チタン銅

チタン銅とは

チタン銅とは、チタンを添加元素とする銅合金です。

展延性や耐食性、耐熱性、耐摩耗性、耐疲労性に優れています。また、耐応力緩和特性も特徴の1つです。同じく高強度合金であるベリリウム銅よりも安価であるため、代替材料として用いられています。JIS (日本産業規格) においてC 1900に分類されるものの他、製品名ではC1990HP、C1990HC、NKT322、YCuT-F、YCu-Mなどの種類があります。

チタン銅は、優れた曲げ加工性、高強度、高加工性を生かして電子部品などに使用されている合金です。微量の鉄 (Fe) などが添加される場合もあります。チタン銅を指す別の名称には、銅チタン合金やCu-Ti系合金などがあります。

チタン銅の使用用途

チタン銅は強度が高く、曲げ加工性に優れた特徴の合金です。複雑な曲げ加工を施す電子機器向けコネクタに特に採用されています。チタン銅の主な使用用途は下記の通りです。

  • 電子機器、通信機、計測器用高強度ばね
  • 電子部品用端子、スイッチ、コネクタ、リレー、ブラシ、ジャック
  • スマートフォンやパソコンなどの電子機器のコネクタ
  • カメラモジュール (レンズ支持用ばね材) など
  • 自動車用コネクタ
  • バッテリーターミナル
  • 真空管部品材料

チタン銅の性質

チタン銅は、 鋼に匹敵する硬度および強度チタン銅の導電率は時効硬化処理温度が高いほど高くなる傾向があります。また、時効硬化処理温度が高いため、高温強度が優れていることもチタン銅の特徴の1つです。他の銅合金と比較しても軟化温度が高く、300℃ 付近までほとんど引張強度が低下しません。

疲労特性や耐蝕性も、優れた銅合金の代表である銅-ベリリウム合金と遜色ない性能であると言えます。なお、磁気に対しては非磁性です。

チタン銅の種類

チタン銅は、様々な製品が販売されています。代表的なチタン銅の種類と組成は下記の通りです。また、それぞれの加工材の硬さの区分にはEH材、1/4H材、SH材など様々な種類があります。硬さの程度は硬化処理温度と時間の違いにより生じるものです。

1. C1990

C1990の化学組成は、Ti: 2.90~3.50%、Cu: Rem. (残り) です。ベリリウム銅と同等以上の特性を有し 、強度、応力緩和特性に優れています。組成をそのままに、加工プロセスの制御によって強度・曲げ性・導電率などを向上させた製品も販売されています。

2. NKT322

NKT322は、チタン銅に少量のFeを添加することで強度や曲げ加工性を向上させた素材です。組成はTi: 2.9~3.4%、Fe: 0.17~0.23%、Cu: Rem. (残り) です。耐応力緩和特性が有り、特に高温下での接触力保持に優れています。

3. その他

耐食性の向上やはんだ加工の加工性を向上させる目的で、表面にCuめっきを施したチタン銅泊も販売されています。また、特に導電率バランスを高めた製品では、電子部品における通電時の発熱抑制/放熱性向上が期待されます。

チタン銅のその他情報

1. 製造

チタン銅は時効硬化型合金であり、焼入れと焼戻しによる、溶体化-時効硬化処理のプロセスにより製造される合金です。時効硬化処理は材料の酸化を防ぐため、非酸化性雰囲気下もしくは真空中で行うことが望ましいとされます。

溶体化処理後、冷間加工を施すことで機械的強度を高めることが可能です。冷間加工性は時効硬化処理 により劣化するため、一般には時効処理前冷間加工を行います。ただし、時効処理後でもある程度の冷間加工は可能です。

2. 化学組成

チタン銅の化学組成は、合金の種類にもよりますが、チタン (Ti) が1.8%~3.5%程度です。残りを銅 (Cu) が占めますが、微量の鉄 (Fe) が0.2%程度添加される場合もあります。鉄が添加されたものは、良好な曲げ性を有しながらも非常に強い強度 (1GPa以上の耐力) を示します。

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