ソフトアクチュエータとは
アクチュエータとは、動力のもとになるエネルギーを物理的な運動に変換する仕組みのことを指します。
したがって、水車や風車などもアクチュエータの1種であると考えることができます。
一般的には、ヒトの指を動かす筋肉や関節の動きを模した機構をアクチュエータと呼んでいます。
一方、ソフトアクチュエータは、塩や溶媒、熱などの環境変化もしくは外部刺激に反応する軽量で柔軟な材料がアクチュエータと同様の作用により、動作する仕組みのことを指します。
また、ソフトアクチュエータは、アクチュエータと比べて、軽量さや環境変化、外部刺激へ柔軟に対応できることが異なるポイントです。
ソフトアクチュエータの使用用途
ソフトアクチュエータは、軽量さと柔軟性を有していることから人工筋肉に応用されています。人工筋肉は、ソフトアクチュエータを活用することで人間の筋肉を模した製品です。これは、ロボットや重機などに利用されています。
また、ソフトアクチュエータは、人工筋肉以外にも心臓や肛門などの人工臓器としても応用されています。
そのほかにもさまざまな業界や分野で利用されていて、例えば建築現場や介護分野などが挙げられます。これらの例では、作業者は、介護者や重い荷物を日常的に動かすことから腰に大きな負担がかかってしまいます。
そのため、ソフトアクチュエータを用いた腰のサポートウェアや動作を補助する人工筋肉、マッスルスーツなどが使用されています。
さらに、ソフトアクチュエータは、外部刺激にも鋭敏なため、温度変化に応じて発電を行うことができないか?といったことが検討されています。
ソフトアクチュエータのロボットへの利用
ソフトアクチュエータは、形状適応性や柔軟性、伸縮性に富み、軽量で安価です。
そして、素材を入手しやすいこともメリットのひとつとして挙げられ、大気中でも安定し、動作音がありません。
また、複雑な形状のなかでも受動的な反応を示し、ほとんど制御しなくとも安定的な動作を行います。
さらに、ソフトアクチュエータは、少ない電力でも大きく変形することから、地球に優しい素材でもあります。
これらの特徴は、ソフトアクチュエータと従来のアクチュエータを比べても特有の動作になります。
このことから近年では、ロボット分野において、特にソフトアクチュエータが活用されており、極限状態や水中でも動作することから開発が盛んに行われています。
例えば次世代のゴム素材は、通電により伸縮するため、これらを取り入れたソフトアクチュエータをロボットアームに使用する例などが挙げられます。
そのほかにもPVCゲルをソフトアクチュエータとして採用した着るロボットという名称のウェアラブルロボットにも活用されており、マッスルスーツなどもこれに該当します。
ソフトアクチュエータの原理
ソフトアクチュエータは、使用する素材やその仕組みによりさまざまな方法があります。そのため、一部を抜粋して解説します。
ソフトアクチュエータを用いた人工筋肉は、一般的にケモメカニカル反応により動作しています。ケモメカニカル反応とは、温度変化や溶媒交換、化学物質の添加または光、電場などの刺激により開始される機械的な運動を指します。
例えば温度変化によって作動する形式では、ポリメタクリル酸(PMAA)が使用されますが、PMAAは、水溶液中でポリエチレングリコールと水素結合することで、高分子間コンプレックスを形成します。
そして、この方法では、高分子間の平衡にもとづき作動する仕組みのため、水溶液のなかでポリエチレングリコールの濃度が上昇すれば、高温側で収縮するようになります。
また、この方法により形成された形状記憶ゲルは、エタノールの処理により何度でも形状の書き換えを行うことが可能です。
ソフトアクチュエータの分類
ソフトアクチュエータの分類は、使用する材料により分けることができます。その一部を下記に記載し、解説します。
高分子ゲルアクチュエータ
高分子ゲルアクチュエータは、ソフトアクチュエータの1種で、材料には、高分子ゲルが用いられています。電圧を印加することにより変形を開始する素材です。このアクチュエータは、その応答性や軽量さ、製作コストが抑えられる点、およびエネルギーの変換効率の高さから注目を集めています。
導電性高分子アクチュエータ
導電性高分子アクチュエータは、ソフトアクチュエータの1種で、材料には、ポリピロール(PPy)やポリチオフェン、ポリアニリン(PANI)などの導電性高分子材料が用いられています。このアクチュエータは、イオンを含む電解液のなかに導電性の高分子材料と対向電極が配置された構造となっています。そして、この間に電圧を印加することにより導電性高分子材料が伸縮を行う仕組みです。
ソフトアクチュエータの種類には、そのほかにエラストマーアクチュエータやカーボンナノチューブアクチュエータなどがあります。