産業用モーター

産業用モーターとは

産業用モーターとは、工場や生産施設などの産業用途で使用される電動機です。

産業用モーターは工場環境で使用されることを想定しているため、過酷な作業環境で長時間の連続運転に耐えるように設計されていることが多いです。強固な構造材や耐腐食性の部品が使用され、機械的な摩耗や振動に対して高い耐性を有します。したがって、故障が少なく、メンテナンスの頻度も低い点が特徴です。

したがって、産業用モーターは信頼性の高い駆動源として、様々な産業分野で不可欠な存在となっています。

産業用モーターの使用用途

産業用モーターはほとんどの産業で利用される重要な機器です。以下はその用途の一例です。

1. 機械加工業

機械加工業において、産業用モーターは中心的な役割を持つ機器です。加工機械では旋盤やフライス盤などの工作機械に搭載され、精密加工の駆動源として活用されます。これらの機械は高精度な動作が必要なため、安定したトルクと回転速度を有する産業用モーターが不可欠です。

2. 化学産業

化学産業では、産業用モーターがポンプや冷却装置に使用されます。ポンプは化学薬品を安全に移動させるために重要な設備であり、腐食性の液体や高圧条件に耐えるために堅牢な産業用モーターが使用されます。冷却装置には冷却ファンやコンプレッサーを内蔵していますが、ほとんどの場合は駆動源が産業用モーターです。

3.物流

物流業では、産業用モーターがコンベアやエレベーターに使用されます。コンベアは倉庫や物流センターで荷物を効率的に運ぶための装置で、モーターがコンベアのベルトやチェーンを駆動します。これにより、荷物を自動化で移動でき、作業効率を向上させることが可能です。

エレベーターやリフトも、物品や荷物の昇降に使用される重要な機械です。産業用モーターを使用することで、荷物を安全かつ効率的に上下移動させることができます。

4. 医療

医療業界では、産業用モーターが診断機器や手術機器に使用されます。MRIやCTスキャンなどの診断機器は精密な動作が必要なため、サーボモーターやステッピングモーターなどの産業用モーターで駆動する場合も多いです。また、手術ロボットの駆動装置にも精密動作が可能な産業用モーターを使用します。

産業用モーターの原理

産業用モーターの基本的な動作原理は、磁場の生成とその相互作用に基づきます。

モーターはステーターと呼ばれる固定された部分と、ローターと呼ばれる回転部分から構成されています。ステーターにはコイルや永久磁石が主要部品で、ローターに対して磁場を生成する役割を担います。ローターにも電流が流れるコイルや永久磁石が設置されており、ステータの磁場とローターの磁場との相互作用が、ローターを回転させる仕組みです。

電源の種別により、ステーターが生成する磁場の種類が異なります。交流電源を使用する場合は、ステータが生成する磁場は電源周波数に基づいた回転磁界です。回転磁界の回転に合わせてローターが回ります。

ブラシ付き直流モーターなどの場合は、ステータに定方向の磁場が生成されます。ローターに流れる電流を整流子などで可変させることにより、ローターが回転します。

産業用モーターの種類

産業用モーターには以下のような種類が存在します。

1. 誘導モーター

誘導モーターは電磁誘導に基づいて動作する産業用モーターです。ステーターに流れる交流電流によって回転磁場が生成され、ローターに誘導電流を生じさせて回転させます。ローターとステータ共にコイルで構成されており、故障部品が少なく堅牢な点が特徴です。産業用モーターの大部分はこの誘導モーターです。

2. 同期モーター

同期モーターは、ステーターの回転磁場とローターの回転が完全に同期するように設計されたモーターです。ローターには永久磁石を埋め込むことが多く、精密動作が可能な点が特徴です。この特徴から、精密加工機用のサーボモーターなどの用途で広く利用されます。

3. 直流モーター

直流モーターは、直流電流を使用して動作するモーターです。ブラシ・整流子によってローターの電流方向をスイッチングして動作し、可変速が容易な点が特徴です。また、バッテリーなどの電源をそのまま活用できるため、可搬式の装置の駆動源に適しています。この特徴から、電動工具や路面電車に活用されることが多いです。