WPC処理

WPC処理とは

WPC処理とは、金属製品の表面に微粒子メディアと呼ばれる微小な球状粒子を衝突させ、部品の機能を向上させる技術のことです。

具体的には、材料の疲労強度の向上や摩擦抵抗の低減により、製品の軽量化や長寿命化が期待できます。類似の処理にショットピーニングが広く知られていますが、WPCはより微細な粒子を使います。

ショットピーニングでは、処理後の表面粗さが大きくなり、悪影響になることがありました。WPC処理はショットピーニングの1/10以下の微粒子メディアを使うことにより、表面粗さの増加が抑制されます。

さらに、マイクロディンプルと呼ばれる小さな窪みが形成され、潤滑油が溜まることによって、摺動性を向上させることも可能です。なお、WPC処理は開発元である (株) 不二製作所、 (株) 不二機販、 (株) 不二WPCの登録標章となっています。

WPC処理の使用用途

1. 工業分野における使用用途

疲労強度の向上を目的とした使用用途は、以下の通りです。

  • 切削工具 (エンドミル・カッター・ブローチ等)
  • 鍛造金型
  • 転造ダイス
  • プレス加工の形状パンチ
  • 金型部品 (ダイキャスト金型・ゴム成形金型・樹脂成形金型のコアピン)
  • スプリング製品

耐摩耗性向上を目的とした使用用途は、以下の通りです。

2. 美容・医療器具分野における使用用途

  • 薬品搬送ガイド
  • 医療品梱包搬送機器
  • 錠剤金型
  • 理容ばさみ
  • 人工骨
  • 医療用チタンボルト
  • 手術用処置具
  • デンタルミラー

3. その他の使用用途

その他の使用用途として、トランスミッションや粘着食品、食用液体などが挙げられます。トランスミッションでの使用目的は、フリクションロス軽減が低減することによる伝達効率の向上、ギアチェンジ時のフィーリング向上、消音効果などです。疲労強度も上がっているので、耐久性も向上させることができます。

粘着食品や食用液体での使用目的は、付着防止やすべり性の向上です。

WPC処理の原理

WPCは金属の加工硬化、残留圧縮応力の付与、組織の微細化などの現象を利用しています。つまり、これら現象が生じる金属に対してのみ有効な処理です。

WPC処理された製品の表面は、微粒子メディアが繰り返し衝突することによって塑性変形します。塑性変形することで加工硬化が生じ、表層の結晶粒が微細化します。さらに残留圧縮応力も発生します。

表面の残留圧縮応力は、亀裂の発生を抑制する効果を発揮します。これらの現象は、金属の疲労寿命の向上へ繋がるわけです。さらに、マイクロディンプルという表面に微細な油溜まりが形成されることで、摺動性能が向上します。凸が少なく凹みが大きい表面形状は潤滑油を保持しやすく、摩擦抵抗の低減、耐摩耗性の向上に寄与します。

WPCで使われる微粒子メディアは目的に応じて、複数用意されています。いずれも硬さは600HV以上、1,000HV以上のセラミックスも使用されます。用途に合わせた選択が必要です。

WPC処理の応用処理

WPC処理は、一般的なショットピーニングより微細な微粒子メディアを使用しますが、様々な応用技術が開発されています。ここでは、α処理と表面加工熱処理法をご紹介します。

1. α処理

α処理は金属組織がナノ結晶化することにより、寸法・形状変化がほとんど起こらずに、強度と靱性を向上させることができます。ナノ結晶化とは、金属組織の結晶粒径を小さくすることです。

金属の塑性変形は転位という、原子の配列の欠陥が移動することによって生じますが、方向性が異なる結晶粒の境界は転位の動きを妨げます。ナノ結晶化は結晶粒径が小さくなることで結晶粒界が増え、結果的に塑性変形が発生しにくくなります。

また、マイクロステクチャと呼ばれる表面の微細な凹凸は、切削による表面欠陥を無くし、摩擦抵抗も減らすことができます。

2. 表面加工熱処理法

微粒子メディアの投射によって製品の表面温度を上げ、結果として熱処理の効果を得る技術です。微粒子メディアの衝突によって処理品の表面がA3変態点以上の温度域で急熱、急冷が瞬時に繰り返されることで、熱処理の効果が得られます。

金属表面の残留オーステナイトがマルテンサイト化したり、再結晶、微細化することで高強度と靭性の向上が期待できます。

参考文献
https://www.fujiwpc.co.jp/industry-service/about-wpc.html
https://www.kamata-surface.com/表面処理技術一覧/wpc処理/
https://clicccar.com/2019/03/15/696991/
https://www.fujiwpc.co.jp/
https://www.fujimfg.co.jp/ApplicationWPC.html

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