エンジニアリングプラスチックとは
エンジニアリングプラスチックとは、プラスチックの中でも特に機械強度、耐熱性に優れたプラスチックです。
エンプラと略称で呼ばれることが多く、従来のプラスチックと同様に軽量である点や、高性能と低コストである点から金属の代替品として期待されています。さらに、エンジニアリングプラスチックの中でも特に高性能のものはスーパーエンジニアリングプラスチック (スーパーエンプラ) と呼ばれ、様々な製品への応用に向けて開発が進められています。
エンジニアリングプラスチックの使用用途
エンジニアリングプラスチックは多くの種類が存在し、用途に応じて様々な機器に利用されています。
1. ポリアセタール
ポリアセタールはポンプ部品や給水管のジョイント、歯車や軸受、ファスナーや洗濯槽など幅広い業界、用途で使われています。
2. ポリアミド
ナイロン6や、ナイロン6,6に代表される繊維、衣料用途で多く使用されています。宇宙服にも使用されたことがあります。強度が高いため、衣服以外でも、鞄やバッグ、釣り糸、ロープなど太さにかかわらず、ちょっとやそっとの引っ張りで壊れない製品の素材となっています。
3. ポリカーボネート
高い透明性から眼鏡、カメラのレンズ、CD、DVD基板、耐候性に優れることから自動車のヘッドランプレンズ、ドアハンドル、ルーフレールなどに使用されています。
4. 変性ポリフェニレンエーテル
着色性の良さや難燃化のしやすさなどから電気・OA機器のハウジングによく使用されます。また低吸水性から水道配管や給水機などにも使用されます。また低比重、耐衝撃性がよいことから自動車用の外装材に使用されます。
5. ポリブチレンテレフタレート
自動車分野におけるイグニッションコイル、ワイパーアーム、ディストリビューター、スイッチ類、ヘッドライトハウジング、モーター部品、バルブ、ギヤなどの各部品類や、電気・電子分野で、スイッチ類、コネクター、ソケット、リレー、ハウジング、モータ部品などがあります。
エンジニアリングプラスチックの特徴
上記で紹介したポリブチレンテレフタレートの特徴は、以下の通りです。
1. ポリアセタール
ポリアセタールは剛性、耐摩耗性、耐薬品性、絶縁性に優れ、吸水性が小さい、金属との摩擦係数が小さいなどの長所があります。
2. ポリアミド
耐熱性、機械強度、耐薬品性に優れた素材です。しかし、吸湿性が高いため水分を吸収しやすく、膨張しやすい欠点がある反面、染色しやすいことから衣料用繊維用途に用いられています。
3. ポリカーボネート
高い透明性と耐衝撃性を最大の特徴とし、紫外線にも強く、屋外での使用でも高い強度を長期間持続します。しかし、薬品耐性は低いため、薬品と共に使用する場合は注意が必要です。
4. 変性ポリフェニレンエーテル
機械強度、耐衝撃性、電気特性に優れており、吸水率も低く、比重も比較的軽いことが特徴です。耐酸、耐アルカリ性には優れていますが、トルエンなどの一般的な有機溶剤には溶けてしまうのが欠点です。
5. ポリブチレンテレフタレート
優れた機械物性の他にも、電気特性、耐薬品性、耐熱性、耐摩耗性、低吸水率、寸法安定性に優れるなどの特性を持っています。アルカリにより加水分解しやすい点が欠点です。
エンジニアリングプラスチックのその他情報
1. 医療用エンジニアリングプラスチック
医療用途においても、プラスチックには耐熱性、耐薬品性、耐腐食性、生体親和性などに優れたものであることが要求され、以下の用途でエンジニアリングプラスチックが使用されています。
- ポリフェニレンスルファイド樹脂 (PPS) / 医療用チューブポリエーテルエーテルケトン樹脂 (PEEK)
骨固定補助剤・脊柱インプラント・整形外科用インプラント・頭蓋顎顔面インプラント・人工歯根 - ポリスルホン樹脂 (PSU)
人工腎臓の透析膜 - ポリエーテルスルホン樹脂 (PES)
コンタクトレンズ用殺菌容器、注射器シリンジ
2. エンジニアリングプラスチックの接着技術
エンジニアリングプラスチックを自動車部品として適用するときの大きな課題に、部材間の接合が挙げられます。エンジニアリングプラスチックは、表面性状が安定しているため接着力が十分に発現されない場合があります。
自動車部品のような高温下など過酷環境で使用されるエンジニアリングプラスチックは、その寸法安定性を確保するために部材に対してアニール処理 (熱処理) を施して接着を行うことが一般的です。しかし、アニール処理により部材表面に脆弱層が形成されこれが接着性の低下につながるため、この脆弱層を除去することにより、接着性が改善されるという研究結果が報告されています。
参考文献
https://www.kda1969.com/study/study_pla_detail2.htm
https://www.nagaseplastics.co.jp/info/plastic/enpla#:
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000189.000059861.html
https://www.jstage.jst.go.jp/article/gomu/90/5/90_262/_pdf/-char/ja