防毒マスク吸収缶とは
防毒マスク吸収缶とは、防毒マスクに装着して毒性物質を吸収する物質を詰め込んだ缶です。
一般的に、防毒マスクの面体に必要個数の吸収缶を取り付けて使用します。吸収缶によって除毒方法は異なり、目的の毒性物質に適したものをつけなければ効果を得られないため、種類の選定には注意が必要です。
また、吸収缶を使用する際には、使用期限、設定された破過期間、面体の適切な装着による密着性の確保などの項目を順守する必要があり、取り扱い手順を誤ると適切な効果が得られません。
これらの注意事項は各メーカーの防毒マスク取り扱い手順書に記載されてありますが、厚生労働省より「防毒マスクの選択・使用等について」という通達がなされているため、使用前の確認が大切です。
防毒マスク吸収缶の使用用途
防毒マスク吸収缶の使用目的は、人体に有毒なガス成分が存在する雰囲気下で作業者が有毒ガスを吸収することを回避し、作業を可能とすることです。吸収缶にはそれぞれの種類によって除毒できる成分・濃度が定められており、規格外の条件や酸素濃度が低い箇所では使用できません。
農業用途に用いる場合、農薬の調製や散布、消毒剤の使用時などに防毒マスクの使用が想定されます。注意すべき点としては、吸収環式の防毒マスクは気体 (蒸気) にのみ有効であり、液体の有毒物に対する効果はないことが挙げられます。
また、通常の吸収缶の使用用途は有機ガス用、ハロゲンガス用などの代表例のみが記載されているため、有毒物のSDSや吸収缶の取扱説明書などから、使用目的に合致していることを事前に確認する必要があります。
防毒マスク吸収缶の特徴
防毒マスクは面体と吸収缶でできています。顔に装着する部位のことを面体と呼び、有毒物質を吸収する薬剤を詰めた部位の事を吸収缶と呼びます。
吸収缶に詰められた薬剤は、有毒物質と反応して無毒化させる働きがあります。吸収缶は付け替えが可能で、発生する有毒ガスの種類に応じて交換が必要です。
特に有機ガスやハロゲンガス、アンモニア、亜硫酸ガス、硫化水素に使用する吸収缶は注意が必要で、国家検定に合格したものを使用しなければなりません。
長所
正しく使用すれば、有毒物質が発生する作業でも健康を害することなく作業を進められます。農作物の防除に使用する農薬は、たとえ基準濃度を守っていたとしても、直接人体に取り込まれてしまうと非常に危険です。
防毒マスクの使用により、農薬散布におけるリスクが大幅に削減されます。
短所
防毒マスクには、使用できない環境もあるので注意が必要です。具体的に、以下のような環境では使用することができません。
- 酸素濃度が不明もしくは18%未満
- 有害ガスの平均濃度が不明、もしくは使用する防毒マスクの濃度上限を超えている
- 常温、常湿、常圧以外の環境
- 性質の異なるガスが混在している環境
防毒マスク吸収缶の種類
対応している物質ごとに約13種類に分けらています。特に注意が必要な5種類とその対応可能ガスの関係は以下の通りです。
- 有機ガス用: クロルピクリン、シクロヘキサン、トルエン
- ハロゲンガス用: 塩素、臭素、フッ素
- アンモニア用: アンモニア
- 亜硫酸ガス用: 亜硫酸ガス
- 硫化水素用: 硫化水素
クロルピクリンは農業においても土壌消毒剤として使用されるので、必ず防毒マスクを着用しての作業を心掛けなくてはなりません。
防毒マスク吸収缶の選び方
吸収缶は有毒物質に合わせたものを選ぶ必要があります。対応していないものを使用したとしても、防毒の効果が期待できないので注意が必要です。
防毒マスクは、濃度上限によって3種類に分類されます。防毒マスクの種類と濃度の関係は以下の通りです。
- 直結式小型防毒マスク: 低濃度用の吸収缶に対応
- 直結式防毒マスク: 中濃度用に対応
- 隔離式防毒マスク: 高濃度用に対応
防毒マスク吸収缶の使い方
必ず作業内容や発生する有毒物質の種類に合ったものを使用しなければなりません。その他、使用前に破過時間を確認する必要があります。
破過時間とは、使用してから吸収缶の効力が無くなるまでの時間です。破過時間を超えた吸収缶は防毒効果が無くなってしまうため、定期的に交換する必要があります。全体の注意点としては、顔と面体をしっかりと密着させることです。
隙間が生じていると、その隙間から有害物質が入り込む可能性があるため、防毒効果が下がってしまいます。また、正しく保管して防毒マスクの性能を損なわないようにすることも重要です。また、劣化の原因となる高温多湿を避けて保管します。