回転真空ポンプ

回転真空ポンプとは

回転真空ポンプとは、気体を吸引して容器内や装置内部を真空状態に近づけるための装置です。

内部に回転機構を備えており、ローターなどの動きによって気体を連続的に圧縮・排出することで真空を作り出します。代表的な構造には「油回転式」と「ドライ式」があり、油回転式はシールや潤滑に真空ポンプ油を使用することで高い真空度と安定した性能を得られるのが特徴です。一方、ドライ式は油を使わないため、クリーンな環境を必要とする分野やメンテナンス性を重視する現場で採用されています。

回転真空ポンプはコンパクトで取り扱いやすく、排気速度や到達真空度のバランスに優れているため、単独での利用だけでなく、ターボ分子ポンプや拡散ポンプなどと組み合わせた多段システムの前段ポンプ (バックポンプ) としても利用されています。

回転真空ポンプの使用用途

回転真空ポンプは、下記の業界で使用されています。

1. 半導体・電子部品

半導体や電子部品の製造工程では、真空環境が不可欠です。例えば、成膜プロセスやエッチング工程では不純物の混入を避け、安定した処理を行うために高真空状態が必要となります。回転真空ポンプはターボ分子ポンプの前段として用いられ、効率的に気体を排出し、必要な真空度を作り出します。液晶パネルや有機ELなどの製造にも利用されています。

2. 食品加工

食品業界においては、真空パックやガス置換包装などで回転真空ポンプが用いられています。真空パック機では、袋内の空気を効率的に吸引して酸化や細菌繁殖を防ぎ、食品の鮮度保持や長期保存を可能にします。真空冷却やフリーズドライ食品の製造にも使われています。

3. 分析・医療

回転真空ポンプは研究・医療の分野でも重要な役割を果たしています。例えば、質量分析計や電子顕微鏡といった分析装置では、試料の観察や測定に必要な真空環境を安定的に提供します。また、医療では滅菌装置 (オートクレーブ) の真空工程に使用され、手術器具や医療器材の高精度な滅菌処理を支えています。