産業用ロボットとは
産業用ロボットとは、産業分野において単純な作業を自動化するために使用されるロボットです。
あるタスクを自動的に実行し、生産プロセスを効率化させます。これにより、生産効率を向上させ、少ないリソースでより多くの製品を製造することが可能です。
産業用ロボットは、ファクトリーオートメーション (FA) システムの中核を担う重要な要素で、製造業などの様々な課題を解決するのに役立っています。高速で正確、さらに24時間稼働できるため、生産サイクルも短縮され、様々な面からコストの削減が期待できます。
また、生産ライン全体を自動化することができ、ロボットはプログラムで制御することができるため、製品の変更や需要の変化に柔軟に対応することができるため、フレキシブルな生産体制の構築が可能。作業中に様々なデータを収集することもでき、これらのデータを分析することで、生産工程の改善につなげることができます。
形状はタスクに応じて設計されるため、多関節型のロボットから車両型のロボットまで多岐に渡ります。用途に応じて最適なロボットを選択して運用することが重要です。
産業用ロボットの使用用途
産業用ロボットは様々な産業で使用されます。以下はその使用用途一例です。下記以外にも、切削ロボット、研磨ロボット、接着ロボットなど、様々な用途に特化した産業用ロボットが開発されています。
1. 組立作業
自動車産業では産業用ロボットが部品の組み立てなどの多くのタスクを自動化しています。ボディシェルのフレーム組み立てなどでの使用も一般的です。また、電子製品の組み立てには精密な作業が必要であり、基板の実装や部品のはんだ付けなどを産業用ロボットで実施します。
2. 溶接作業
金属の部品や構造物の溶接には、高い精度と一貫性が必要です。ロボットを使用すると高精度の溶接を繰り返すことができるため、自動車産業や航空機・船舶などの重工業産業でも広く利用されています。特に自動車産業では車体鋼板の溶接などで一般的に使用されます。
3. 搬送作業
産業用ロボットは工場や倉庫での物品搬送に使用されます。AGVなどの先進的な産業用ロボットは自動的に経路を計算し、物品を指定された場所に運びます。自動倉庫における物品の積卸作業で利用されることが多いです。
また、ベルトコンベアはコンベアによって製品を輸送するロボットです。製品や原材料を別の生産ラインに移動させるために使用されます。
4. 梱包作業
食品産業や消費財産業などにおいて、商品の包装と梱包にロボットが使用されます。製品を箱に詰めたり、包装材料を適切に配置したりする作業を自動化することが可能です。また、製品をパレットに積み上げたり、パレットから商品を取り出したりするためにも使用されます。
5. 塗装作業
車両や家具などの表面に均一な塗装を施すために、産業用ロボットが使用されます。塗料を均一に塗布することで、塗料の節約にも貢献することが可能です。特に自動車の外装塗装には広く使用されます。
産業用ロボットの原理
産業用ロボットは、運動制御システムやセンサー技術を駆使して、特定のタスクを自動で実行する装置です。
運動制御システムにより、ロボットアームの関節や軸の動きが制御されます。産業用ロボットは、アクチュエーターやサーボモーターを使って駆動部を正確な位置に動かし、タスクを遂行します。一般的に、制御システムはコンピュータープログラムを介して、ロボットの動作速度や加速度、停止位置を指示する役割を果たします。
また、産業用ロボットはセンサーを利用して周囲の環境を認識し、様々な情報を収集します。これらのセンサーは、ロボットに対して現在の状況を伝達し、対象物や障害物を検出するのに重要な役割を果たします。さらに、物体認識や品質検査などの高度なタスクには、画像解析機能を備えたビジョンシステムが頻繁に用いられます。
産業用ロボットの種類
産業用ロボットの種類は多岐に渡ります。以下はその一例です。
1. 垂直多関節ロボット
多くの関節を有するアーム構造のロボットです。各関節が回転または移動して、アーム全体を様々な方向に制御できるようになっています。組み立てラインで部品を取り扱ったり、精密な溶接作業を実施するために使用されます。
2. 水平多関節ロボット(スカラロボット:SCARA ROBOT)
特定の平面内での高速かつ精密な運動が可能なロボットです。SCARAとは、Selective Compliance Assembly Robot Armの略であり、基本的に3軸の回転動作と1軸の上下動作の合計4軸の動作軸によって構成されています。電子部品などの精度が必要な部品の配置作業や、梱包作業で使用されることが多いです。
3. 直交ロボット
3つの直交する軸で構成されており、それぞれを独立して制御できるロボットです。シンプルな構造で、メンテナンスが容易で、マシニングセンターや切断機など、一定の軌道を移動する作業に適しています。
3. AGV
自律的に運転することが可能なロボットです。AGVとは、Autonomous Guided Vehicleの略であり、自動的に経路を計画して障害物を回避しながら移動します。倉庫内での物品運搬や製品の積卸作業などに使用されます。
4. パラレルリンクロボット
3本以上のアームを有するロボットです。特定の一点に対して精度の高い作業を実行できる点が特徴です。精密部品の組み立てや、医療支援などに使用されます。