ場合は、 塗料を残さないように、朱色が使われることがあります。このとき用いられる朱色のインクは墨汁ではなくベンガラからできており、きれいにふき取ることができます。
また、墨つぼと似た道具に、チョークラインがあります。チョークラインは、本体の構造や使い方などは墨つぼと同じですが、材料に付着させる塗料が墨ではなく粉です。
墨つぼは、材料に墨がくっきりと付き消せませんが、チョークラインは、材料が粉であるため、簡単に消せます。仕上げ材など墨の跡を残したくない場合によく使われます。また、墨は表面がざらざらした場所やコンクリート、金属などには付着しづらいので、このような場合にもチョークラインが適しています。
同じ目的でも、使用用途に合わせて選ぶことが大切です。どこにどれくらいの墨を打つかで、必要な墨つぼが変わります。
参考文献
https://jpn.tajimatool.co.jp/category/43
https://www.shinwasokutei.co.jp/products_category/12/
http://www.fujiwarasangyo-markeweb2.com/
https://nandemo-2.info/?p=2228
https://electrictoolboy.com/media/5787/